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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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サブカルノットデッド



映画秘宝が休刊してしまったのである。さてこれからしばらく、面白そうな狂った映画は自分でサーチしなければいけなくなった。でもまあ惑星が爆発して怪光線が地球日本の出版社に命中すれば復活するから大丈夫だ、きっと。
思えば第一号は『エド・ウッドとサイテー映画の世界』というムック本で、どのページを開いても「どうやって観るんだ、これ?」という作品で埋め尽くされていたのが衝撃であった。
それから続々発売された『悪趣味邦画劇場』だの『底抜け超大作』だの『日常洋画劇場』といったイカれたカタログのファンであったので(しかし常に「これどうやって観るんだよ?」がつきまとっていたのだが)月刊化されると聞いたときは「内容が薄くなるから嫌だ」と思ったものだが、さにあらず。
完全に秘宝的な価値観を作り上げてしまった。どういうことかと言うとキネマ旬報などのジャーナリステックな視点の批評に対し、「破壊と血とおっぱい」という中学生感覚で対抗したのである。
モンスターや宇宙人、ヒーロー対ダークヒーロー、傭兵やテロリストによる破壊描写、マフィアの抗争劇や殺人鬼、ゾンビ、頭のおかしい人による血みどろの残酷描写、そこに美人のおっぱいがあれば完璧だ!ということ。
さらにバカしか出てこないバカしか喜ばないバカ映画もちゃんと評価する。そして古典へのリスペクトも忘れない。ボンクラにとっては毎月クリスマスプレゼントを貰っているようなもので「金ないしモテないし友達もいないけど寂しくなかったよ!」という人びとも多数存在した。
紙媒体がどんどん方向転換したり消えていく中で、我が道を貫いていた(実際、日本一売れている映画雑誌だった)秘宝の突然の休刊について「やはりサブカルは死に体」という声もちらほら。

実はサブカルな人がそう言ってるのもわかる話で、なぜならサブカルは「斜に構える文化」だから。
つまりアイドルや特撮、ジェンダーやシリアルキラーなどに対して「斜に構えた目線」があれば、それはサブカルなんである。昔ほどみんながびっくりしなくなった、ということだ。
リリー・フランキーやみうらじゅんはメジャーだからもうサブカルじゃないみたいな意見もあるけど、リリーさんの隠しきれない負のオーラ、みうら師範のどうにもこうにもな異物感はやはりサブカルである。
というか、サブカルがいまやメジャーとがっつり組んで生き延びているとも考えられるのだ。
具体的に言えばライムスター宇多丸が民法ラジオの重要な帯番組のパーソナリティーになり、典型的な秘宝読者のような監督が撮ったインディーズ映画が大ヒットし、大森靖子がアイドルに楽曲を提供し、ジャニーズのタレントがマニアックな作品に出演し、ザ・ドラァグクイーンのマツコ・デラックスは日本で最も忙しいタレントになり、吉田豪は第一級のプロインタビュアーであり、少し前なら完全にカルト扱いの『パラサイト』や『ヘレディタリー』が大ヒットし、テクノがルーツの地下アイドルだったperfumeがドームを埋め、かつて町田町蔵というパンクロッカーだった町田康は文学界の重鎮になり、田口トモロヲは安定のバイプレイヤーであり、泉昌之として『ガロ』でデビューした久住昌之が国民的な漫画原作者になり、アーバンギャルドは絶妙な位置で活動を続け、サブカルのディーヴァ・しょこたんは健在であり、蒼井優と山里亮太は結婚する。
まだまだありそうだが、むしろサブカルは完全に勝利してるんじゃないか。線引きが見えづらくなったために「死んだ」とささやかれ続けただけなのだ。
クイックジャパンにしても内容はアイドルとお笑い芸人が中心になったけど、あの異常な文字量と熱量は同じであり、かつてがあまりにも「頭のおかしい素人」を載せ過ぎたのである。
今の『宝島』がどうなってるかなんてまるで興味がないし、ネトウヨ出版社となった青林堂なんぞどうでもいい。ただ「根本敬の失速」というものがあるのだが、かつてあれだけギラギラした影響力を誇ったものはまあ致し方ないのかな、と思う。とにかく90年代サブカルにとって『因果鉄道の旅』と『人生解毒波止場』はマスターピースだった。今頃彼の活動を「ヘイトの根源」としている連中がいるらしいのだが、どれだけ根本敬が「斜に構え」つつも韓国を愛し、玄界灘を渡っていたかということを理解できないのだろう。

俺も昔はこんなのが好きで~、とかぬかす輩には言わせておけばいいのであって、こっちはサブカルに命を救われたんである。そのような下地を作ってもらったものに対して感謝こそすれ、バカにする気は微塵もない。ムダな知識はかっこいいんじゃないかと井戸を掘り続けていたらまともな人生はどっかに落としてしまった感がなきにしもあらずだが、DIGするのがサブカルなんだからそれはしょうがない。いくら観ても読んでも聴いてもまだまだ足りない!ってーのがサブカルなんだから。実際マイナーレーベルからまだまだ怪しい音源は発掘されているし、秘宝を読んでいてもまだこんな頭のおかしい映画が存在していたのか&作られているのかと呆れつつも刺激になるわけだから、最高の脳内麻薬である。ドラッグなんぞいらんのだ(むしろあれはリア充が使用するものではないかという気がしてきた。シラフでいるほうがずっと面白いのにね!)。
はっきり言えば自分が自殺しなかったのはサブカルがあったから&マイノリティという自覚があったからであり、時流とともに消えていくマジョリティが無自覚に好きだったら危なかったと思う。そもそもマジョリティとマジョリティが楽しくマジョリティの話をしているところに自分なんぞが入っていける隙間なんて一ミリもないのだ。
「そこ?」「そこ!」という感覚は大事なんだよな、ドルーグ!ってことである。ゆえにカウンターカルチャーでもなくサブカルチャーでもなく、サブカルはノットデッドなのだ。

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