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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

すうさい堂は閉店しました。17年間ありがとうございました。

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そら、死ね



先日はまたブルースタジオ@北千住。『ソナチネ』鑑賞。これも二十回以上は観ているのだが、スクリーンでは初めて。この劇場はコンクリート打ちっぱなしの内装がカッコいい。席はガラガラ。七人。
槍に刺されたナポレオンフィッシュのオープニングが強烈だが、この愛嬌のある顔の魚が串刺しにされているというイメージは、作品におけるビートたけしの運命を象徴しているのか。
たけし演じるヤクザが最初から疲労している。「ヤクザやめようかなあ。なんかもう疲れたよ。」。
だけど「仕事」なので、雀荘のマスターさらってクレーンで東京湾に沈めたりするが、もはや何の感情も無い。
「もう三分過ぎたんじゃねえか?」

組長と兄弟分である沖縄の組織が他の組と揉めているので、たけしたちに応援に行ってほしいと頼まれる。「なに、大したことじゃないんだ」。
この組長がまったく好々爺然とした普通のおっさんで、さらにひゃっこさが倍増。
たけし一行が沖縄へとぶ。大したことじゃないという話しだったがいきなり事務所爆破。
危険ということで水道の電気もないあばら家で逗留するはめに。
東京ヤクザたちはすることが無い。ロケット花火で撃ち合ったり、ウィリアム・テルごっこをしたり、落とし穴作ったり、相撲とったり、沖縄民謡踊ったり。
命の保障がないにも関わらず、「やることねえもの」とそんな遊びに興じるヤクザたち。
抜けるような青空の効果も相まって、まるで夢みたいである。海と空のブルーに対し、赤いフリスビーや爆破した車の黒煙や、たけしの白い開襟シャツとのコントラストが映える。
敵対組織の描写は一切されず、沖縄の組長の「ナントカがナントカでナントカらしいんだ」との曖昧な説明だけが綴られ、抗争は激化していく。
普通はヒットマンというと黒スーツのイケメンかサイコ野郎だったりするが、いかにも南国にいそうな釣師のおっさんという発想はやっぱりすごい。

あまりにもオフビートなのでアート映画と見られるきらいもあるが、起承転結はあるし銃撃戦もある。それを北野武監督は曖昧にしたり、一瞬のカットで表現したりするのだが、実は立派な娯楽映画。
もう大コケした93年の公開当時とは違うのだから、観る側のセンスも磨かれていると思う。
(ちなみに『DOLLS』なんてこれはアート映画だろ?との思い込みでいまだに未見)
娯楽性としては一作目に軍配が上がるけど、たけし自身は役者としては経験が浅いので、ずっと仏頂面で通している。
ソナチネやっぱりいいなと思ったのは、ビートたけしの演技が素晴らしいから。
これだけ観倒しながらも改めてグッと来た。それはビートたけしの笑顔である。
無感情で人を殺すヤクザ者だが、子供みたいな遊びに興じているときに見せる無邪気な笑顔。これは今のたけしには絶対出来ない。
いかにも強面な男たちを配した中で、彼の何気ないスタイリッシュさは光る。
たけしと最後まで行動を共にする沖縄ヤクザの勝村政信は最後まで短パンで通す普通のあんちゃんだし、たけしを慕ってくる現地の女・国舞亜矢にも過剰に色気のある演技はさせない。
一番かわいがっていた舎弟の寺島進を殺された直後、たけしが一人でフリスビー遊びをするシーンは、さりげなくも悲しい。
観終わったあとにいつも「もわっ」としたものが残る。救いのない映画だが、なぜだかその「もわっ」は、ちょっと暖かかったりする。


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