サムライブルーなんつって盛り上がっていたわが国ですが、なんだかどうも不快なのは、白土三平の影響によるところが大きい。
人殺しの技を磨くために切磋琢磨しているが、実際に自分では何も作らず、お百姓さんからピンハネし、虫けらのごとく殺し、切羽詰ると勝手に腹切って死んじゃう。
『忍者武芸帳 影丸伝(バトル・オブ・ニンジャメン/レジェンド・オブ・シャドウ)』を初めて読んだのは中学に上がる直前くらいだが、いまだに強烈な作品である。
農民たちのレジスタンスをプレゼンするアウトローの忍者・影丸を中心に、仇討ちを生きがいとするサムライマン・城太郎や、僧侶で殺し屋のキラーエリート・無風道人、水棲人間の「岩魚(いわな・フィッシュマン)」、体から電気を発して相手を倒す「しびれ(エレクトロ)」、穴熊の習性を持つ(地面を掘り進む・くっさい屁をこく)「くされ(ランシド)」、亀のように首が引っ込む「蔵六(タートル)」といった影一族(シャドウズ・ファミリー)らが躍動し、ノブナガ・ヒデヨシ・ミツヒデなどの実在の歴史上の人物とからむ。
『カムイ伝』ほどイデオロギー的ではないが、1959年にドロップした、ヴァイオレントでゴアなエヴァーグリーンのエンターテイメント。
結局、差別的な表現抜きではこのような作品は生まれ得ないのである。
片目片腕なんてごろごろ出てくるし、貧乏な農民は武士どもに笑いながら虐殺される。
すべてのページが血なまぐさいけどパワフルで自由。
「眼帯」という悪のアイコンすら見かけなくなった最近の漫画は、やっぱり少々お上品なんじゃないかと思う。
「努力・友情・勝利」のお題目は、とんでもなく重くて不自由な足枷である。
この記事にトラックバックする