先日もバウスに入り浸って三本鑑賞。
まずは内田裕也主演の『餌食』(監督/若松孝二・1979年)。
色褪せて赤茶けた傷だらけのフィルム。音楽はピーター・トッシュ/マトゥンビによるレゲエ。
爆音ってつまりはボトムなのだと思い知らされる。ベースの低音がビンビン来る。
このチョイスが奇跡であり、ラストバウス最大の収穫なんじゃないかと思う。
ニューヨークに渡った音楽プロデューサーの裕也氏はレゲエバンド「ソルティ・ドッグ」に衝撃を受け、これを日本で発売しようするが、かつての仲間たちはアイドル専門になっていたり、外タレのプロモーター&彼らに提供するクスリの元締めになっていて、まるで売る気がない。
裕也氏は族あがりの兄ちゃんが彼女と同棲しているアパートに転がり込む。家主はしょっちゅう南部式拳銃を磨いている、戦争のトラウマを背負っていそうなジサマ。
裕也はレゲエバンドの招聘、兄ちゃんはナナハンを手に入れること。それぞれの夢をかなえる為、彼らはジサマから借りた銃で、クスリの取引現場を襲撃する。
(しかし粉を舐めて「グッド」なんて言うシーンを久々に見たが、あれ大丈夫なのかね?)
それにしてもレゲエである。こんなに硝煙の匂いが漂うような危険な音楽だとは思わなかった。裕也先生が相手をフルボッコにするシーンにも使われているが、これがまた恐ろしくハマる。
発酵したフィルムに映る昭和の街もいい感じ。三丁目のCGがいくらがんばっても出せない色。
この作品は未DVD化で、ビデオもほとんど置いてるところがない(吉祥寺にはあったような気がするんだが)。『鉄砲玉の美学』もそうだけど、多分音楽の権利関係がクリアになっていないからだと思う。
そしてこの当時の裕也氏のトッポさである(まあ、今でも十分トッポいのですが)。無差別殺人をキメるラストシーンのクールさ!
彼は昔から存在自体に賛否両論ある人だが、こういう作品に触れるとやっぱり、針が「カッコいい」を指す。
あの冷たい三白眼。どうやって生きたらあんな目になるんだろうか。しかしながら、昔からアレにやられているのである。
二本目は『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年)。
ストーリー云々よりも荒唐無稽なポップさが楽しい。「オペラの怪人」をケバケバしくアレンジしたロックミュージカル。むせかえるような70年代カルト映画の香り。
深夜テレビで観て以来だから約20年ぶり。
愛され度としてはブライアン・デ・パルマの作品中ダントツであろうことの証明に、平日昼間であるにも関わらず満員御礼。ファントムがカッコいい。
三本目、『シャッフル(80年)/ノイバウテン 半分人間(85年)』。石井聡互監督の二本立て。
驚いたことにこんなマイナー作品に立ち見まで。自分は「シャッフル」目当て。
つきあっていたホステス(室井滋)を殺して逃げるチンピラ。それを追う刑事というシンプルな話だが、主人公が頭を剃り上げてスキンヘッドにする冒頭からして不穏。
過去が狂ったようにフラッシュバックするランナーズ・ハイのシーンや、思わず引きつった笑いがおこるラスト。
まったく、短編映画のお手本のような作品(30分)。
刑事役が今ではルポライターとして有名な森達也氏。名著・『放送禁止歌』は当店でめちゃめちゃ回転します。
そしてこの作品も爆音装置によりべースのボトムがブリブリと迫る!ぶっほほっ、である。
アインシュツルツェンデ・ノイバウテンってのは当時、鉄板やらドリルやらを使ったパフォーマンスで「前衛」と持ち上げられていたドイツのバンドだが、自分は名前とイメージしか知らなくて、まあ観てみようかなと思って鑑賞したのですけれども、・・・寝ました。これアートなの?ドカチンがいるんだけど?
所詮ノイズ。ロックンロールやレゲエの普遍性の前にはお呼びでない。