ヒマなもんで、バットマン映画を全部観倒したのですこんな心。
さすがにテレビ版『怪鳥人間バットマン』までは追っかけてないが、60年代の『バットマン・オリジナルムービー』はビデオで持ってた。
これは、バットマンふくめ登場人物が全員バカ!という怪作である。松本人志言うところの「元祖天才バカボン」の世界。つまりツッコミがいない。
ジョーカー・キャットウーマン・ナゾラー(リドラー)の三悪人がバットマン&ロビンに対し「バカの知恵」で挑戦する。さらにそれを「バカのひらめき」で返すバットマン!バカ同士の力が拮抗するバカの世界!ツッコミ担当は観ているぼくら!
バットマンはかなり薄着(防護服にもなっていない)。おなかぶよぶよの中年体型丸出しだが、アクションシーンもしっかりあって、殴ると「POW!」なんて吹き出しが出たりする牧歌的なもの。キッチュ&コミカルさを押し出した、まあカッコよくいえばカルト作。はっきり言って大好きだ。
ティム・バートン監督の『バットマン』『バットマン・リターンズ』はやはり名作。
本来のダークヒーローとしてのバットマンが、スクリーンに初登場。
マフィアの幹部がバットマンに手を離され(やりますねえ)、酸の中に落ちて肌は真っ白に漂白され、顔の筋肉は笑っているように固まった。これがジャック・ニコルソン版・ジョーカーの誕生。
とにかくニコルソンがノリノリでずうっと踊っている。同時にイケイケのマフィアだった男が(バットマンのせいで)道化のような顔を与えられ、凶悪なピエロとしてしか生きざるを得なくなったという事情に、一抹の哀愁も感じる。
『リターンズ』はさらにおどろおどろしさ大爆発。ゴッサム・シティを暗躍する三人の怪物の物語。
水かきのような手を持った畸形の赤ちゃんがその醜さゆえ、両親によって下水道に捨てられてしまうのだが、彼はその世界で「ペンギン」として生き、サーカス団のようなギャング一味のボスとなっていた。
下水道に暗黒組織。初めて観たときは江戸川乱歩のできそこない小説『影男』あたりを想像してしまった。
手の畸形が支配者となり孤島で人工的にフリークスを製造する、というのは石井輝男の『恐怖奇形人間』だけれども、バートンだったらこれ知ってるんじゃないかね。
そして重要なのがキャットウーマン。オフィスから突き落とされたが猫の魔力によって蘇った、梶芽衣子のような「怨み節」に燃えた黒猫。自宅に戻るといきなりコスチュームをミシンで編み始めるシーンが笑える。
ミシェル・ファイファーのブラックレザーにムチさばきがカッコいい。バットマンとのはかない恋愛もあり(で、やっぱりヤるシーンは暖炉の前なのな)。女はとうに捨てました~♪にはなかなかなれず。
ペンギンを操って画策をはかる町の実力者(クリスファー・ウォーケン)も登場するが、トータル的に見てこいつが一番悪い。怪人たちより生身の人間の方が極悪、という皮肉。
切羽詰ったペンギンは部下のペンギン軍団(鳥です)に爆弾を背負わせ、神風特攻隊よろしく町を破壊しようとする。バートンのすごい発想力。
力尽きたペンギンがペンギンたち(鳥です)に見送られ水葬されるシーンは悪役なのに切ない。体型的にもダニー・デビートのペンギンは大当たり。
バットマンは眼光と顎のラインが重要なので、素でいるときの胡散臭さも含め、マイケル・キートンがベスト・オブ・バットマン俳優だと思う。
バートンがどういうわけか監督を降板して、ガラリと傾向が変わったのが『バットマン・フォーエヴァー』。
ロビン初登場。悪役トゥーフェイスも登場。ただしマジンガーZを知っている日本人からすると、「あしゅら男爵みたいだな」とか思ったりする。
ずっとハイテンションで目立っているのがクイズ大好き・リドラー役のジム・キャリー。はじめてこの人の演技を見たが良くも悪くも「顔芸」ですな。バットマンはヴァル・キルマー。
それまでが暗すぎたせいか、ずいぶんポップになったという印象。
続く『バットマン&ロビン Mr・フリーズの逆襲』はドライアイスな怪人・フリーズにシュワちゃん。植物女ポイズン・アイビーに「ビル殺し」のユマ・サーマン。バットマンはジョージ・クルーニー。さらにロビン・バットガール・ベインまで登場。
ここまでくるとほとんど、子供向けの後期ゴジラ映画(怪獣総進撃とか)。実はこの二本、長いことシカトしていてようやく観た。まあ想像どおりだったんだけど(つまらなくはない)、シリーズ物ってのはあまり出来がよくないものも混ざっていたほうがコクが出る。
「先祖がえり」と言えなくもない。恐らくこの勢ぞろいキャラでもう一本くらい作りたかったんじゃないかというのが見え見えなのだが、それができなかったのはあまり当たらなかったせい?
で、「これじゃダメだろう・・・・」と製作されたのが怪人キャラが出てこない『バットマン・ビギンズ』から始まるシリアスな新シリーズなんだろうなということは、想像に難くない。
『ダークナイト』はちょっと重要なので、一回しか観ていない。できれば「爆音」あたりで鑑賞したいところ。
スピンオフ作品『キャットウーマン』はあちらで最低映画賞を受賞したらしいが、そんなに悪くないかと。
ただコスチュームが露出多すぎというか、ヤングジャンプの連載漫画のような安っぽい感じに見えてしまう(ってごめん。あの雑誌昔から受け付けない)。ハル・ベリーはすごくカッコいい。
キャットウーマンちゃんはやはり、ビチビチの全身ブラックレザーで決めてくんないと!
セクシイさでは60年代、クールさではミシェル、なんか一番「かわいい!」と思えるのは、『ダークナイト・ライジング』のアン・ハサウェイじゃないかと思う。
よく、バットマンの存在感が地味、とか「ない」とか言われたりしていますが(そりゃあんまりだ)、寡黙なヒーローゆえ騒々しい悪党たちを許容できるんである。
バットマンがゴッサム市民からもうひとつ支持を得られないのは、道交法をほとんど無視しているからというのはデカいと思う。
バットマンは生身の人間なので、武器やコスチュームや車(バットモービル)などを金に明かしてカスタムメイドする、成金のヒーローである。そして執事が優秀すぎる。