吐き気がするだろ。みんな嫌いだろう。まじめにかんがえた。僕、ホラー映画が好きだ。
と、ブルーハーツ的にまとめてみましたが、そんな感じでわたしのモニター画面は日々、血の飛沫を映し出しております。
御託はとりあえずもういい。三本のレビューを書くのである。「イーライ・ロスは最高」ってことを。
デビュー作の『キャビン・フィーバー』は未見だが、制作陣にタランティーノが名を連ねる『ホステル』(2006)と『ホステル2』(2007)。これが「拷問ホラー」というはっちゃけた内容。
「1」はアメリカ人二人とアイスランド人がハッパをキメたりしつつ、スロバキア旅行を満喫。
ホステルで知り合った東欧美人とエロいことをしたりしているうちに、仲間が失踪していく。
彼らは「エリート・ハンティング・クラブ」なる、会員制の秘密クラブに連れ込まれていたのであった。
それは世界中の金持ちたちが入会していて、銭を払えば誘拐された犠牲者を拷問して殺すことを「楽しめる」究極の娯楽施設。各種グッズや警備、アフターケアも整えてあります。
実はこのホステルが会員に提供する人材を送るための窓口で、美人さんはここでスケベ君たちをひっかける役目の、いわばキャッチ。
三人目のアメリカ人のみが命からがら組織から脱出し、ついでに知り合った日本人女性(女優の国籍は絶対違うけど)も救出。ただしひどい拷問でものすごい「ロンパリ」にされてる。
この辺は小気味のいい展開で、冒頭に出てくるスロバキアのクソガキどもをある手段を使って、手なずけるシーンは最高。「サラダハンド」とも対決するよ!
三池崇史がカメオ出演。兄貴カッコいい。
「2」は生き残った青年がどうなったか?というエピソードで掴みはオッケー、のあとに本編。
主人公のしっかり者女子&ビッチ&不思議ちゃんと、キャッチ役の美人がやはりスロバキアに向かい、行き着く先はお約束の「エリハン」。
本作は女子たちの行動と共にエリハンの客側、つまり殺すほうの男たちを描いているのが斬新なところ。
彼らの元に「新着情報」のメールが届く。新しい出物があります。いかがですか?
連中は鬼畜である以外は成功者の社会人なので、仕事の合間や家族との団欒の間にメールを打って、オークションに精を出す。
実はこの「普通の顔してなにやってんだ」というシーンが、拷問とは別の意味でちょっと怖い。
主人公を競り落としたのはエリハン・初デビューのおっさん。ダチと一緒に入会してうれしいたのしい。
会員になるには誓約があり、ひとつはやるならちゃんと殺すこと、ひとつは証として小さなオリジナル銘柄タトゥーを入れることなのだが、彼は「嫁に怒られるからヤだ」と愚図ったりする。ボク的にはここで爆笑。
そしていろんなひどいことがあり、殺しのド素人である彼らには間抜けな結末が待っている。
とにかく、ラストになだれ込むリベンジ感がハンパない!溜飲が下がるとはこのことである。
前作に登場したクソガキ軍団は今回もおいしい役どころをさらう。血糊も増量の凄惨な話なのに、最後はスポーティーに〆。マジで。
この二作は話が繋がっているので、できれば続けて鑑賞して頂きたい。
二本でも三時間くらいだから全然大丈夫。なんにもおこらない三時間の映画も(信じられないことに)世の中にはあるわけだし。
「1」はさすがにドロドロムードだが(それでも笑えるところは随所にある)、「2」はかなりコメディ要素も強いので、まとめて観るとバランス加減がちょうどいいと思う。
さて最新作は『グリーン・インフェルノ』。
かの悪名高いヤラセ映画『食人族』のオマージュということで、それはちょっとどうなの?と当初は思っていたのだが、これもまた最高で、さすが安定のイーライ・ロス株。
思ったほどグロじゃない。というか、グロはグロなんですけれども、それを上回るストーリーの骨太さとか、ブラックなギャグの散りばめかたも含め、まっとうなエンターティメントだと思う。
「ジャングルを守れ」と立ち上がったボランティア集団(半数近くはチョーシコキのノンポリ学生)が、飛行機が不時着したついでに人食い人種にモグモグされるという話だが、実は「こいつが食わせ物で」という展開や(食われちゃう役どころなのにね!)、主人公の女学生(ロスの奥さん)との笛を通した原住民少年との小さな心の交流など「なんだか手塚マンガみたい」と思ったくらいで、本当に正統派な作り。
そもそも原住民たちをいかにも野蛮で残酷な奴ら、とは描いていない。
「たまたまやってきた文明人を食べちゃった」ってだけの話で、彼らにしてみれば「神様からのお恵み」。
縁日のイカ焼きみたいなもんである。
出演している彼らは本当にアマゾンに住む部族であり、監督が直談判で「映画というものに出てくれ」と頼んだらしい。しかも参考に見せた作品が「食人族」っていう。
それにしても、リーダー役の隻眼のババアやキバ男爵みたいなカラフルな人など、実に演技がうまい。
笛少年もつぶらな瞳でかわいいし、みなさんが(食われる役もふくめ)ノリノリでやっていることが伝わる楽しい映画です。しかも痛烈な社会風刺もちゃんとある。
続編もありそうなムードで、『ホステル』なんかは2のほうが面白かったくらいだから、期待大である。
三本を観て思うのは、イーライ・ロスという映画作家は本人がホラーマニアなので、そういった表現手段を使うが、意外とモラリストなんじゃないかな、ということ。
この前まで映画はアンチモラルだ、とか書いていてなんだけど、特にホラー作品には表現に難癖をつける奴らに対して「うっせーバカ」と言ってほしいから支持しているわけで、人間的なモラルも必要ない、という意味ではもちろんない。当たり前だが。
『ホステル』は他人にひどいことをする奴はしっぺ返しを食うってな話だし、それでも組織自体はなくならない。これ、個人的には仮面ライダーを思い出す。
ショッカーをやっつけて「悪は滅んだ」とかなんかで終わるのだけれども、またぞろ新興宗教のごとく悪の組織が立ち上がってくる。ご苦労様なことであります。
「2」と「グリーン」に関しては、身持ちの硬い女子あるいはバージンが生き残るという「ラストガールの法則」を守り、ギリギリのバランスを示す。
「グリーン」の中で悪として描いているのは、自然破壊を行って自分たちの利潤を得ようとする文明人であり、それに対しての強い怒りがハッキリと読み取れる。
というわけで「ホラーも視点を変えてみると楽しいよ」という、ためになるブログでした。