わ。トランプ当選。それまでトンチキな不動産屋みたいなイメージだったのですが、一夜明ければ米大統領。
優勢はマジだったんか、とちょっと驚く。なんでもレッドネックとかの最貧層からの支持をかき集めたらしい。
「はぁオラたちの王様だぁ~」ということらしい(らしい、らしいってすいません。実はあまり知らない)。
すでに「お前が大統領じゃヤだ」と、デモも起こっているという。まあ日本でもおんなじよーなのがいるからなあ。アベちゃんも少々やりにくかろうと思うとそこだけは面白い。
写真から「品格」とか「人格」がまったく見えてこないってのがすごい。柄にもなく「ゴッド・ブレス・アメリカ」とか思ってしまったわけだが、そういえばそんなタイトルの映画みたなー、よく考えたらひどい内容のばっかりみてるなー、とは思うものの、そこに何か教訓めいたものはあるはずなんである。ひどい話コレクション、いってみよーという備忘録。
『ゴッド・ブレス・アメリカ』(2012)。何から何まで類型的なのだが、狂っていて好き。
セクハラ容疑で会社をクビになり、脳にも腫瘍が見つかったおっさん。家族との復縁もままならない(ママにはイケメン彼氏が出来て娘は超ワガママに育ちました)。
絶望して自殺しようとするがテレビをつけると低俗なバカばっかり。ん?自分が死ぬよりこいつらぶっ殺したほうがよくね?と、まずタレント気取りのセレブ一家を皆殺し。
それを見ていた「世の中ムカつく!あたしも人を殺したい!」と思っている女子高生(アリス・クーパーのファン)に懐かれ、二人の殺人行脚が始まるという、ほぼファンタジーのようなお話。
テレビでバカにされている知的障害者を笑う奴らに天誅を下そうと、銃を持ってスタジオに乱入するが、その障害者もスターのつもりになっているのを見て悲しくなり、彼も込み込みで殺戮を開始。
おっさんは加勢に来た女子高生もろとも射殺されてしまうが、最後に来て「人生やり切った」感じで終わるのが大変よい。ネタバレもしてしまったことだし、不謹慎ながらも書いてしまうと「終わりよければすべて良し」である。
『ファーゴ』(96)。コーエン兄弟の作品。妻を人質に狂言誘拐を企んだ男が、あまりにも仕事が雑なチンピラたちと組んだため、話がどんどんヒドい方向に転がっていく。チンケな悪党をやらせるとスティーブ・ブシェミはその風貌が生きて光り輝く。素敵ブシェミ。ミステリ仕立てなので詳細はカット。
教訓としては「仕事する相手は選んだほうがいい」ということ。
『ネスト』(2014)。フランス・スペイン合作。姉と妹が二人で暮らしている。妹はごく普通に明るく育ち彼氏もいるが、姉はドアの外に出ると嘔吐してしまうくらいの引きこもり。
ある日、上に住むイケメンの住人が階段から転倒して怪我を負い、たまたま居合わせた姉に救援を頼む。
引きこもりだったおねーさん、「この人は天からの授かりものだわ!」と、イケメンを部屋で介護し、そのまま監禁することに決定。
その後、妹、イケメン、イケメンの婚約者などすべてに最悪なことが起こる。特に妹に降りかかる最悪っぷりはヒドすぎるので笑うしかないのだった。
この作品は現在引きこもりの人がショック療法として鑑賞すると良いかも知れない。
「それやってても、いいことはひとつもないよ」ということ。
『エスター』(2009)。子供を流産させてしまった夫婦が、代わりにとロシアで育った9才の少女・エスターを養子にするが、その子はトンデモマジキチだった!
レンタルでDVDを手に取っていたら横のカップルが「エスターって(ネタバレ)なんだよねー」とくっちゃべっておられ、自分はマンガのようにズッ!となってしまったんだが、なるべくミステリ棚で会話する際には気を使って頂きたい。
しかしこの作品、アウトラインが楳図かずおの『洗礼』にそっくり。母親や兄妹(妹は聾唖)は「あの子はおかしい」と早々に気付くが、父親だけは「そんなことない!エスターはいい子だ!」と、のんきな父さんなので、物語りはどんどん悲惨な方向へ。後半、父親に対して色じかけで迫るエスター。こんなシーンも『洗礼』にありました。
そもそも「流産したから代わりの子がほしい」という考えが実は鬼畜なのだ。チャージじゃないっつーの。
結果、「鬼が来た」というわけ。エスター役の女子が壮絶で、最もゾクリとした一本。
『アフター・ショック』(2012)。イーライ・ロスの制作・脚本・主演作。
彼の作品はホステル・シリーズなどもそうだが、「絵葉書映画」の側面もある。前半ははしゃぐ旅行者たちと共に、その土地の風景を実に美しく見せる。
登場人物はやや羽目を外しているが基本的にいい奴ばかり。だが、一転して後半、彼らは一人残らずヒドい目に合うのである。
この作品でいえばチリの大震災及び、ドサクサで「刑務所から凶悪犯罪者たちが脱走する」という二次災害。
普通の奴、いい奴、美人やイケメンも同じように、残酷な運命が待っている。「どんな人でも平等に恐ろしいことは起こる、かも知れないよ」というのがロスが作る恐怖の基本。
デビュー作『キャビン・フィーバー』(2002)も、山小屋キャンプを楽しもうとした若者たちの行く先が伝染病に侵された町であった!と。
伝染病というと、感染者は凶暴になって人を襲ったりするのかなと思うが、この作品では感染すると体がどんどん腐敗するのみなので、彼らは友達や恋人を見切って「えんがちょきった」する話でした。
『ハードキャンディ』(2006)。『スーパー!』の狂ったヒロイン・ボルティを演じたエレン・ペイジが主演ということで、鑑賞したわけです。出会い系サイトで繋がったカメラマンのジェフ(パトリック・ウィルソン)と「14才のヘイリー」(エレン・ペイジ)。
最初はダンディだったジェフが、部屋に招き入れた途端に豹変していくヘイリーに詰問されて、本性が暴かれていく。どうやら彼はロリコンらしい。
ジェフはヘイリーの友達に、なにかとんでもないことをしていた(らしい)。この辺、作中ではハッキリと描かれないのだが、ヘイリーはその敵討ちをするため、出会い系で彼を「ひっかけた」。
ジェフを拘束したヘイリーは、見よう見まね聞きかじりでタマを抜く「去勢手術」を施行してしまうのである。
この辺になるとカッコいいおじ様だったジェフが泣き叫んで懇願し、普通の情けない親父と化す。
非常に面白い。ってあれ、また女の子の味方してるな。
ヘイリーがジェフを追い詰める会話で「私がマイナーなバンドの話をすると、あなたは必ずチャットの間が空く。その返事はアマゾン・ドットコムのコメントと同じだった」というのがある。
痛快だが、ネットやウィキペディアなどに頼り勝ちだと、ついやってしまいそうなリアル感。
「自分の頭で考える」というのは大事だ。そうじゃないと、陰でものすごくバカにされてるのかもしれないよ。
ということで結局、こうした作品の楽しみ方は「対岸の火事って面白いじゃん」ってことになってしまうのだが。
「あんた、暗くてグロくて後味悪くてくっだらない映画より、アイドルやかわい子ちゃんを見てるほうがよっぽど楽しいと思わないか?」とか言われそうだが、割りと自分はえーっと、暗くてグロくて後味悪くてくっだらない映画を見てるほうが楽しいです。
アイドルやかわい子ちゃんは「対岸の火事ですらない」からです。