最近また水木しげる大先生(京極夏彦さんによれば、「おおせんせい」と呼ぶのが正しいらしい)の、『墓場鬼太郎』を読み直しております。
このビンテージ鬼太郎は正しく「化け物」であって大変よろしい。煙草を嗜む不良児童でもある。
そして貸本時代の水木大先生のタッチはアメコミのような太い線であり、今見ても大変カッコよろしい。
こののち「点描」なるすさまじいテクニックを頻繁に活用する大先生なのだけど、この時代の作風は実にモダーンである。
鬼太郎が誕生するグロテスクな名シーンはもう有名だから置いておくとして、実は『怪奇一番勝負』『霧の中のジョニー』が収録されている第4巻が白眉。
鬼太郎の顔もシリーズごとに変化しているのだが、「怪奇」における彼のデザインは最も不細工で憎ったらしくって最高である。
失業した漫画家か家賃を払えなくなって大家に相談に行くのだが、そのときの会話が素晴らしい。
「二階の金田さんが助手をさがしてたんだけど・・・」
「金田さんといえば殺し屋じゃありませんか」
「そう」
「べつにあんたに殺しを手伝わせようというわけじゃないでしょう」
「でも・・・」
「そうなの・・・。いやならいやで」
「いいえべつにいやじゃありませんが」
「じゃあ金田さんにそういっとくからね」
初期作品にしてすでにこの脱力感!ぺったらぺたらこ!
かくして漫画家氏はジャイアント馬場そっくりな殺し屋・金田さんの助手として雇われ、「アパートの居住権」を巡り鬼太郎親子と対決する羽目になり、あの世に送られてしまうのである。
そして真打ち登場!の「霧の中のジョニー」である。
名キャラ・「吸血鬼エリート」初登場の名編であります(この時点ではまだ「エリート」の名前はない。「ジョニー」と呼ばれている)。
実は吸血鬼エリートにはモデルがいて、それは『寄生人』なる悪趣味ホラー漫画を残した、「つゆき・サブロー」なるお方。ほんとにそっくりなのでググってみたらよろしい。
ねずみ男を秘書として雇い(月給五万円)池田総理の血を狙う吸血鬼と、総理のボディガードに就職した鬼太郎(ライスカレーを食べながら契約していました)が対決する。
ジョニーはスーツに蝶ネクタイの名ギタリストである。
ギターをサウスポーに構え、前髪で顔半分を隠し「ジヤガスガジヤガスガ」「ジヤガジヤガジャンガモンガ」とかき鳴らす姿は、かのカート・コバーンを連想させる、よね?よし!
自宅の巨大な樽からコップに血を注ぎ、「どうですヒヤで一ぱいやりませんか」と、ねずみ男にすすめたりする。イマジネイティブである。
なんだかんだあって、ねずみ男の「ゼントルマンのエチケットだものな」というセリフで完となるのだが、このイイ言葉、実際にどこかで使いたいところであります。
アニメ版墓場鬼太郎もなかなか善戦していたと思う。アメコミ仕様のオープニングがシャレオツ。やっぱりそういうことなんである。
http://www.youtube.com/watch?v=L9OvyoqxJzc&feature=related