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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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「死霊のはらわた」新旧対決



聞くところによると、最近は「ホラー映画」という言葉が嫌われているらしい。それを使うと作品がジャンル化してしまって、特定の層しか呼べないから、ということらしい。
どうりで「ソリッド・シチュエーション・スリラー」みたいな小手先キャッチが舞っている訳だ。しかしながらジャンル映画がジャンル化して何が悪いのか。「血まみれホラー」じゃいかんのか。ちょっとシャレオツ風に濁してみたところで、内容はおんなじなんだから。観客も一緒いっしょ。
考えてみれば血がブーブー噴水みたいに飛ぶから「スプラッター映画」とはなかなか的を得た表記で、その先便をつけたのが『死霊のはらわた』(81)なのだった。

初見は公開から少し遅れた名画座で、感想としては「ホラーもなかなかすごいことになってきましたなあ」というもの。グチャグチャなんだけど、それがテンポよく続くからえらいこと景気がいい。打ち上げ花火みたいだと思った。
若き日のサム・ライミが「この作品で映画界に殴り込みをかける」ようない勢いで作っているので、その鼻息がもろに画面に出ている。実際「血が出るような」気迫で、資金も見通しもないまま撮影を続けていたらしい。
主演のブルース・キャンベルというちょっと面白い顔の俳優が困りつつも必死で戦っている姿は、だんだん笑いを誘う。コメディ的な要素も確かにあるのだ。
ローアングルで走り込むカメラワークなど、ゴア描写以外にもカッコいいシーンが実はたくさんある。やっぱり持ち前の才能なんである。

これをリメイクするという果敢な挑戦をしたのが2013年の同タイトル。『死霊のはらわた2』でサム・ライミ自身がコメディに仕上げてしまったので、もはやそれもできない。じゃあどうするかというと、正攻法の「血まみれホラー」として作ることを選んだ。
なのだが、オリジナルのファンからの評価はいまひとつらしく、恐らく「ブラックユーモアのセンスが抜け落ちてしまった」みたいなことなのだろうけど、それを言っちゃあおしまいというものです。
ではどうしたかというと、「痛み」を観客に共有させることを選んだ。
オリジナルは「死霊に憑依された仲間」を殺していくという内容なので、いくらグチャグチャにされてもまあ、オバケだからなあという前提があるため、無責任に「やれーやれー」と盛り上がれる(あくまでも今の視点からすればですが)。
初見の人が鑑賞するとしたら、チープさも込みで笑っちゃうところがあるオリジナル版よりも恐怖を感じるのは、リメイク版ではないかと思う。ちなみに「貞子」もちょっと入ってます。
主人公の妹がジャンキーであり、クスリへの依存をやめさせるために山小屋に篭るという設定は今日的であり、前述の「痛み」のシーン(書かないよ)は『超いってぇ!!!!』を体感させてくれる。
なんだか大量生産されてる「似非ドキュメンタリーホラー(ポイント・オブ・ビュー)」とは一線を画す、ガチのスプラッター映画であり、それだけでも十分に評価できる。
そもそもそんなにリアル感って大事か?作り物に対してわーキャー楽しむのがホラーの醍醐味ではないのか?
エンドロールの最後に登場して「GROOVY」とひとことつぶやく人物こそシリーズの顔、ブルース・キャンベルである。
監督のフェデ・アルバレスは昨年、「盲目の筋肉キチガイじじいがヤング強盗団をぶっ殺す」という怪作、『ドント・ブリーズ』を大ヒットさせた。

最後におこがましいことを書くと、近頃やたらと世界で頻発している自爆テロ、それを行っている連中は「自分の命は他人よりもイケてる」と思っているのではないか。
「聖戦」や「正義」や「忠義」に命を懸ける自分の前には、他人の命なんかどうでもいい、あるいはなくなっても仕方がないと思っている。
ましてや人を無差別に殺すことに「正義」なんてない。しかもそれは特殊メイクではないのである。
「命は平等に価値がない」「ゴミと一緒で順番なんかない」ということを、娯楽として提供してくれるおぞましいジャンルを楽しんでいる者からすれば、「そんなバカバカしいことやめなよ(こいつらがドヤ顔で行うテロなんて最悪!)」と、本当に思う。
死ぬんならひとりでやれ。


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