前から気になっていた三池崇史版『十三人の刺客(2010)』、鑑賞。
痛快娯楽時代劇というにはあまりにエグい。正統派時代劇ファンはたぶんドン引き。
極悪非道なサイコ・プリンス(バカ殿)を演じるはスマップ・稲垣吾郎。
「天下のご正道(ストレート・エッジ/SxE)」のため、アサシンとして結成された13人がゴローちゃんの首を狙う。キル・ゴロー。
ゴローちゃんの残虐ぶりは徹底していて、いきなりお歯黒メイクの谷村美月ちゃんをレイプした後、呆然としているダンナを「サルの骨は硬いのう」となます斬り!
さらには一揆首謀者の娘の両手両足を切断し舌を抜き、セックス奴隷として飼うが飽きちゃったのでポイ捨て!
討伐軍のリーダーとして抜擢された旗本(役所広司)は呆然としながらも「家族は?」と問えば、そのだるま娘、口に筆を咥えてお習字したる文言は「み な ご ろ し」。怒りのあまり笑いが込み上げる役所。
短いシーンながらも血の涙を流して演技していたこの女優さん、一体何者なんだ?
天下万民の為、殿は取らねばならぬという使命感に燃えた役所さん(役名がめんどくさくてわからない)と、「主君に仕えるのが武士のつとめ」を貫くゴローの側近(市村正親)は修行時代を共にした仲間であった、というまともなエピソードも加えつつ、やっぱりゴローちゃんのにちゃーっとした変態ぶりが目を引く。
特にいきなり箸を落として食事をぶっかけめしにして犬食いするシーンは、「僕もう、スマップいいですから」と完全にアイドル捨ててる。
山道案内をしたのがきっかけで討伐部隊に加わることになった山の民・伊勢谷友介(セックスがつよい)。どんな役でも外さない岸辺一徳は今回、決戦の舞台となる村の村長さん(アナルセックスされる)。
ひとつの村を借り切り、ブービートラップを張りめぐらせ尾張藩200人を待ち受ける13人。
と、ここから50分におよぶチャンバラとなるのだが、基本的に三池さんはスプラッタ大好きなので、お年寄りも安心して楽しめる映画にはまるでなってはござらぬ。殺陣にあらず、血塗れのバトル・アクション。
『キル・ビル1』や『マチェーテ』が好きなボンクラ層はきっと拍手喝采。
人とセットと火薬と血糊。CGはとてもわかり易い。
暇つぶしのように残虐行為を繰り返していたゴローちゃんだが、天下泰平ゆえ、実は自分の「生」をまったく実感することができなかったのである。
部下たちが斬り合っている最中に、嬉しそうにのたまう。
「戦乱の世も、なかなか良いものぞ」。
ところでこのリメイク版、松方弘樹・平幹二朗・松本幸四郎などの超ビッグネームが参加している。
しかし三池監督なので、「オチ(のちょっと前)」でまたやっちゃってくれている。
きれいにまとめるのを良しとしない手法は『デッド・オア・アライブ2』あたりに顕著。
ここを「笑う」「コケる」「怒る」の反応で、この作品に対する評価が割れると思う(一応布石は、あったりします)。
彼ら大御所を抱えつつも、ラストで格調をぶっ壊しちゃうのがサムライ三池。天晴れ。
っていうか、脚本はあの映画監督の二世であったか。天晴れ。
本日9・11。ラジオをつけると平和を願う声が多かったが、このような「表現としての破壊や暴力」を気楽に楽しめる世界にいつまでも住みたいと思う。ピース。