角川シネマ新宿にて『ノック・ノック』鑑賞。
最近は完全に映画ブログと化しているが、再三ですが作業日誌とか、お客様とのふれあいとか(ないし)、店主の日常とか(面白いことなんかないですし)書いてもしょうがないんで。それよりも2000年前後からあまり封切り作品を観なくなり、ああもったいなかったなと、今まで何やってたんだと反省。
なんかもう、ヤバいのがゴロゴロしていたのに。実はそれほど注目してなかったホラー系には特に「うーむ!」と思うものがあり、それに気付かせてくれたのが『ムカデ人間』シリーズだったりする。
異端児的な作品の役割は案外、こういうことかもしれない。例えば『ピンク・フラミンゴ』が存在しない映画史ってのも、ちょっと寂しい気がしませんか。
イーライ・ロスはやっぱりすごい。過激さとエンタメのバランスが絶妙な、現代最高のホラー作家である。
『ノック・ノック』はそれまでのような直接的残酷シーンが売りではないけれど、主演のキアヌ・リーヴスがたまたま招き入れた女子二人によって、人格をメッチャクチャにぶっ壊されるという作品。精神面を殺しにかかってくるホラー、といいたいところだが、やはり例によってブラックなコメディ。
キアヌは建築家で元DJ、嫁さん美人の芸術家、かわいい盛りの子供ふたりというパーフェクトに幸せなパパ。
家族が旅行中で自分ひとりが自宅で仕事というシチュエーションの中、雨でずぶ濡れのエロい女子ふたりを親切心で招き入れるが、予想通り誘惑されて3P。
翌日から女子チームの態度が豹変。実にワイルドに暴れ回り、一旦は出て行かせるものの住所を覚えられていたのでリターンされ、さあ大変。
キアヌほどのスターがなぜこのような悪趣味映画に出演したのか?と思ったのだが、本人は結構シャレがわかる人だったようで。
「エロティック・スリラー」とかで括られれば聞こえはいいけど、後半ずーっと縛られたり泣き喚いたり生き埋めにされたり。本当にいいとこがひとつもない。
が、本人はかなり楽しんで演じていたらしい様子。
この作品、キアヌ側の目線だとおぞましいのだが(腹立たしいという人もいるかも)、自分は完全に「もっとやれ。いひひひひ」と女子チームに感情移入していました。メンタルが女子なんで。
金髪美人と黒髪美人が登場するのだけど、黒髪さんは『グリーン・インフェルノ』で主演を果たした、イーライ・ロスの嫁さん。今回も大変な役を宛がわれておられるが、最強のおもろい夫婦(タッグ)ではなかろうか。伊丹十三と宮本信子を連想させる。
そして本作はSNSの恐怖も描いている。劇中の「いいね!」の使い方にはいまだに顔がほころんでしまいます(劇場では声を殺して爆笑)。
なんにしても、完璧なイケメンパパが闖入者の女子によって人格も家庭も破壊されるというのストーリーは、夢があっていいですね。
鑑賞後、とてもハッピーな気分で帰路に着いたのです。
完璧な生活などは存在せず、薄い氷の上で成り立っているようなものだということを強烈に訴えてくる、あまりにも「正しい」作品。