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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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史上最低って最高



「史上最低」。甘美な響きである。が、何を指して史上最低と呼ぶのか。あまりにもチープな稚拙さか。あえてモラルに揺さぶりをかける過激な表現か。あるいは目を覆うような「志の低さ」か(これに関しては見えづらいがものすごく多いような気がする)。
エド・ウッドとは自分の映画監督としての資質(の無さ)をまるで気にすることなく進み続けて、ひたすら「映画を撮る」という行為を続けたひと。ティム・バートンは溢れんばかりのリスペクトで彼の伝記映画『エド・ウッド』(94)を撮った。
エド・ウッドにとって最重要なのは「自分が映画監督であること」。メガホンで現場に立っていればハイになれるようで、つまり「何かを撮っている」ということが一番重要なものだから、「そこに何が映っているのか」ってことは基本的にどうでもいい。おおよそいい感じ、であれば。だから役者がセットにぶつかろうが発泡スチロールの墓石が倒れようがさほど問題ではない。いわく「パーフェクト!」。

彼を演じるのはジョニー・デップ。実際のエドさんもなかなかの色男なので、「ややとち狂ったイケメン」ぶりが板につく。ちなみにエドさんは女装が好きな服装倒錯者でもあったので、その筋でも先駆者なのだった。
それにしてもこの作品のエド・ウッドはチャーミングである。エドはダメ映画監督だったかも知れないが、人間的には全然ダメじゃない。
彼はそのチャームさで人脈を集め資本を募り、とにもかくにも作品を作り続けた。
その中の大物にベラ・ルゴシがいる。『魔人ドラキュラ』その人だ。ゴスを掘り下げれば元祖中の元祖が彼のドラキュラ伯爵だと思うのだけれど、エドと知り合った頃には仕事もなく落ちぶれたハンガリーの老人。しかもアルコールとモルヒネ中毒。
エドはベラの大ファンだったので「ぜひ自分の作品に出てくれ」と依頼する。仕事のない俳優は出演することになるのだが、現場にある動かない大ダコのセットに自ら飛び込み、「自分の手で」タコの触手を動かして「ぎゃあああああ」とかやっていたんだけど、実際のところ心中はどうだったのだろう。
そしてベラの演技は一昔前の芝居がかかったものだったので、スッカスカのエド作品に少しは厚みを加えた(のか?)。とにかく「あのベラ・ルゴシが出演!」ということは、なんもないエド作品にとって超目玉なのだ。
ちょっと面白いのはベラがやっかみなのかボリス・カーロフのことを「フランケンシュタインなんてのは、うおー!とか唸っていれば誰だって出来るんだ」などとやたらバカにしていて、エドも「そうそう!ドラキュラは優雅でなきゃ!」と調子を合わせてる。ダメ映画監督と落ちぶれ俳優の微笑ましい友情。
(カーロフはあのメイクながらとてつもなく哀しい目つきをしていて、自分は大好きなのだけれど、まあいいいか)
ベラ・ルゴシは治療費が払えないためリハビリ施設を追い出されたのち死んでしまう。貧乏ダメ監督であるエドは「もう大丈夫だから退院だよ」と言ってあげることしかできない。

もう一人はヴァンパイラ。テレビの人気女性ホラー・ホストだが仕事を干されていたので、「まいっか」という感じで作品に出演することを了承。ヴァンパイラの映像は現存せず、彼女の動く姿が観られるのはエド・ウッドの代表作『プラン9・フロム・アウタースペース』だけらしい。
これねえ、ほんっとにつまんなくて、内容は、宇宙人が地球人の死体を蘇らせてみたら超楽しくね?的な、・・・・すいませんまともにみてないのでよくわかりません。
ただUFOは灰皿で、宇宙人の服はドンキホーテ以下ということはわかった。ちなみに、近所の教会をうまいこと言いくるめて出資させた。
ともかく、セリフはないものの女ゾンビとしてヴァンパイラが出演している。エド・ウッド最大の功績は「動くヴァンパイラを映像に残したこと」かも知れない。

まとめれば「でも、やるんだよ!」の人。少なくとも自分の作品づくりを楽しんでいたし、その点で「志が低い」なんてことはまったくない。原案・素材の作成・編集の才能が皆無だっただけで。
「我々はみなエド・ウッドなのだ」などとは絶対言ってはいけない。ものを作っている人はそう言いたいだろうけど、絶対、一緒じゃないから。
エド・ウッドの本当の凄さは「自分の才能がまったくないということを一切認めない才能」であり、この根本に揺るぎがないから「史上最低の映画監督」というある意味最強のアイコンに成り得た。エド・ウッドはどこまでいってもエド・ウッドひとり。彼は「そこそこやっていけてる人」とは明らかに違う、異端者=フリークスなんである。
劇中でオーソン・ウェルズがエドに「他人の夢を撮ってどうする。自分の夢を撮れ」と言うシーンがあるのだが、「ちょっときれいすぎじゃね?」とは思ったものの、実はエド・ウッドに対してはその通りなのだった。

この作品はとても優しいし感動的だ。もちろんオタクではみ出し者のティム・バートンが優しい視線で作っているからなのだが、クズ文化が好きなオタクもそうじゃない人もじわっと来ると思う。つうか、これを貶すのは人間じゃないです。
が、後追いで一連のエド・ウッド監督作品は、観なくていいと思います。感動の涙も一瞬で乾くというものです。むしろ観るならば1931年の『魔人ドラキュラ』。
そういえばこの前のアカデミー賞をモンスター映画が総なめで受賞したとき、中継の町山智浩氏が思わず涙をこぼしていた。あれは「俺たちが大好きなやつをやっと世間が認めてくれた!!」という、本物のオタクの涙であった。


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