Toshi著『洗脳 地獄の12年からの生還』(講談社)、読了。
テレビでも話題になったがいやーすげえ内容ですな。搾り取られた金額が合計10億以上。
何よりもX JAPAN再結成で大観衆の前で歌っていたと思えば、洗脳セミナーに監禁されて罵詈雑言を浴びせられた上に殴られ蹴られるというわけのわからない循環。これだけでも頭おかしくなりそう。
大人気ロックバンドのフロントマンが消費者金融を駈けずり回され(最後の方の会社からは融資が通らない)、デパートや老人ホームにドサ回りをさせられ、元アイドルの嫁は鬼のように金を運べと脅す!
ヨシキや周囲の人々との交流によって洗脳が解けていく。X JAPANの音楽は今も昔も理解できないが、さすがに戻ってきてよかったねと思う。
そして洗脳セミナー主催の男はウェブサイトを続行しており、いまだにCDを売ったりライブをしたりしているらしい。悪はなかなか滅びない。ちなみにこのサイトを閲覧すると彼に広告収入が入るようなので、見ないほうがいいです。
Toshiの本名が「出山利三」というのもなかなか衝撃的であった。
それにしても、なんであんなにつまらんヒーリング音楽とやらに心掴まれ洗脳されてしまうのか。
一連のジブリ作品にも、相田みつをにも、トイレの神様にも、世界の中心でうんたらにも心動かされたことがない自分はそんなものに絶対洗脳されない、大丈夫という自信はとりあえずある。
音楽ビジネスでやっていくには、繊細な人だったんだろうなと思う。
それと対照的なのが、内田裕也とか萩原健一という生きものである。
最近この辺の人たちのCDを好んで聴いておる。ショーケン『DONJUAN』『デランジェ』は甲乙付けがたい名盤。
誰にも似ていない歌唱法。よく、とんねるす石橋が真似していて何なんだろう?と思っていたのだが本当にそんなんでした。そしてライブにおけるショーケンはキング・オブ・エアギターである。
んで、内田裕也『ア・ドッグ・ランズ』。長いキャリアを誇りながら、オリジナルだけで構成したアルバムは78年のこれ一枚(?)。裕也氏はこのブログでよくネタにしているような気がするが、まあその、ネタにしやすいんである、シェケナベイベー。
ジョニー大倉プロデュース。作家陣に桑名正博、沢田研二、近田春夫、かまやつひろしなど。
一曲目・桑名作の『パンク パンク パンク』。まるっきりパンクじゃないグッド・オールド・ロックンロール。
ジュリーも歌っている『決めてやる今夜』は、ぐっとテンポを落とした裕也バージョンのほうがいい。
阿木&宇崎コンビのまるっきりエルヴィスな『ONE NIGHT ララバイ』。ミッキー吉野作曲の『野良犬ブギ』はクールなシャッフルの名曲。
レナウン娘のCMソングと自動車ショー歌をミックスさせたような、『いま、ボブディランはなにを考えているか』を作って兄貴に歌わせたムッシュはさすが。
『俺は最低な奴さ』は自伝のタイトルにもなった名バラッド。
歌唱力云々はともかく、どこを切っても内田裕也という人間がいるという意味でもこれは名盤。
というか、このぶっきらぼうな歌い方って全然悪くない。
フィクションじみた歌詞をテッテ的にカッコつけて歌いそれが決まる様も、今のバンドマンには薄くなってきた魅力。
(しかし鮎川誠も柴山俊之もエンケンも還暦を越えて、いい塩梅の「大人のロック」をやっているのはクレイジーのケンさんくらいしか見当たらなくなってしまった)。
80年前後の、いかにもなプロがバックを勤めるフュージョンっぽい感じの音も昨今は少なくなってきたような。
ある意味、このちょっとお水っぽいアレンジが日本のロックの王道であった。日本にパブ・ロックはないが「スナック・ロック」はあったんである。
どうやら本物の不良が音楽をやると、スタンダードなロックンロールに帰るらしい。
マフィアが好むミュージシャンもマリリン・マンソンじゃなくて、フランク・シナトラなんである。
明日発売の東京ウォーカーにすうさい堂が載るらしいです。
そして今週は恐らく開店以来始めてのお休みウィーク!今週あとは30(木)と11月2日(日)しか開けてませんのでご容赦!