吉祥寺には有名ミュージシャンを招いてライブを行う銭湯があるのですが、そこはもともと若干終了時間が短かったのだけれど、最近になってさらに短縮してきた。
入ろうとしていたお客さんが「うちは11時半で終わりだから、あと15分で出てくれ」みたいなこと言われてた。
風呂なし生活者には銭湯はライフラインだっつうのになんという仕打ちか。
だいたいそこのオヤジがクズで、まともな客対応をしやがらねえ。
いつも「・・・・・・・・しゃ」って言われんのね。
おそらく「ありがとうございました」の短縮形だと思われるのだが、「しゃ」ってなに?「しゃ」って!
ここに入るときはいつも450円ぴったり投げるように払う(ジジイが店番の場合だけ)。
キャバクラ街銭湯のばあさんなんかは、いつもうなだれちゃって死ぬんじゃないかってな姿勢で番台にいるのだが、常連さんに話しかけられるとソーラー電池が作動したように元気になる。
多分、このばあさんの人生はハッピーだと思う。
好きなことをやってると金がなく、好きじゃないことをしないと金が入らないという人が世の中のかなりを占めているのに、自営のくせに仕事にプライドを持てないってのは何事か。
「やめちめぇ!(江戸前で)」と思うのだが、実際やめられると少々困るのであった。
来月あたりからすうさい堂はまたかなりの極貧状態に陥る予定なのだが、ここしか居場所がない所以、持続するには外貨を稼がねばいかんので、月曜は一応、派遣の登録をしたのでそれの説明会にいてきます(店は休業します)。
早朝からは清掃のバイトをしているぜ。でもこれは楽しいので問題なし。
あと治験ボランテイアからのメールで「サプリ食って、ソークーの調子をファックスでレポート提出して、ブツをクール宅急便で送ればデーマンゲーセン」ってのがあったので応募してみた。こうなりゃ金額しだいでクソでも食ってやるぜ。
先日は体調を崩して一日寝ていましたが、いくつになってもこの無為な時間はなかなかよいもので。
三鷹武蔵野ケーブルテレビですうさい堂が放送されたDVDが送られてきたので見てみたが、なんとも客観的に自分って気持ち悪い。無為である。
無為なのでツタヤ100円セールで借りてきた映画を観ていた。
『おっぱいバレー』。
ダメなバレー部が試合に勝てば顧問の先生がおっぱいを見せてくれる約束をしてくれたので俺たちがんばる!という内容をよくぞなかなか甘酸っぱく作品化したと思う。
ただ、主演が綾瀬はるかさんでなければ手をつけていないであろうと思われるので、そこが問題っちゃあ問題。悪くないっすよ。
といった感じでさくっと流しつつ、増村保造監督の『盲獣』(1969)。
これは原作の江戸川乱歩本人が「ひどいエログロ」と無為な発言をしていて、なかなか素敵にヒドイ小説ですが、この映画はなかなかでございます。
まず主演の緑魔子がすげえ美人。今風美人。ベストオブ魔子。
ヌードモデルとして活躍するマコを自宅のアトリエで女体パーツのオブジェをつくり続けている視覚障害者(童貞)・船越英二が誘拐、僕の「触覚芸術」のモデルになってくれ、とせがむ。もちろん監禁で。
大小さまざまな手足・パイオツ・ツーケーのパーツ別オブジェが続々と現れるシーンは、なかなか悪趣味で痛快。
ここで原作にないキャラが登場。白い割烹着のおばちゃん、つまり「盲獣」のおかんである。
「あたしゃ息子のためならなんだってするよ!」と逃亡しかけたマコを長ネギ入りのカゴを持ったままでがっつりキャッチ。おれはこのシーンで爆笑した。
滅多なことでは逃げられぬと悟ったマコは色仕掛けを開始。「あなた、女を知らないんでしょう?女って、とってもいいものなのよ~」。
それを見て嫉妬にかられたおかんはマコを逃亡させようと画策。
ところがエイジにばれてしまい、すったもんだの挙句、おかんを殺してしまう。火事場の童貞力。
怒ったエイジは「もう二度とお前をはなすもんかあ!」と暗いアトリエに幽閉し、二人でエロいことばっかりしているうちに徐々にマコの視力が衰えてくる。
「あなたに愛を感じているの!」とマコからコクられたのを契機に「触覚の世界」に溺れたふたりは、噛む、縛る、ムチる、刺すの変態三昧。
更なる刺激を求め、ラストは満を持してマコからの「手を切って!」「脚を切って!」の超過劇リクエストに「出刃包丁とトンカチ」で応えるエイジ!マコの手足が切断されるたび、石膏の手足もボトリと落ちる。血は見せない。今の監督だともっとストレートな表現をするのだろうが。
わかばマークがいきなり改造車で高速に出てはいけません、という教訓も少しある。いや、ない。
といった感じで完全にネタバレなのだが、ちゃらけた文章に騙されたと思って鑑賞してみれば、猟奇ロマンとか、昭和モダニズムとか、アングラ演劇空間とか、おかんと割烹着とか、いろいろ堪能できると思います。
しかし船越英二って、自分の世代的には『熱中時代』の校長先生役が思い浮かぶのだが、レベルの高い変態役者でもあったわけで。それにしても緑魔子さんが美人。目で殺された。
先日、中島らもさんの動画をアップしたのですが、この『いいんだぜ』って曲、某イケメン俳優さんもカバーしている。
もちろん放送禁止用語多発のオリジナルじゃ無理なんで、かなり普通にセーブした曲に仕立ててあり、らもファンからは当然反発の声も多いかと思うのだが、まあでも、「これをメジャーで取り上げるのだ」という意気込みは買いたいと思うわけです。
というか、さわやか好青年で売っている「職業人」のでっかい足枷や不自由さをひしひしと感じた次第。
本来ならこの人だって「めくら」「かたわ」「梅毒」などの言葉に込めたメッセージを歌いたいはずなんだが、ファン層が・・・・ねえ・・・・。
さぞおモテになっている人生だとは思うのだが、「表現者」としてはなかなか、つまんない道を歩んでいる。
いわゆる容姿に恵まれてない人の方が、逆にそれを利用し武器にして、唯一の存在感を得たりする。俳優の温水洋一氏なんかその典型で、フェロモン感じてる女性も少なからずいるんじゃないかと。
(普通の人が普通に演奏して普通に終わるライブなんかを見ると、ものすごく時間を損した気になります)
ポーグスなんかも一番最初に思い浮かぶのがシェインの強烈な歯並びで、すっかりバンドのアイコンだったりするのだが、あれはなんなんだ、虫歯なのか?パンクス時代にやんちゃして折られたのか?
(あと、『スペシャルズ』のクールなキーボード弾き、笑うと前歯がほとんど無くてクールだわ)
同じようなメチャクチャな歯並びを持つ者としては、これをなんとか生かしたい。ボーカルでもやるか。
コンプレックスってのは調味料としては大事かもですね。調合は難しかったりするんだが。
出来ない者は出来る範囲のことでがんばってやるしかないんです。
「いやー僕は器用貧乏で」と笑う人の尊大な態度を自分は見逃さない。
人間として(男としてでもいいのだけど)一番カッコいい態度は、「腰が低い」ってことです。
あと男がたまに自慢げに使う、「だから俺は言ってやったんだよ!」て言葉、大嫌い。
大抵、ろくなこと言ってねぇさ。
クリスマスもお近づきになり(ようござんすな!)、自分的にクリスマスソングと言えば「ニューヨークの夢」なんだけど、最近また、その曲が収録されたザ・ポーグスの名盤『堕ちた天使/If I Should Fall From Grace With God』をよく聴いている。
バンジョー・マンドリン・ホイッスル・アコーディオンなどによる疾走するアイリッシュ・トラッドバンドをバックに、声量はない・呂律まわってない・ついでに前歯もない・べろべろの酒焼けしゃがれ声のシェイン・マガウアンのボーカルが乗る。
この人は酒とクスリで一時期廃人状態で、バンドも追放されてしまったのだけど、最近復活して来年にはザ・ポーグスとして、来日公演をする。
しかし「前歯欠け」というのはストラマーにしろイギーにしろ町田町蔵にしろ、パンクスの通る「正道」ではあるのだが、最初からずーっと「無い」人も珍しい。
50を過ぎたシェインはやや太って「ダメな若造」から「ダメなオヤジ」にスライドし、なかなか結構な風体。
シェイン脱退後のポーグスは普通のケルトバンドみたいでであまりパッとしなかったようだし、シェインはシェインで自身を生かせるのはポーグスしかないだろうしということで、ここ数年の仲直りはなかなか喜ばしいこと。
いわゆるボーカルとしては「悪いところしかない」シェインの歌声だが、彼の存在があればこそ、ザ・ポーグスは「トラッド・パンク・バンド」として成立していた。とにかくパンク好きがそのまま流れてファンになっている。
実際この、胸に迫るような声は何なんだろう?と思う。だらしなくひしゃげてるんだけど、とんでもなく優しい。
ボーカルトレーニングをいくら積んでもこんな声は出ない。
バンドメンバー内で一番ブサイクな彼が、なぜか一番の伊達男に見える。
「堕ちた天使」とはよく付けたもんで、こんな人が「悪魔」のわけがない。
ポーグスから影響を受けた連中は世界中にいるが、特に日本のこのタイプのバンドはシェインのボーカルスタイルを取り入れたしゃがれ声が多いゆえ、なんていうか、ああ真面目に勉強したんだなあとか思ってしまう。
人生転げて、それが積み重なってああなったあの声の響きとは、残念ながら全然違う。
ただひとりだけ、同じ声でうたう人がいた。故・中島らも氏である。
http://www.youtube.com/watch?v=Hk1CiwrKgt8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=dJX26ocWruo&feature=related
『ピンク・フロイド ザ・ウォール』鑑賞(@バウスシアター爆音レイトショー)。
10年ぶりくらいに観たが、緻密な狂気というか、ゴージャスな悪夢を堪能して参りました。
ピンク・フロイドってのは高校時代の友人がはまっていたおかげで、パンクと平行して聴いていた唯一のプログレだった。
プログレってのはコズミックとかファンタジー方面に行きがちなので苦手なのだが、このバンドは人間のダークサイドに視点を当てた作品が多かったと思う。
特にそれが顕著だったのが「ザ・ウォール」。人間はそれぞれ自分の周りに壁を築いているのだから分かり合えるわけがないという主張のアルバムで、これはその映像版。
ロックスターが絶望の淵に見る狂気を映像化、みたいな言い方がもっともらしいが、つげ義春の「ねじ式」を解説してもしょうがないのと一緒で、この禍々しさにのるかそるか?ってこと。
挿入されるグロテスクなアニメが秀逸で、特に戦闘機のような巨大な鳥が飛翔し、ユニオンジャックがバラバラになって真っ赤な十字架が出現するシーンには体がぞわぞわした。http://www.youtube.com/watch?v=93YN7xjCjBM&feature=related
後半はモロにナチスの党大会やクリスタルナハトがモチーフ。表現としてギリギリまで行ってやろうという向きにとって、ナチってのは格好の素材なのだろう。http://www.youtube.com/watch?v=YAlVEbjusLk&feature=related
この辺になると主演のボブ・ゲルドフがドはまり(嶋田久作にクリソツ)。ちなみに後の「ライブ・エイド」の主催者で、博愛の人として有名になる方である。
全編に流れるフロイドの重苦しいナンバーが心地よい。たまには毒風呂にぬくぬくと浸かってみるのもオツなもんでやんす。
しかしピンク・フロイドって本国ではモンスターバンドだったが、この厭世的な世界観を持つ曲たちが爆発的に受け入れられたってのは不思議。
が、熱狂するオーディエンス・大ヒットを記録したアルバムセールスに対し、ロジャー・ウォーターズみたいなシニカルな人間は「け。俺の悪意と絶望を喜んでやがる」と、ますます厭世的になり、結局バンドなんて意味がない、解体!となったことは想像に難くない。
ロック・ミュージカルの傑作として名高い「ロッキー・ホラー・ショー」も「ファントム・オブ・パラダイス」も、どうにも手ぬるい。コスチュームばかり過激で大したことないわ、と感じてしまった自分にとって「ザ・ウォール」は、最も残酷なロック映画として殿堂入りしたのであった。