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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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地獄のカッコマン



ここのところ犯罪本を立て続けに読んでいたりするのですが、特に強烈な印象を残したのが昭和五十四年の三菱銀行立てこもり犯人・梅川昭美(うめかわあきよし)を描いたノンフィクション、『破滅ー梅川昭美の三十年(毎日新聞社会部編・幻冬社アウトロー文庫)。
本人が大藪晴彦ファンなので、おそらくその主人公を模したイメージのファッションで銀行に押し入り五千万を要求し、猟銃で警官や銀行員四人を射殺。
女子銀行員を裸にして人間の盾にし、さらには「ソドムの市(パゾリーニの残酷映画。この辺のアイテムを知ってるところがまたなんとも)を知ってるやろ?」と、人質に命令して、負傷した銀行員の「耳を削がせた」極悪人。
警察の特殊部隊により射殺。享年三十歳。胸に刺青を施し、犯行直前にアフロヘアーの手入れをして臨んだ洒落者。
十五歳の時に強盗殺人を犯している。

「三十までになにかでかい事を」と思い詰めた結果がこの事件だったらしいのだけれども、いざ犯行に及んだら何かどーも勝手が違う。なんで抵抗すんねん?と、なし崩し的に発砲&篭城。
その後もちまちました借金を銀行員に命じて返済に回らせたりしているのだが、こういう形でお金を返したところで、無効だそうです。さらには「普通の犯罪者」のように「逃亡」という選択を示唆しないため、現場の指揮官も「何を考えているのかさっぱり分からん」と、相当困ったらしい。
要するに何も考えてない。犯罪者としてもド素人。いわゆる「男の意地」みたいなもんに動かされたあげく、にっちもさっちも行かなくなって自滅した迷惑極まりないバカ。
解説を書いている宮崎学(犯罪のプロフェッショナルですね)も、「ズサンで幼稚」と喝破している。

本人も、「おれは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや」という言葉を残しているのだが(これもまた芝居がかかっているというか)、それに沿って考えるとこの破れかぶれな行動は、一連の連続殺人犯なんかと違い、ちょっとした悲壮感もたたえていたりする。
で、後年この事件を元にした、『TATOO[刺青]あり』という映画も製作されている(監督・高橋伴明)。
主演の宇崎竜童が梅川昭美にソックリ。正直、梅川にかなり肩入れしているような作品なのだが、なんか昔から好きで、ついつい再見してしまうんですね。
映画ならラスト、この本なら冒頭に母親と坊さんの二人だけで行われた梅川の葬儀が描かれているのだが、こういうのはちょっと胸が締め付けられる。犯罪はしないのが良い。ちまちまとでも生きてりゃそれだけでも真っ当ということで、よろしいじゃございませんか。
ダウンタウン・ブギウギ・バンドの曲に『カッコマン・ブギ』ってのがあって、いわゆる昭和歌謡ロックみたいなものなのだけど、「カッコマン/なりたくって/カッコマン/なりきれない/それが悩みのタネじゃん」という歌詞が意外と、梅川昭美の本質を捉えているのかも知れないとか、こじつけで今、思いました。

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