古本屋なのに作業日誌などを一切書かずに申し訳ないのですが(とは全然思ってないけど)、そんなものを綴ったところでひとつも面白くありませんからね。新着本・推薦図書などはツイッターに挙げるようにしたので、そちらをご覧下さいませ。
ところで世間(というか世界中)の盛り上がりと自分の温度差を激しく感じたのが、『マッドマックス 怒りのデスロード』である。
やっとDVDで鑑賞。したところ。これが。全然。ついていけ。ない。
プレステじみた砂漠の場面にスキンヘッド軍団と主人公(マックスなの?)と妙に小奇麗なねえさんたちが逃げたりバトったりしているうちに終わっちゃったなあ。といったところで、どれだけ自分が退屈していたかというと、途中で「電子レンジの掃除」をはじめちゃったくらい。
やはりマッドマックスは一作目。テレビの洋画劇場で観た。出てきたバイカーたちは本当に凶暴で怖かったし、ラストのマックスによる「鬼畜の所業」は衝撃であった。
どうしても近未来とかSF的な設定に乗れない。超兵器とかロボットとかナントカ軍団とか、何でもありなのがどうも苦手。『時計じかけのオレンジ』は、要するに団地っ子の日常だし。常にジメジメした雨が降り続いていて陰鬱な気分になる『ブレードランナー』のみ例外。あれは下町慕情。
一緒にレンタルしたのが『ムカデ人間3』。もちろんシリーズを踏まえての上での話だけれど、最高です。
などと大っぴらに言ってもいいのかと躊躇するような内容だったのだが、先日映画友だちのP君が「(今朝観た)ムカデ3がいかに素晴らしかったか!」ということをマッドでマックスなマシンガントークを繰り広げに来たので「やはりオレは間違ってなかった」と思った。
舞台は「ジョージ・ブッシュ刑務所」。一作目の医者と二作目の警備員がそれぞれ所長(ビル・ボス)と会計士(ドワイト君)。全編、彼らの漫才。史上最悪の凸凹コンビ。
一作目は変態医師、今回はキチガイ所長を見事に演じるディーター・ラーザー氏という俳優にますます「ドイツは変態のくに」という偏見を強くする。
前作で主演のローレンス氏はとりあえず「あ、ちゃんと服を着てちゃんと喋ってる」と、まず思う。
冒頭、凶悪な犯罪者ばかりなので誰も言うことをきかず、半べそで「オレをリスペクトしろよ~!」と威嚇射撃するボス。
つまり、この作品はホラーじゃなくて、どす黒いコメディなのであった。
そんなわけでボスは、反抗者への容赦ないリンチや「DIY去勢」でタマキンを抜き取ったり(それを「エナジーフード」と称して揚げて食う)していて日々忙しい。
そのため常に復讐に怯えて酒に溺れている。囚人たちのシュプレヒコール「デス・レイプ!デス・レイプ!」が耳から離れない。
囚人たちを人種差別することなくディスりまくる。ニガーは当たり前、陰毛ヒゲのイスラム野郎とか、全身タトゥーの白人には「皮膚ガン」とか、あとなんだっけ、とにかく多彩なボキャブラリーは、ほとんどラッパー。
父親を釈放してやったろー?と秘書のデカパイ(デイジーちゃん)を奴隷として扱い、取り寄せた「クリトリスの干し物」をこんぺいとうのように貪る。
看守たちも従順にリンチに手を貸すし、専属医も「ボスには恩がある。医師免許ないのに雇ってくれた」(ダメじゃんか・・・)と、頭が上がらない。
ドワイト君は業を煮やし「映画観たでしょう!囚人たち(500人)の口と尻を繋いでムカデ人間にしちまえばいいんすよ!!」と、ボスに直訴。今回はツッコミ役っぽかったがなんのこたあない、こいつが一番狂ってる。
食事などの経費節減、更正処置としても最適(ぶっははっ)というわけ。
監督のトム・シックスも「トム・シックス監督」として登場。「ムカデ人間は医学的に百パーセント正しい」と豪語。
医師も「うん・・・ひゃくぱーせんとただしい」と同調。バカの国。結局一番マトモなのは、肉奴隷のデイジーちゃんか?
キャラが振り切れすぎて肝心のムカデ人間がオチだけになっちゃった感は否めないが、主人公ビル・ボスの立場ならば、はっぴぃえんどな結末。アホらしくも政治的にジ・エンド。
マッドマックスはメジャーな手法で作り上げた映画なのだろうが、作品は別にマッドがマックスなわけじゃなかった。「うーんマッドだなあ」と思うものはやはり底辺からじわじわと来る。頂上と底辺がそれぞれの手法で新しいものを更新していくのが正しいと思う。
結局、どんなジャンルでもセックス・ピストルズみたいな奴らが登場した瞬間が一番ワクワクする。