一貫した書き割りの世界。チバユウスケ詩集『ビート』。
ただ、こうした詞を引き受けるにはそれに見合った身体能力が必要なんであって、チバはやっぱり稀有な人。
彼に「派遣の日給6000円」なんて歌われた日には、むしろそっちの方がリアルっぽくない。
中期以降のミッシェルのアルバムは映画のサントラ的なイメージもあるので、不思議とダニーだケリーだシンディーだサンディーだのの名詞が煙たくならない。ミノルだのタカヒロだのメグミだのと使わないでくれたのはむしろ正解。
初期にあった言葉遊びやユーモア感覚が少しずつ薄れ、後半は完全にフィクションなハードボイルドの世界だが、それでもミッシェル・ガン・エレファントは分かり易くカッコよかった。
(しかし「あふれかえるパスタの山 泳いでいた」ってすごいフレーズだよな)
多分交流があった悪いおともだち・ブランキーの影響があったのではないかと思われる。
本書には収録されていないが、「バードメン」におけるプレイの爆裂ぶりとあいまって、その歌詞の突飛さとブラックさに痺れ、このバンドについていこうと決めました。
(「ザ・バースデイ」には残念ながら思い入れがないので、今回はミッシェルについてだけ書きます)
「パブロックでよかったのにでかくなりすぎたバンドがミッシェル」みたいなことを以前書いた気がするが、それでも彼らは「じゃあこっちのフィクションな路線でとことん決めてやる」と、最後まで貫いてくれた。
パブ指向だったらピーズが本物、みたいな意見は話にならん。少なくとも愚痴っぽかったり、やたら等身大みたいなことを歌ってる日本語ロックは、実はよくわからん。
アベフトシのギターはウィルコ・ジョンソンのパクリ、みたいな意見も話にならん。少なくともアレを真似できるか?普通。しかも師匠よりずっと音が馬鹿でかい。
ナンバーガールってのもいたが、あのバンドは歌詞からルックスからあまりにも「サブカル」でなあ、嫌いではなかったんだけれども。
ナンバガ支持層がクイックジャパンとその周辺だったのに対し、ミッシェルの土俵は「オリコン」だったから、場が大きい分様々な意見も交錯するとは思う。
ガレージという音楽を漁り始めた頃、60年代のバンドはジャケはいいのにどうもサイケすぎるとかオールディーズすぎるとか実は思っていたり、かと言って現役組はなんとなく「いなたい」なあ、と若干アウェイな感触を感じていた頃に日本からブレイクしたのがTMGEで、ガレージとパンクとパブロックを融合させたような演奏と、おそらく日本のロック・ボーカリストが誰も到達できなかった「セクシーなガラガラ蛇」のような声を持つ、チバユウスケにすっかりやられてしまったのであった。ハッキリ書いてしまうと、70年代の先輩ロッカーたちはそりゃ態度は不良だったかも知れんが、「ウタ」がへたっぴ♪なのも少なくなかったので、多少痛い思いもさせられました。
ゆえに『チキン・ゾンビーズ』『ギヤ・ブルーズ』の、全員黒スーツとモップ頭だった時代に思い入れが深い。実に理想の「ガレージ・パンク・バンド」であった。
http://www.youtube.com/watch?v=bBFaSz3ITCU
後期になるが、「伝説のタトゥードタキャン・穴埋め演奏」も恐ろしくカッコいいし、その日の出演者で空白を埋めることができたのは彼らだけってことで(つまりリハ抜き)、本質はやっぱりパブ・ロッカーだったってことだ。
今、『ダニー・ゴー』を鳴らしながら書いています。泣ける。分かる奴は一緒に泣いてくれ。
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