サミュエル・L・ジャクソンという俳優を知ったのは『パルプ・フィクション』で、今考えてもアレはとんでもなく変てこなギャング映画であった。どうでもいい会話やエピソードがだらだら続き、そもそも主役のジョン・トラボルタが途中で殺されるのだが、編集もわざとメチャクチャにつないでいるので、ラストで普通にしれっと登場する。これを劇場で観たとき、後ろのカップルの「なんであの人殺されたのに生きてるの?」との会話を聞いてちょっとびっくりしたがまあそんなもんなのかなあ、とか思いました。
さらに「ラジカセ番長」とも言われる、必ずしもスタンダードではない曲をぶち込んでいく手腕も鮮やかで(タイアップしないからコマーシャル臭くならない)、サーフ・ミュージックの実はパンキッシュな魅力を世界中に認識させた功績は大きい。ディック・デイルの「ミザルー」が襲いかかって来るような爆音で流れるオープニングのカッコよさは忘れ難い(これ以降、バラエティなどでイージーに使われるようになっちゃったが)。
会話の内容は本当に下らないので「なんだこいつスカしやがって」という声も当時は少なくなく、中原昌也氏がかなり激しくディスっていた記憶がある。
とはいえ、『キル・ビル』あたりから監督がいよいよ本格的に好き放題をやり始め、「まあ、この人はこういう人だから」と、世間の方が認知してくれて、今に至ると。
サミュエルの役は今から殺す相手の前でハンバーガーの講釈をたれるギャングで、とか書いてるうちにまた観たくなってきた。
現在売れっ子俳優のサミュ兄だが、本当に好きなのはアチャラカ方面のようで、製作総指揮で作り上げた作品が『ケミカル51』(2001)。
ドレッドにスカート姿(意味不明)の天才調合師がサミュの役で、彼が発明した最強のドラッグが
「POS51」。
これを巡り、サミュに裏切られたアメリカの密売組織のボス、そのボスが雇った女殺し屋、サミュと行動を共にするチンピラ売人(殺し屋の元彼。基本的にサッカーの事しか考えてない)、POS51の契約を交わしたイギリスの密売組織のボス、悪徳刑事、スキンズ(バカというよりほぼサル扱い)といった基本的に非合法な人間たちが大立ち回りをする、ドラッグにまつわるドタバタ・コメディ。アクション映画ではないような気がする。タラ映画のような凝った構造はないけど面白いから観ちゃうんだな。
ラストの大爆発(建物ではない)には大いに笑って頂きましょう。
サミュ兄の「タイトルが気に入った」という理由で出演した作品が『スネーク・フライト(SNAKES ON A PLANE・2006)』である。
大物マフィアの殺人現場をたまたま目撃してしまったハワイの青年をロスの裁判所で証言させるため、飛行機の深夜便で同行する刑事がサミュの役どころ。
が、それを知ったマフィアは彼を亡き者にしようと、旅客機の中に大量の毒ヘビをばらまく。このプロットにワクワクしない奴とは口もききたくない。
バカバカしいと言われてもしゃーないのだが、だったら何があっても主人公が死なない「ダイなんとか」というシリーズはバカバカしくないのか?と思う。みたことないけど。
恒例の「便所ファック」カップルは最初に殺され、最初から嫌味しか言わない嫌ったらしいおっさんはアナコンダに絞め殺されて丸呑みされ(ここは笑うところ)、その他罪のない人もばんばん死ぬのだが(さすが『デッドコースター』の監督)、がんばる人はがんばる。
そのうち空気も足りなくなり、サミュ兄もがんばるのだが、かなりヤケクソ気味ながんばりであり、デブが、とオチまで書きたくなるが(どうせ検索すりゃわかるんだけど)ここではやめる。
とりあえず108円握りしめてTSUTAYAに走れ!とだけは申し上げたい。
乗客が首にかけているレイにフェロモンを振りかけているのでヘビが襲ってくるとか、血清を間違えると命がないとか、海の上を飛んでいるから着陸できないとか、ワガママだったラッパーは反省するとか、デブがゲームばっかりやってるとか、意外と細かい仕事をしているので大雑把な設定が気にならない。
ていうか、気になる奴はもう知らねえ。
ヘビ嫌いの人以外におすすめのわくわくどうぶつパニックアクション。
どうでもいいことだが、エンドロールに流れるオリジナル主題歌(?)のサビ「キスミ~グッバ~~イ♪」が、頭から離れない。なんだアレ?