パソコンが壊れていた間なにをしていたかというと、『探偵物語』を全話鑑賞していたのであった。
180cmを越える大男が黒スーツにカラーシャツ、ヘルメットのかわりにソフト帽でべスパに跨り疾走する姿は今の目から見ればいささかファンタジー的であるが、カッコいいとはこのような事象を指す。
この工藤俊作コスプレは出来なくても、コーヒーに凝ったり、シェリー酒飲んだり、アイマスクつけて寝たり等の小技に影響されたファンは多いんじゃないだろうか。そして全国の工藤姓をもつ男が「工藤ちゃん」と呼ばれることになるのである。
(「純喫茶『探偵物語』」なんて店を開いちゃったりした人もいたんじゃないか?)
松田優作のような役者が、どうやら日本から消えて久しい。
まずこの人はこわい。身長がこわい。顔がこわい。声がこわい。ビルドアップされた肉体がこわい。交友関係がこわい(裕也さん、石橋稜とか)。クイズ番組のパネラーとかやんないのがこわい。
しかし、この工藤ちゃんとしての優作は、成田ミッキーオ・山西道広の刑事コンビをはじめ、倍賞「マサコちゃん」美津子、緑魔子、中島ゆたか、石橋蓮司、岸田森、氾文雀、優作嫁、ジョー山中、水谷豊などの「優作まんだら」な人々と、一本筋の入ったおちゃらけを貫いている。
一番すごいのは、ほぼコント仕様の「イレズミ者(そういう役名なんだよな・・・)」と、仕事を依頼するために、刑事コンビが工藤ちゃんを接待した警視庁内の接待部屋で、ライトアップされた桜田門をバックに婦警さんがストリップをおっぱじめるシーンである。よくこんなの放送できたよな、と思う。
この作品はディープなファンが山ほどいるだろうから自分などが偉そうに書ける立場じゃないのだが、ひとこと言いたいのは「真ん中とばして最終回だけ観るなよ!」ってことですね。
すべての「軽さ」はこの最終話のためにあるのだ。優作氏も「工藤ちゃんの最期」を常に頭に置いて、毎回繰り返される悪ノリを演じていたはずである。「続編」など最初から考えていない。
自分はすっかり御悔みの気分になり、DVDをすべて観終わったあと、お香を炊いて工藤ちゃんを追悼した。
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