この麿赤児チックなジサマは誰かと言うと、パブロックの名バンド『ドクター・フィールグッド』の初代ギタリスト、ウィルコ・ジョンソンであります。
ガイドブック的には彼が在籍した時代のアルバム『ダウン・バイ・ザ・ジェティー』『不正療法』『殺人病棟』が必ず、プレ・パンクの名盤として紹介されている。
ピックを使わない独特の「素手」によるカッティング、タテとヨコにしか動けないアクション、ギターをマシンガンのように構え威嚇射撃をするポーズなど、このバンドのパンキッシュな要素を受け持っていたのは確実に彼であり、ウィルコが抜けて以降、バンドはオーソドックスなR&Bバンドになり、ボーカルのリー・ブリローが死去したが、名前だけ残して実はまだ続いているようだ。すでにオリジナルメンバーがいないモーニング娘。に立ち位置が似ている。
なんだかんだいってもブリロー&ウィルコ時代が最高なんであって、これはロックンロールにおける他流試合みたいなもの。4枚目製作中にしてこの緊張関係も破綻。
ミッシェルがリスペクトを表明して以来、中古コーナーで彼らの在庫CDを見かけることが少なくなった。
そのウィルコ氏は現在、末期の膵臓ガン。
静養せずに日本、フランス、イギリスとツアーするのだという。
ツアー先の事故やおいたで亡くなるミュージシャンは山ほどいるが、自分の寿命を逆算しながらの音楽行脚ってのは今まで聞いたことがない。
地元の公演を終えたあたりでサクッといけたらいいね、ということなのだろうか。
っつってもおんなじようなロックンロール&ブルースを65歳まで現役で続けられたのだから、ロッカーとしてはかなり息が長い人生と考えていいと思う。
ブリローとウィルコは最後まで仲直りすることがなかったらしいが、リー・ブリローもやはりガンで亡くなる直前までステージに立ち続けた人なので、「あの気に入らねー奴には負けられねー!」っていうライバル心がどこかにあるのかも知れない。
先輩の『パイレーツ』のミック・グリーンがいなくなって(このバンドは音はOKなんだが、ルックスがかなりキツめなのでその辺がご勘弁)、後輩のアベフトシがいなくなってウィルコがいなくなるともう「この系譜」のギタリストが消滅する、と思う。
パンクが安物ナイフで粋がるガキだとしたら、彼らのギターは日本刀の居合い抜き。
髪があったころのウィルコ・ジョンソンは殺し屋然としていたファーストシリーズの初代・石川五ェ門のイメージである。と自分だけが思っている。