朝の電車の中の学生たちがうるさい。夜通し遊んでもまだ元気がありあまっているのだろう。結構なことである。青春か。まあ、青春時代を楽しく過ごしてるって時点で自分にとっては「異次元の生きもの」なんだが(彼らはたのしいことがいっぱいあるので何かをマニアックに追求するなんてことはないんだろうな。「孤独さ」と「捜し求める物に対する熱量」は正比例するのである)。ともかく、他の乗客(おとな)は祭日でも働きに向かっているわけで。彼らと時間軸が違っているのは仕方がないことではあるのだが。だが。しかし。ああ。死ねばいいのに。
といったストレスを爽やかに解消してくれるのがホラー映画の良さ。
『道化死てるぜ!』というイカす邦題がつけられた2012年の作品がある。
あまり仕事にやる気のないピエロがガキんちょの誕生日パーティーび呼ばれて、あまりうまくない芸を披露するのだが、生意気なのばかりそろっているので散々コケにされ、しまいには一人の行き過ぎた悪戯により滑って転んで頭に包丁が刺さって死亡。六年後、なかなかけしからんティーンに成長した彼らがパーティーを企画するのだが、そこにあのピエロが蘇り、連中をスラッシュしていくというストーリー。
ピエロがカッコいい。下から見上げる目つきや体型など、泉谷しげるにちょっと似ている。
泉谷ピエロがガキどもを血祭りにあげる手口が面白い。しかもかつて自分をバカにした態度を、そのまま相手にお返しして殺す。
後頭部から傘が突き刺さって先端には目玉が串刺しになり、そのままスッ転ぶと開閉部がバッと開いて血の雨が降ったり、「でかい容器のアイスクリームから掬う特性スプーン」で脳みそをよそって盛ってみたりとか、完全にふざけてる。で、ピエロなもんで走り方も「欽ちゃん走り」だったり、三輪車で追いかけたりと、細かい笑いも忘れない。ラストガールのお約束も守り、ちゃんとコメディ仕立てなので大丈夫です。四人しか殺されませんし。
殺人というのはクリエィティブな行為なので(もちろん創造においての話。言わせんなー!)、作り手の腕試しの場でもある。それにつれて、ゴアやバイオレンスの描写が激しくなって行くのは非常に好ましい。
すっかりこのピエロ(スティッチーズ)が気に入ってしまったので、これ一本で終わってしまっているのは惜しい。ジェイソンより全然好きなのに。
えー、シリーズ化しましょうよ。なんなら日本の企画で、泉谷しげる主演で。
『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(タランティーノ脚本・ロバート・ロドリゲス監督/96)を久々に観た。
この作品は前半と後半が全然違うので、昔は前半のギャング兄弟のエピソードが良すぎて、後半の「牧師一家を人質に取りメキシコに向かったが、仲間の指定した待ち合わせのバーがバンパイヤの巣窟だった」って展開があまり好きじゃなかった。
ジョージ・クルーニーとタランティーノが兄弟ってまず「血統」が違うだろと思いますが、タラのサイコ弟っぷりがイカしてる。このコンビを最後まで組んでほしかったのだ。
が、今観ればスピード感と「やりたい放題やっちゃうぜ」な、グルーブが気持ちがいい。特殊メイク師のトム・サヴィーニも出演しており(役名が「セックス・マシーン」!)、股間仕込み銃を発射したりの悪ノリ(ロバ監督は「トリガーなしでも連射できる銃」ってのが好きだよなあ)。ちょっと若いダニー・「マチェーテ」・トレホもバーテン役で出ている。
とにかく、エロとグロとバイオレンスと爆発という映画に必要な要素が全部ある。
『道化死てるぜ』もそうだが、真面目に「B級感覚」に取り組んだポップな作品だと思う。
とか書いておいてなんだが、A級とかB級って一体何だ?
最近、自分でも散々使っていた言葉に対して反省することしきりなのだけど、結局、好みの問題の話なんじゃないのか。A定食がエビチリで、B定食がきくらげ卵炒めで、さあどっち食うかってだけの話。
「凡百の~」という言葉もそのジャンルを否定しかねない言い回しで、そもそも「凡百」と言えるくらいの作品数あってこそのジャンルなのだ。使用していたゆえに反省することがとても多い日々です(高橋ヨシキ先生の影響大)。
「A級大作」なんてフレーズもなんでお前が決めんの?って感じの白ける言葉だし、「よく出来たB級作品」とか言われるとバカにしてんのか?と思う。
CGの爆発シーンと合成するために「どひゃー」とかやってる奴より、血糊を頭から被ってドロドロになってる奴のほうが偉いに決まってんだろ!