『レコードできくイギリスのパンク/ニューウェイブ史』(森脇美貴夫・著/音楽之友社)、読了。
著者は今は亡きパンク雑誌「DOLL」の代表として有名。ミッキー森脇氏はパンク勃発当時からシーンに関わり続けた人なので、この本は75年から90年までの音楽回顧録となっている。
後追いと違ってすべてリアルタイムで体験しているから、バンドやシーンが最高だった頃を肌で知っている。ゆえに「~枚目以降の彼らに興味はない」「現在の彼らにはまったく興味がない」と切り捨てる文章が多い。一番顕著なのが「二枚目以降のクラッシュはどうでもいい」ってやつで、こんなこと言ってる日本人を他に知らない。初期すうさい堂の常連さんでもあったので、「やっぱりセカンド以降のクラッシュはダメですか?」と聞いたら「うん」と答えてた。
パブロック、オリジナル・パンク、ポスト・パンク、ニューウェーブ、ポジティブ・パンク、ハードコアなどなど。意外とエレクトロ・ポップが多い。パンク雑誌の顔という立場上、あまり公に出来なかった嗜好か。
でも「レコード・コレクターズ」のユーミン特集で相当数アルバムレビューを書いていたから、基本的にポップスもお好きなのでしょう。
紹介されているアルバムを自分はどれくらい聴いているか数えてみたら、32枚だった。
一発芸みたいな連中が多いので、特にニューウェーブ系はファーストのびっくり度が一番大きい。
パンクから出発したバンドは音楽的に成長するとパンク・ファンからそっぽを向かれてしまう傾向があるが、じゃあ型どおりのことを薄くやってる後発の連中はパンクなのか?という矛盾も常に抱えている。
初期パンクといえどもバズコックスとシャム69とジェネレーションⅩでは音も主張も全然違う。どれを聴いても一緒ってわけではないんである。
パンク最大の功績は「PUNK」という概念を作った事なんじゃないかと思う。
パンクなアート・パンクな映画・パンクな漫画・パンクな小説・パンクな芸人・パンクな、パンクじゃない音楽。
「あれはパンクだ」という価値基準。こいつを物差しにすれば、深作欣二もジョージ秋山も江戸川乱歩も由利徹もゲンスブールもマディ・ウォーターズもパンクである。
自分にしてもパンクに影響を受けていなければ、果たしてこんなポンコツな店をこれだけ続けて来られたかというと、甚だ疑問。
ミッキー氏といえば思い出すのがリアルタイムのライナーを編集した『パンクライナーノート』(JICC)で、最近はすっかり見かけなくなったが、これが熱い本で購入当時は愛読致し候。
なにせ「このレコードを聴いて震えなければ、あんたとロックは縁がないんだぜ」みたいな文章がバシバシ飛んで来る。パンクなどほぼ理解出来ていなかったであろう当時の日本で、氏を含む何人かは「今これを聴かないで何やってんだ!」との思いをぶつけていたんである。
本著になると表現が「あの頃の彼らはカッコよかった」「圧倒的な普遍性」「エキサイティングな名盤」といったように回顧調になるが、何百枚ものアルバムを聴いた上で「森脇美貴夫」というブレないアティテュ-ドが形成されている。
去年までファンジン作りに参加させてもらっていた、パンク・フリークの某氏の連絡が途絶えて半年以上になる。
その人の店発行のファンジンだったので閉店となれば消滅するのは当たり前なのだが、すべての人の原稿を普通に受け取ったあと、どうも「あまり良くない辞め方」をしたらしい(予告なしの急な閉店に自分含め、かなりの人が戸惑っていた)。
一緒にイベントをやったときも「なんでこんなつまんない業界トーク聞かされてんのかな?」と思っていたのが実は正直なところ。
何百枚のレコードを聴こうが、何万円もする7インチを持っていようが、ツイッターやブログで一席ぶとうが、それまでつきあいのあった人すべてに砂をかけてトンズラした。
結局なにも学んでなかった、ということ。そういうのがパンクな生きかたではナイ。
この本では紹介されていなかったカッコいいバンドふたつ↓
明日は火曜ですが祝日なので通常営業致します。
とりあえず毎日何かを読んではいるのですが、違うマンガを別々に2巻まで読んだらこの文庫ってな感じの本詠み散らかしの日々。ゆえにブログネタとしては印象がはっきりしている映画や音楽に寄りがち。
ところで最近もっとも感動した一冊が故・バウスシアターの元スタッフ女子が貸してくれた大越孝太郎・『天国に結ぶ恋』(青林堂)である。
時は大正十二年。シャム双生児の兄妹が主人公(医学的にはあり得ないらしい)。
男児は虹彦、女児はののこ。二人は腰で繋がっているが、ののこは生まれてから一度も目覚めたことのない昏睡状態のまま生きている。
この発想、筆致のエロティックなこと。エログロはまず絵が美しくなければ成立しない。どれだけ猟奇的なことを描こうが著者の絵は美しいのである。近親相姦的な匂いも醸し出し、ぞくっとするような耽美・背徳感が漂う。
関東大震災の衝撃によりののこは覚醒するが、家族がバラバラになってしまったところを見世物小屋のスカウトマン・ハクダミに目をつけられ、そのまま「くっつき」として一座のメンバーになる。
見世物小屋を舞台とした作品は丸尾末広の『少女椿』が有名だが、あちらがパラノイアックに展開するのに対し、この大越作品は、すげえいい話であります。
ハクダミはライ病の母親から生まれ、自身もスキンヘッドのなかなか凄みのある形相をしている。
が、彼は「片輪者(オレたち)は仲間がすべて。鬼ばかりの地獄でも誰かひとり、信じあえる相手がいりゃあ、そこが天国と思え」のポリシーのもと、ビジネスとして見世物稼業の裏方をしている。
自分たちの特殊能力を生かし、自分たちのコミュニティを作って生きようとする、理想の男なんである。
後半は興行先のヤクザ者たち襲われ一座は皆殺しにされてしまうという、かくも残酷な展開になるのだが、実はこの作品は「第一巻」である。
未完ではあるが、ここまでの完成度の高さに「これで終わりでもいいや」という気にさせられる。
続くのであれば「成人した虹彦とののこの更なるエロティックな関係」なんて展開を勝手に期待してしまうのだけど、シャム双生児の近親相姦まがいなどというヤバい題材を載せてくれる媒体が果たしてあるかどうか。
グロテスクなテーマに入れ込めば入れ込むだけ、大越孝太郎の絵は妖しく輝く。この艶っぽさは絶品。
ところで本作は結構なレア本である。どこかで安く見かけたら購入をおすすめします。すうさい堂には売ってません。
さてどうも秋に突入したらしく、鳥肌が立つくらい気持ちのいい連休であります。
この時期、本も音楽も映画もじわじわ効くのでお小遣いをたくさん使うべきである。メイジャーと違って、読んでも見ても聴いてもまだ足りない!ってのがサブカルチュアだろ?と挑発してみます。
なぜか70年代官能劇画が大量入荷。ゲスの極み乙女を描かせたら第一人者の三条友美先生!
巨星・笠間しろう先生もやけに充実。『淫獣の森』『恥辱の刻印』『鬼畜と隷嬢(れいじょう)』『欲情肉の鎖』などなど、なんとなくクリスタル以降の世代のボキャブラリーでは思いつかないタイトルが目白押し。内容は全部一緒。
プレミアは付けていないのでよろしくです。新刊書店じゃなかなかお目にかからないよウ。
プライベイトでは某税未納により、いよいよ「差押警告書」が来まして(いつもより封筒がゴージャスだなあと思っていました)、さてどうしよう。くわつはつはつと笑ってみる。現実逃避のため話題を変える。
なんだかんだで話題のルパン三世実写版。積極的にではないが、どれだけアレなのかちょっと観てみたい気もする。
小栗旬のルパン。これに関しては尻の毛を抜かれた国民的ヒーロー「セカンドシリーズの赤ジャケ・ルパン」をモデルとするならば、それほど的外れでもないと思う。
黒木メイサの峰不二子。これも70年代テイストで作るのであれば決して悪くない。でも「国民的オナペット」のふぅじこちゃぁんだと思うと全然違う。みんなこの辺が気に入らなくてやいのやいの言ってるのだろ?このふたつを組み合わせるのが、そもそもおかしい。
浅野忠信の銭形警部。ルパンの好敵手であるところの銭形幸一なのか、ルパンに翻弄される道化のとっつぁんなのか、どっちなんだ?というより、浅野忠信は常に浅野忠信なんである。もっと化けられる人がよかったんじゃないかと思う。
玉山鉄二の次元大介。どのシリーズでもこのキャラだけは殺し屋の風格があったと思うのだけど、ないねー鉄ちゃんでは。イメージに一番近いのはザ・バースデイを始めた頃のチバユウスケ。役者じゃないが。
綾野剛の石川五右門。・・・って誰?スチール一枚見ただけでこれ絶対違う!と思った。
それにしても漂うアパレル店員感。コスプレ映画としても痛いんじゃないか。
ルパンとしてじゃなければ面白いという意見もあるようだが、だったら「ルパン三世」の看板って何なのってことになるわけで、ルパンとして成立してなければやっぱりダメなんである。
あ。っていうかオレが、オレってダメなんじゃん?あ。思い出してしまったよウ。
先日はまたブルースタジオ@北千住。『ソナチネ』鑑賞。これも二十回以上は観ているのだが、スクリーンでは初めて。この劇場はコンクリート打ちっぱなしの内装がカッコいい。席はガラガラ。七人。
槍に刺されたナポレオンフィッシュのオープニングが強烈だが、この愛嬌のある顔の魚が串刺しにされているというイメージは、作品におけるビートたけしの運命を象徴しているのか。
たけし演じるヤクザが最初から疲労している。「ヤクザやめようかなあ。なんかもう疲れたよ。」。
だけど「仕事」なので、雀荘のマスターさらってクレーンで東京湾に沈めたりするが、もはや何の感情も無い。
「もう三分過ぎたんじゃねえか?」
組長と兄弟分である沖縄の組織が他の組と揉めているので、たけしたちに応援に行ってほしいと頼まれる。「なに、大したことじゃないんだ」。
この組長がまったく好々爺然とした普通のおっさんで、さらにひゃっこさが倍増。
たけし一行が沖縄へとぶ。大したことじゃないという話しだったがいきなり事務所爆破。
危険ということで水道の電気もないあばら家で逗留するはめに。
東京ヤクザたちはすることが無い。ロケット花火で撃ち合ったり、ウィリアム・テルごっこをしたり、落とし穴作ったり、相撲とったり、沖縄民謡踊ったり。
命の保障がないにも関わらず、「やることねえもの」とそんな遊びに興じるヤクザたち。
抜けるような青空の効果も相まって、まるで夢みたいである。海と空のブルーに対し、赤いフリスビーや爆破した車の黒煙や、たけしの白い開襟シャツとのコントラストが映える。
敵対組織の描写は一切されず、沖縄の組長の「ナントカがナントカでナントカらしいんだ」との曖昧な説明だけが綴られ、抗争は激化していく。
普通はヒットマンというと黒スーツのイケメンかサイコ野郎だったりするが、いかにも南国にいそうな釣師のおっさんという発想はやっぱりすごい。
あまりにもオフビートなのでアート映画と見られるきらいもあるが、起承転結はあるし銃撃戦もある。それを北野武監督は曖昧にしたり、一瞬のカットで表現したりするのだが、実は立派な娯楽映画。
もう大コケした93年の公開当時とは違うのだから、観る側のセンスも磨かれていると思う。
(ちなみに『DOLLS』なんてこれはアート映画だろ?との思い込みでいまだに未見)
娯楽性としては一作目に軍配が上がるけど、たけし自身は役者としては経験が浅いので、ずっと仏頂面で通している。
ソナチネやっぱりいいなと思ったのは、ビートたけしの演技が素晴らしいから。
これだけ観倒しながらも改めてグッと来た。それはビートたけしの笑顔である。
無感情で人を殺すヤクザ者だが、子供みたいな遊びに興じているときに見せる無邪気な笑顔。これは今のたけしには絶対出来ない。
いかにも強面な男たちを配した中で、彼の何気ないスタイリッシュさは光る。
たけしと最後まで行動を共にする沖縄ヤクザの勝村政信は最後まで短パンで通す普通のあんちゃんだし、たけしを慕ってくる現地の女・国舞亜矢にも過剰に色気のある演技はさせない。
一番かわいがっていた舎弟の寺島進を殺された直後、たけしが一人でフリスビー遊びをするシーンは、さりげなくも悲しい。
観終わったあとにいつも「もわっ」としたものが残る。救いのない映画だが、なぜだかその「もわっ」は、ちょっと暖かかったりする。
8月も本日でおしまいですが、今年の夏はレゲエであった。といっても別に三木道三にハマッていたわけではない。
ルーツ・ロック・レゲエである。ピーター・トッシュの『解禁せよ』のジャケットに「うわ」と思ったあたりがとっかかりで、別にこの俺様がジャメイカーン!とかトロピカーナ!とかのノリでキャッキャッしていたわけではない。
今まで手付かずのジャンルだったのだが、ジョー・ストラマーやジョン・ライドンの感覚にようやく共有できるようになったというか。
クラッシュは『ポリスとコソ泥』『プレジャー・ドロップ』などのカバーを残しているし、ライドンはレゲエフリークを公言している。ストラングラーズは最強のパンク・レゲエ『ナイスン・スリッジー』を残しているし、セルジュ・ゲンスブールもレゲエのアルバムを発表している。スリッツやスペシャルズや初期ポリスもレゲエの影響大であり、思えばいくらでも入り口はあった。
パンクとレゲエは舎弟と兄貴分みたいな関係でなんである。
さらにレゲエの中古市場がかなりお安いものだから、スティール・パルス、バーニング・スピア、カルチャー、アスワド、サントラ『ロッカーズ』『ハーダー・ゼイ・カム』、ホワイトレゲエのUB40やニューエイジ・ステッパーズなど、平均600円くらいで入手。最近すうさい堂のBGMはレゲエばっかりです。
和製レゲエの最高峰はPANTA&HALの『つれなのふりや』だろうか。
ボブ・マーリー&ウェイラーズに関しては、ほとんどの人がベストから入っていくと思うのだけど、どうもマイルドに編集されているので、ロッカーとしての彼のカッコよさがあまり伝えられていない気がするのである。
歴史的名盤とされる『LIVE!』もウェットすぎて好きじゃない。「ノー・ウーマン・ノー・クライ」で湧き上がる大合唱とか。スタジオ版での「小品」というくらいの感じがちょうどいい。
全部聴いたわけじゃないけど、オリジナルを追っていくのがいいと思う。さすがにボブ・マーリーは視点がシビアなので『キャッチ・ア・ファイイヤー』『ナッティ・ドレッド』『ラスタマン・バイブレーション』などは、とてもひゃっこい感覚でクールダウンさせてくれる。『バーニン』はトロピカル多いよね。
アイルランドのパンクバンド、スティッフ・リトル・フィンガーズには『ジョニー・ワズ』の名カバーがある。鳥肌もんである。
あとこれは自慢していいと思うぽよなのだが、ブリティッシュ・レゲエの名盤、マトゥンビのファースト『セブン・シールズ(七つの封印)』も持ってるのである。日本のみのCD化ですでに廃盤、アマゾンにも出品されていないといレアもの。ちょっと高かったです。
レゲエを超えたスピリチュアルかつポップな内容で、自分なんかが持っていていいのかしらとも思うけど、部屋を真っ暗にして聴きたいような、なんつーかすごい音楽。
実は内田裕也主演の『餌食』でガンガン流れていたのがこのバンド。裕也氏も当時、これ聴いてぶっとんだんだな。
動画サイトにも数曲アップされているので、ポピュラーに関してはこの世にどレア音源なんてほとんどなくなってしまったけど、パソコンじゃなくて自分のプレイヤーで聴きたいかどうか、というところが重要。
音楽とは手に取れるもんである。
ラスタファリズムの背景とか全然わからないが、70年代、パンクとともに世界中を瞠目させたレベル・ミュージックがレゲエ。生粋のレゲエファンとはまるで違う捉え方をしていると思いますが、何にせよ自分、パンク上がりなんで。っていうかまだ上がってないんで。
ところでやっぱり大麻は解禁しちゃダメだと思う。特に車社会とは相容れないということを、先日の脱法ハーブの事件が証明している。
Don't LEGALIZE IT.
調子に乗って五枚も貼っちった。あとで自分が見たいんである。