クリスマスもお近づきになり(ようござんすな!)、自分的にクリスマスソングと言えば「ニューヨークの夢」なんだけど、最近また、その曲が収録されたザ・ポーグスの名盤『堕ちた天使/If I Should Fall From Grace With God』をよく聴いている。
バンジョー・マンドリン・ホイッスル・アコーディオンなどによる疾走するアイリッシュ・トラッドバンドをバックに、声量はない・呂律まわってない・ついでに前歯もない・べろべろの酒焼けしゃがれ声のシェイン・マガウアンのボーカルが乗る。
この人は酒とクスリで一時期廃人状態で、バンドも追放されてしまったのだけど、最近復活して来年にはザ・ポーグスとして、来日公演をする。
しかし「前歯欠け」というのはストラマーにしろイギーにしろ町田町蔵にしろ、パンクスの通る「正道」ではあるのだが、最初からずーっと「無い」人も珍しい。
50を過ぎたシェインはやや太って「ダメな若造」から「ダメなオヤジ」にスライドし、なかなか結構な風体。
シェイン脱退後のポーグスは普通のケルトバンドみたいでであまりパッとしなかったようだし、シェインはシェインで自身を生かせるのはポーグスしかないだろうしということで、ここ数年の仲直りはなかなか喜ばしいこと。
いわゆるボーカルとしては「悪いところしかない」シェインの歌声だが、彼の存在があればこそ、ザ・ポーグスは「トラッド・パンク・バンド」として成立していた。とにかくパンク好きがそのまま流れてファンになっている。
実際この、胸に迫るような声は何なんだろう?と思う。だらしなくひしゃげてるんだけど、とんでもなく優しい。
ボーカルトレーニングをいくら積んでもこんな声は出ない。
バンドメンバー内で一番ブサイクな彼が、なぜか一番の伊達男に見える。
「堕ちた天使」とはよく付けたもんで、こんな人が「悪魔」のわけがない。
ポーグスから影響を受けた連中は世界中にいるが、特に日本のこのタイプのバンドはシェインのボーカルスタイルを取り入れたしゃがれ声が多いゆえ、なんていうか、ああ真面目に勉強したんだなあとか思ってしまう。
人生転げて、それが積み重なってああなったあの声の響きとは、残念ながら全然違う。
ただひとりだけ、同じ声でうたう人がいた。故・中島らも氏である。
http://www.youtube.com/watch?v=Hk1CiwrKgt8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=dJX26ocWruo&feature=related
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