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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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ジョーカー&ドラゴン



ひとつの役柄に没頭し、本人と完全に同化してしまった故、こちらとあちらの境界線がなくなり、「いい塩梅ですがこれ次はないっすよというわけでいかがっすか?」てな感じで死神の引き潮に乗って、そのまま逝ってしまったひと。
『竜二』の金子正次と、『ダークナイト』のジョーカー、ヒース・レジャーがそんなタイプではないかと思った。
もちろん時空は違っているから、常に「奴」は狙っているのである。

『竜二』は自主制作でありながらも主題歌はショーケン、フォーリーブスの北公二や桜金造(ベストアクト!ギャラは分割で七万だったらしい)を出演させ、配給には松田優作が奔走したという。
バリバリのヤクザ・竜二(金子)が堅気の娘と子をもうけるのだが、事件を起こしてしまい、出所するには三百万の保釈金が必要。嫁の実家が出してはくれたのだが、そのかわり別れて娘と孫を返せという。
ぶち切れまくる竜二だが承諾。その後、ルーレットなどのシノギで株を上げていくのだが、渡世がどうにも虚しくなってしまい、妻子とともに堅気となって生きることを決心する。
当初はとても幸福であったが、凡人として生きることにはやはり限界があり、結局彼は白スーツで決めた「竜二」として、新宿の夜に戻るのである。
公開直後、映画の成功を見届けて、主演の金子正次は癌で他界する。という伝説がこの作品にプレミアをつけたことに間違いはない。

単純な話なんだが、アウトローであろうとなかろうと、野郎にとってはくすぐられまくる名作。
竜二の持つ暴力性とイノセントさの両側面もしっかり刻まれており、まー僕の周りにもいますが、そういう人はなんだかんだでやっぱり魅力的なんである。
最高なのは嫁さんと別れるシーンで、仕事中にぶち切れて同僚の手に煙草の火を押し付けてきた帰りに(おそらくその場で辞めてきたのだろう)、バーゲンセールに近所の主婦と嬉しそうに娘と並ぶ、我が妻を見る。
そこで、今まで極道張っていた男がボロボロと泣いちゃうんですね。
いろんな思いが胸に去来したのだろうし(単なるおばちゃんになっちゃったんだなあ、とか)、それまでくすぶっていたものが引火して、逃げるようにその場を去る。というか、逃げた。最低だ。
家庭人としては最悪。間違ってる。なんだけども、「野郎」の選択としては正しいとしかいいようがない。
このシーンを観たすべての野郎どもは映画館で、自宅のモニターの前で、拳を握ったに違いない。

ティム・バートンが監督した『バットマン』『リターンズ』の屈折感が大好きで、そのあとのはいいやと思っていたのだが、『ダークナイト』にはやられた。
バットマンが「非合法の自警者」という扱いで、あまり崇拝されていない様子。執事に「いつまで続けるおつもりですか?」なんて言われたりする。
実質上の主役は「ジョーカー」である。ジャック・ニコルソンが演じたそれよりも、ヒース・レジャーは不気味でソリッドでクールな、究極のテロリストを作り上げてしまった。
哀愁よさようなら、ヒース版ジョーカーにあるのは破壊衝動のみ。快楽のための悪。カネのためにやってるわけじゃないから、札束の山も平気で燃やす。用意周到に行う残酷なゲーム。正義の検事も悪党「トゥーフェイス」として再生させる。
常にジョーカーに先を読まれ、苦虫を噛み続けるバットマン。
そしてバットマンは、最後までジョーカーを殺せないのである。それどころか冤罪をひっかぶり、追われる身となる。実質上、「悪が勝利」してるんじゃないかこの映画。
『ダークナイト』公開を待たずに、ヒース・レジャーは睡眠薬の摂取が原因で他界。

金子正次のあとに「竜二」はいないし、ヒース・レジャーのあとに「ジョーカー」はいないのである。
再生されたとしても、それらはバットマンもといバッタモンである。

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