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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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ざわざわマジカルガール



ざわ・・・ざわ・・・とは『カイジ』でおなじみの擬音であるのだけど、この不穏な感じがずっと続くのが2014年のスペイン映画『マジカル・ガール』。
白血病の12歳の少女・アリシアは日本のアニメ『魔法少女ユキコ』の大ファン。娘が余命わずかということを知っている父親のルイスは、ネットでこのアニメのコスプレドレス(一点もの)を見つけるが、スペイン価格で7千ユーロ(約90万)というボッタクリお値段。
ルイスは元教師だが失業中であり(スペインは若者の失業率も50パーセントらしい)、そんなものを買ってあげられるお金はない。が、偶然に人妻のバルバラ(びっ美人!)と不義をしてしまい、このネタを理由に彼女を恐喝して90万をせしめ、娘にドレスをプレゼントする。クズである。
ところがアリシアは浮かぬ顔。なぜなら「ステッキ」が付いていないから。ルイスはさらにネットで確認。
「ステッキは別売」。詐欺である。
しょうがないんでルイスはさらにバルバラを恐喝。ステッキの価格は2万(と、劇中で言っていた。スペインでの通貨単位だと、どのくらいなのかはわかりません)。
本作はいろんな人がいろんな見解で語っているけど、追加の「2万」のおかげで登場人物たちのギリギリ保っていた諸々がぶち切れ、彼らにざばざばと不幸が降りかかるのであった、というのが自分の解釈。
いま思ったのだが、結局諸悪の根源は、詐欺まがいの商法でドレスを販売した日本の企業ってことか。
悪徳キャラクター商売に踊らされた人々が人生を台無しにされる話。で、いいのかな?

というわけで「難病を抱えるアニメ好き少女」という設定はとっかかりでしかなくて、淡々と話はこんがらがりまくり、かなりとんでもないところに着地する。
バルバラが金を得るためにしたことは売春なのだけれど、ただの「お仕事」ではないらしい。
車椅子の不気味な富豪親父が相手なのだが、実際に何をされたのかは映さない。
半身不随の男に法外な取引。行為をやめさせるためのキーワードを入れた封筒を渡され、トカゲの絵が掲げられた部屋に入っていく。
刑務所を出たばかりの初老の男・ダミアン(マーティン・スコセッシ似)も重要なキャラクター。彼も以前、バルバラとなにか関係があったらしい。
このように物語のパーツはぼかされ、バラバラに配置され、結果的にひとつになる。
というわけでこれ以上は書けないのであった。
ひとつ付け足すと、ダミアンは出所後、カウンセラーから貰った膨大なピースのジグソーパズルを完成させる。いや、正確には最後の1ピースだけが行方不明なのだが。
そして彼は「あること」を決意すると、99・9パーセント完成していたパズルを自ら剥がしていく。
作品を観ればわかるが、とても暗喩に満ちたシーンだ。

映画のラストに流れる日本語の曲がどこかで聴いたことがあると思っていたら、美輪明宏『黒蜥蜴の唄』のカバーだった。深作欣二監督が妖しさと、ちょっとの爆笑(なんだそりゃ)を盛り込んで作り上げた名作『黒蜥蜴』で聴けますよ!
そういえばバルバラは真ん中分けの黒髪や顔つきなど、黒蜥蜴を演じているときの美輪さんに似ているような気がする。
現在は演歌歌手としていい感じの熟女になっている長山洋子のデビュー曲も、「魔法少女ユキコ」のタイトル・ソングとして使用されている。
そのキラッキラのアイドル・ポップスがとても不穏で寒々しく響く。ざわ。ざわ。
日本通のカルロス・ベルムト監督が贈る、禍々しいラブレター。


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