当店にはこのポスター↑が一番目立つところに配置してあるのだが、特に意味はない。単にカッコいいから。
セックス・ピストルズのドキュメンタリー『ノー・フューチャー』を観る。
彼らの「No FUtuRe FoR YOU」(パンクっぽいっしょ?)って歌詞も単に絶望のフレーズと捉えるより、「じゃあ、どうすんだよ?」あるいは「でも、やるんだよ!」と続けられれば合格。あなたはパンク。
日本のブルーハーツってバンドはこの言葉を、「未来は僕らの手の中」と超訳して歌った。
この映画は再結成前に製作されたので、登場するライブの映像は70年代のレアなものばかり。
世界一美しいバンドのひとつである。そこらへんを考慮してか、インタビューを受けるメンバーはシルエットのみで登場(再結成もあれはあれでアリだとは思う)。
それにしてもジョニー・ロットンの美しさである。普段はシャイで孤独そうな青年がマイクを前にした途端、憎悪をむき出しで痙攣する。しかも若い衆に「自分も出来るんじゃないか?」と思わせた芸当は大したもの。
冗談じゃないって。あんなもんの真似なんかできるわけなかろ!パンクがどんなに過激化しようが、「一流のパンクロッカー」はロットン含め、ごく僅かである。
彼の言葉の切れ味は、白いモハメド・アリ。「パンクはこの15年で最も誠実な音楽だ。つぶせるもんか」。
ピストルズは当時「英国中の敵」であり、しかも矢面に立たされるのはロットンだったので、実際に右翼やチンピラから襲撃を受けたりしていた。
日々のストレスや恐怖は相当のものだったと思うんだけど、彼は自分の役割を自覚していたので2年強、『ジョニー・ロットン』として、がんばった。
勇気を持ってバンドの顔になり、そして勇気をふりしぼってバンドを脱退した。
そんでもってシドである。才能あふれる他のバンドメンバーと違い、どーにもならん木偶の坊。
今の目でみりゃ、普通にグレン・マトロックのほうがバンドマンとしてカッコいいと思う(シドの演奏スタイルには躍動感がない。コワモテ感はたしかに倍増)。
得意げに(バカ丸出しの)鍵十字Tシャツ着て、インタビュー中に耳糞ほじり、しまいにゃぐーすか居眠りをこく。
演奏よりジャンプするほうが重要で、ベースは客をぶん殴るためのものでもあり、作曲よりヘロインを溶かすほうが得意。
で、ブスのジャンキーを殺しただの殺してないだの、その辺もグズグズのままで早々に死んじゃったわけだが、ロットンにとっては親友であり、映画の後半、「あいつはジャンキーにしたくなかった」「こんなひどい話ってあるか?」と自分の誤算について恥じながら半べそをかく、「ジョン・ライドン」という大人がいた。
ここには登場しないが、「ピストルズのいかりや長介」マルカム・マクラレンの立場もあるだろうとは思う。
ただし彼は『グレート・ロックンロール・スウィンドル』で好き勝手やっていたので、これで相殺かと。
監督はどちらもジュリアン・テンプルであった。『ノー・フューチャー』はかなり良い伝記映画だと思う。
時折挿入される、寸劇やコメディのコラージュ以外は(あれ、すっげえイライラする)。
http://www.youtube.com/watch?v=qtbu59k88oo