ありがちなネタのような気もするんですが、現物を入手した感動を皆様にお伝えしたいと思いまして。
ガールズのファーストアルバム『野良猫』であります。1977年ドロップ!
海外ではパンク・ムーブメントが吹き荒れていたこの年。ちょっと前には下着姿で歌うランナウェイズってバンドいたよな?あれってパンクじゃねーの?そしたら同じよーなカッコさせて、ねーちゃんだけでバンド組ませたら売れんじゃねーの?といったキレ者(?)のプレゼンにより、立ち上がったプロジェクトであることは明らか。
ボーカルの子、ビッチである。お母さんが見たら泣きそうな格好である。
シングル盤でも発売された代表曲『野良猫』の歌詞。
「チョットお待ちよその目はなんだい/空っぽヘッドで気取るんじゃないよ/あたしはいつでも欲求不満」
「もっとお飲みよあたしのおごりさ/ちょっと映画で裸になったのさ/別段どうってことないねぇ」
お父さんに頭をひっぱたかれそうな歌である。
こうしたズベ公的不良さが当時のパンクの解釈だったらしく「パンキーガール/パンキーラブ/ロックで鼻歌/あははん」と続く。
勘違い全開のオリジナルで固めたアナログでいうところのA面。裏ピンクレディーといった風情で、何周かして我々の耳に届く頃には「カッコいいもの」として熟成している。
セカンドシングル『パンキー・ハイスクール・ラブ』もおんなじようなノリで素晴らしい。
B面はカバー大会。ブロンディにストーンズにキッス、しっかりご本家の「チェリー・ボム」にチャック・ベリーと、「なんとなく不良っぽい音楽」をやらせてみたって感じで、手堅いんだけど面白みにはいまいち欠ける。
メンバーはジル・イリア・リタ・レナ・サディで、五人の頭文字を並べると「GIRLS」。
戦隊ヒーローみたいでいいですね。
イリアは後に「ジューシー・フルーツ」のボーカルとして大ブレイク。
結局のところ、製作者の誰一人として「PUNK」なるものを理解していない時代の産物なのだけど、こうした先輩たちの犠牲のおかげで、今のガールズバンドの盛況がある。
とはいえ、現在の「すなおギャルバン」にはない毒っ気が、この作られたバンドにはあると思う。
あんなのは歌謡曲だから、と馬鹿にするのはあまりよろしくない。むしろ、歌謡曲とロックとパンクの区別と解釈がごっちゃになって、あさっての方向にむかっているこんな作品のほうが面白い。
歌謡曲こそが他の国にはない和のレシピであって、ミクスチャーという言葉本来の意味ならば、日本が世界一早い。
だいたいロックバンドがあんまり伸び伸びすんな!ロックはもっとギクシャクするべきである。
フリクションには『軋轢』というタイトルの名盤があるが、まさにそれこそがROCK。