今年は妙に蒸し暑かったり雨が続いたりであまり秋っぽくないまま10月になりましたが、ようやく涼しくなった。
とはいえ現実逃避の映画鑑賞しかしていないので、別に天気なんかどうでもいいのだが。
ああ現実が辛いつらい。
ポール・バーホーベンにはまった。まとめて作品を観たら全部面白かった。「バ」で始まり「ン」で終わるキャラは「バカボン」「バットマン」「バラゴン(地底怪獣)」など、カッコいいものが多い。
そこに力入れますか?といった作風。『ロボコップ』は特に顕著で、ヒーローものだと思って借りるとあまりの残酷さにびっくりする。カクカクした「ロボコップものまね」が一人歩きしている気がしなくもないが、とんでもない映画なんだぞ。
『スターシップ・トゥルーパーズ』(97)も然り。「アクションSF」で間違いじゃないんだけど、蓋を開けてみれば全編血まみれ。
市民権欲しさに志願兵となった若者たちが巨大ムシ軍団(バグ)と戦争している未来社会。このバグたちが大変気色悪く、さすがにこれはちょっと、怖気立ちながら観てました。カマドウマ大嫌い。
若い兵隊たちがバグに虐殺されていく。SFの枠としてはそこまでやんなくてもというくらいのゴア描写。
実はかなり悪趣味な映画だが、面白いのである。たいへん面白い。ただし「戦争は嫌だなあ」と強く思う。しかも、わけのわからん虫なんかにぶち殺されるのは絶対嫌だ!
好戦ファシズム国家を皮肉ったラストも強烈な一撃。極端な形の反戦映画だったりして。
大ヒット『氷の微笑』(これだけ有名なのにノーパン足組みシーンしか知らない)の次に監督した作品が『ショーガール』(95)。
大コケ、評価はボロクソ、その年の最低映画賞(ラジー賞)まで受賞。という情報しか知らなかったのだが、面白いじゃないですか。一体どこがダメなんだろう?
ストリッパーど根性物語INラスベガス。おっぱい出しすぎ?せっかく付いてるんだから出せばいいじゃんか。ストリップが舞台なのにビーチクは隠せってか?
ストリッパーたちのダンスがカッコいい。これも込みでダメな作品というのならば、じゃあ一体何だったらいいの?という話ですよ。
基本的に少女漫画の世界。というより愛憎が交錯するのでレディコミか。
難解なだけでしょうもない作品も数多いのに、すがすがしいまでのベタさ。そして頻繁におっぱいが登場するので、段々何とも思わなくなってきます。
女を売っているはずのストリッパー(主人公)が根性者で、くだらん野郎どもをぶっとばして終わるのだから、フェミニズムに満ちた作品とも言えるのだが。
バーホーベン先生はラジー賞のステージに上がって、直々にトロフィーを受け取っている。
洒落者である。
さらに大コケ、低評価という『インビジブル』(2000)。なんでかなあ。面白いのになあ。
生物を透明にする研究をしているチーム。リーダーの科学者であるケヴィン・ベーコンは天才肌だが、傲慢ないけ好かないやつ。彼が自ら人体実験のモデルになる。
透明化していく過程が、皮膚が無くなり筋肉になり内蔵や血管が見えて徐々に消えてゆくというエグいもので、世界にどれくらい「透明人間映画」があるのか知らないけれど、本来地味なテーマをここまで悪趣味な見せ場を作り盛り上げたのは、やっぱり偉い。
そして透明になった者はエロいことをする、というのは古今東西の定石。さらにベーコンは性格までも加速度的に凶悪化する。
どうせ「モンスターの悲しみが描かれていない」とか何とか叩かれたのだろうが、そんなもんどうだっていいよ。
半分くらいは透明人間なので、天晴れなくらいケヴィン・ベーコンの無駄遣い。
次々に作品が大コケするので「ハリウッドなんかもういいよ」と、オランダに戻って撮った『ブラックブック』(2006)。
ナチス時代の話が大好物なんですが、これ最高です。サスペンス仕立てなのでネタバレしないように書くと、家族を殺された復讐のためにナチ将校・ムンツェのスパイとして潜り込んだユダヤ人女性・ラヘルの物語。
このムンツェが「とてもいい奴」で、彼に近づくためにラヘルが用意したのが切手。
ムンツェは切手マニアなので「えっこんなの貰っていいの?」と喜ぶ。このさまは男ならわかっちゃうんだよなあ、という感じ。
彼の描き方がとにかく斬新であり、「ナチスと言えど集団なんだから、いい奴だっているに違いない」という発想。対照的に「いかにも悪いナチ」という風情の将校も登場するが、この人がピアノも歌も達者ってのが笑う。後半、ラヘルにはとんでもなく悪趣味な制裁が待っている。
もちろん上から目線はなく、さくさくとストーリーは進み、主演女優はちゃんと脱いでいる。
どうせおっさんとおばさんが揉める話だろうと思ってスルーしていたが、『氷の微笑』も観なければいけないなあ。