かの「巻き髪おじさん」が大統領に当選して以来、KKKが祝賀パレードを行ったり、反トランプのデモ隊が銃撃されたり、ゲイの人が襲撃されたりで、最悪なスパイラルが始まっている。
しかしあの「盛り髪(セットが大変だろうなあ)」は西原理恵子のマンガキャラみたい。
彼氏の高須先生はトランプ派なので(嫌がらせも含め)、最強の風刺漫画家でおられるサイバラさんにメタクソに描いて頂きたいものである。
風刺といえば、それを使って全力で国と戦ったラリー・フリントという人物がいる。
職業はエロ雑誌出版社の代表。彼の人生を追った伝記映画が『ラリー・フリント』(96)。
監督は『カッコーの巣の上で』『アマデウス』が有名なミロス・フォアマン。
ラリー(ウディ・ハレルソン)はもともとストリップ劇場を経営していたが、店のPR誌を作ろうと「プレイボーイ」をめくっているうちに、ソフトフォーカスのグラビアやエロと関係のない記事の羅列に腹が立ってくる。
「読者をなめんな!こんなもんで抜けるか!」と、大股開きがお満載の「ハスラー」を立ち上げ、これを大ヒットさせる。
当然社会からの風当たりも強く(特にキリスト教)、逮捕もされてしまうのだが、ラリーはめげないのであった。
この映画を観た人が必ず絶賛する名場面。
ラリーは釈放パーティーの壇上で、スライドを大写しにする。
まずヌード写真を見せ「これは、猥褻かもしれない」。次に戦争や強制収容所の写真を見せ「じゃあこれはどうだ?」
「神は男女を造り、おっぱいやヴァギナを造った。それを写真に撮ったり、戦争の写真を掲載したら犯罪だ。でも人々を戦地に送って殺している戦争はどうなんだ?どっちが忌まわしい?」
いろいろ中間もあるんじゃないの?という意見は言いっこなし。彼はきっと省略美学の人なのだ。
ある日、ラリーは銃撃されて下半身不随になってしまう。
彼にはストリップ時代に見初めた妻・アルシアがいた。演じるはコートニー・ラブ(カート・コバーンの素敵な奥さんとして有名)。この人は元ストリッパーでリアル・ジャンキーなので、演技経験はゼロなのに生々しくカッコいいのだった。
ラリーは負傷した痛みを和らげるために薬物依存になってしまい、アルシアも旦那につきあう形でヤク中一直線。やがて彼は手術を受け薬を抜くことが出来た(が、アルシアはそのまんま)。
そしてラリーは覚醒する。他人にまかせきりだった会社へ車椅子で赴き、受付嬢に向かって「変態が来たと伝えろ」。
ヘロヘロのアルシアも同行させ、「お前ら、女房とちゃんと、握手しろ」。
どこまでが映画的な演出かわからないけれど、半身不随になってからのラリーのメチャクチャなアグレッシブさには惚れ惚れする。
法廷にヘルメット着用で出向き(当たり前だが「それ取んなさい」と怒られる)、下半身はオムツ姿。しかも、そのオムツは星条旗。
「プラダを着た悪魔」というのがあったが、こっちは「オムツをつけた悪魔」である。
罰金を払えと言われれば、ゴミ袋を持ったバカっぽいねーちゃんを呼び寄せ、その中に詰まっている膨大な紙幣をまるでゴミのように法廷に撒き散らす。
金持ちの最高にカッコいい金の使いかたを見た気がする。
やがてラリーとハスラーは、最大の敵対者であるキリスト教福音派の大物・ファルエルを攻撃する(裁判所でラリーはファルエルを「ファックエル!」と呼んで強制退出)。
ファルエルが「私は母親とセックスしました」と告白するパロディ広告を誌面に掲載したのである。
もちろん告訴。両者の対決は「聖なる伝道師vs下劣なポルノ商人」といった様相を帯びてくる。
ラリー側には顧問弁護士(エドワード・ノートン)がいたが、ラリーの無軌道ぶりに呆れ果て、一度は袂を分かつ。が、説得されて現われた彼は、この裁判で最高のスピーチをする。
裁判官が「人格者であるファルエル氏を貶めバカにすることが何か公共の利益になるのですか?」と質問。弁護士はちょっと躊躇しながらも答える。「そうです」。
ここからが名場面。書いてしまうのは無粋というもの。DVDでご覧下さい。
この作品を観ても何も感じないケツ穴野郎は、母ちゃんとやったあと、ガラスの破片入りピザを食ってくたばれ。ファックオフ!
フリントとトランプ、忌まわしいのはどっちだ?