ジョージ秋山のマニア間ではトラウマコミックとして知られる『海人ゴンズイ』、読む。青林工藝舎からの復刻版。
罪人が送られる流刑の島。その島を取り仕切る若者・リュウ。流人が海のものを取っただけで容赦なく殺してサメの餌。死んだ赤ん坊を背負う狂ったお姉さん・アズサ(子供の目からは虫が「にゅるにゅる」)。
そこに漂着したアフリカの子供・ゴンズイ。ゴンズイを育てようとするアズサをリュウが背後から槍で突き刺す。怒りのあまり戦いの踊りを舞うゴンズイ「フンムムフンム、フンムムフンム」。だが、勝負は持ち越される。
ピラニアのような人食いボラや、サメ以上に恐ろしいと言われるオニカマスとの戦い。
少年ジャンプ連載とは思えない血と暴力のにおい。このままジョージ先生の好きなように描かせればとんでもない作品になったかも知れないが、あまりにも暗すぎる内容にテコ入れが入る。
オニカマスを撃退したゴンズイの元に島の子供たちが団結し、「えいえいおーっ」ではっぴいえんど。唐突に終了。あれ?リュウは?
このような展開になったいきさつを聞こうと、監修の大西祥平氏がジョージ先生に食いつくのだが、「そんな深い考えがあってモノを描いてません」「手ェ抜くうまさは天下一品だから!」と、そんなことどうでもいいじゃねえか、もういい?ってなご様子。ついでに原稿も持っていないらしい。ということはインタビュー中に大西さん本人が言っているように、オリジナルの元本(激レア!!)をバラして刊行したのだろう。男である。
この本には白鯨(シロマジン)と執念で戦う鯨獲りのボスの物語『ドハツテンツク』が収録されているが、これがまさに知られざる名作。
彼は17歳の時に体を買ったタエに子供を産ませ、その子にシロマジンとの戦いを継がせようとする。なので、女の子が産まれたら海へドボーン。めでたく男子(ズズと命名)が誕生するが、彼も因果な運命をたどるのであった。
ちなみにジョージ先生、この作品の原稿もお持ちでないということ。「ゴンズイ」復刻版が出版される、たった三年前に執筆したものだということです。