パンクとしてのあり方というのが昔から二通りあって、それは「ストレートにパンク・ロックをやり続けるのがパンクだ」という愚直派と、「パンク・ロックを封印して、新しいチャレンジを続けるのがパンクだ」という革新派。
どちらも正しいと思う。そしてそれらはいくらでも語ることができる。
そんな中で、ずーっと微妙な位置にいるのがオリジナル・パンク・バンドの「ザ・ダムド」だ。で、あんまり大真面目に語られたことがない。
彼らのファーストにして、パンク・アルバムとして一番最初にリリースされた『地獄に堕ちた野郎ども』は、それこそ地獄にまで持って行きたい名盤だが、パンクの古典であることと同時に、「パンクによるおちゃらけ」という表現方法を示した。
もともとあまり「怒り」を根底に置いていないゆえ、ボーカルのデイヴ・ヴァニアンは稚拙ながらも叫ぶより歌おうとしている。それでも怒涛のスピードで叩き出される『ニート・ニート・ニート』『ニュー・ローズ』などは、最高水準のパンク・アンセムだ。
ヴァニアンはデビューからベラ・ルゴシ風のドラキュラ衣装だし、キャプテン・センシブルは「バードスーツを着こなす」という特殊パンク・ファッションを生み出した。
作品はどんどんポップになって、80年代はお耽美ニューウェーブバンドとして大人気になったり、解散したり再結成したり、最近はまたハードなゴスバンドとしてリリースを続けている(らしい)。
要するに、振り幅が大きすぎてつかみどころがないんである。
狭義のパンク・ファンはファーストとサード『マシンガン・エチケット』でOKだろうけど、ゴスでニューウェーブな『ザ・ブラック・アルバム』や、やたらゴージャスな『ストロベリーズ』も実はイケてるのである。
ベストが多いのも彼らの特徴だけれども、どれか1枚としたら『ANOTHER GREAT CD FROM THE DAMNED』(ドイツ盤)を挙げる。これはしっかり「ストロベリーズ」期まで収録されているお得盤。
今ではだいぶコロコロしたおじさんになられたが、まだまだ現役で活躍中。のはず。
攻撃性の中にもポップさを内包していたのがオリジナル・パンクで、ほとんどのバンドはうまくなると同時に「優しく」なった。だが、ダムドなんかはポップになりつつもヴァニアンのゴスな美意識と、キャプテンのいちびりキャラをバランスよく維持してきたので、トータルなイメージがパンクだったりする。
眉間にシワ寄せ「ファック!」というより、黒皮手袋でバラなど持ちながら「アスホ~ル♪」とか言ってるようなイメージなんですよね。
もともと達者なバンドだし、ヴァニアンはコスプレがさぞ楽しかったとみえて、「メッセージ」なるものが完全に欠落していたところが、彼らの強みである。それにしても最初期メンバーによる、嵐のようだが「英国紳士」的にしゃれたプレイは、いまだに超える者がいないと思う。
http://www.youtube.com/watch?v=CQkXHKwgSbA&feature=related
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