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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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ショウ・マスト・ゴー・オン



『ニュー・シネマ・パラダイス』という映画があって、かなり昔に観たはずなのだが、まったく何にも覚えてない。まあ、観た人は端から泣き崩れていくという伝説の恐ろしい作品であるようだ。
そもそも「泣ける映画」って何なのでしょう。泣けるという評判を聞きベタな展開にスイッチを押されてみんなで泣き「アー泣いた泣いたよかったあー」と劇場を出る。?????
不意打ちを食らって涙が出るのは理解できるのだけど、「さあ泣かせろさあ泣くぞ俺様は泣きに来たのだからもし泣けなかったら金かえせ」という意気込みで鑑賞するのであれば、もう一生映画なんか観なくていいよと言いたい。
だいたい人が泣きスタンダード映画(泣きスタ)を指し、「あれは泣けるよーっ」と発言するときの「自分は真人間だよーっ」と言いたげな空気、
「自分は本当にいいものを知っていてすごいでしょう?」と言いたげな高飛車な匂いは何なのあれ?
共通認識を強引に迫ってくる感じが最悪。
よって「全米が泣いた」とか(え?全米?)「感動の実話ヒューマン・ドラマ」等の謳い文句を付けられたものはすべてスルーさせて頂く方向である。観客がピーピー泣いているのをCMに使うような志が低い作品も然り。
そういえばツタヤの「親子で感動」コーナーに『スタンド・バイ・ミー』が置いてあって驚いたのだが、「あれを親子で観るってのもちょっといいかもね」と思い直した。
ちなみにスティーブン・キングの原作タイトルは「THE BODY」(死体)であり、タイトルをベン・E・キングのヒット曲と同じに変更し、それを最後に使うというのは映画制作陣のセンスによるものだ。
ラストに流れるのがロバート・ジョンソンとかのドロドロのブルースだったりしたら(むしろそっちのほうが内容に合ってる気もするが)、かなり映画の印象も違っていたはず。
原作にはゲロもヒルも出てきて「そこをちゃんと映像化した」という点が一番信用できる。自分にとっては『ブルー・ベルベット』に近い作品。

『ホラー・シネマ・パラダイス』(2010)という作品があり、これは「ニュー・シネマ~」とリンクさせた邦題なのだが、原題は「ALL ABOUT EVIL(邪悪のすべて)」であり、当然こちらのほうがカッコいい。
オープニングで次々に映し出されるレトロなホラーやSF映画のポスター。問答無用にカッコいい。
主人公のデボラ・デニスは昼間は図書館で働きながら、父親が残したホラー映画専門館を経営している。夕方までは図書館員で、そのあとに支配人としてレイトショーを上映するというスタイルのようだ。
同僚のおばさんからは「ホラー専門の深夜映画館なんてまともじゃない。気持ちはわかるけどあそこに未来はない」と言われる。が、デボラは「父は劇場にすべての情熱を注ぎ込んだ。父は映画と劇場を愛していた。ショーは終わらない!」と、半ベソでおばさんに宣言。
正直に書くと、この冒頭シーンで不意打ちを食らってボロ泣きしました。
今夜の上映は『血の祝祭日』。くっ。スプラッタ映画の第一号であり、邦画における『男はつらいよ』の一作目と同じようなポジション、と書けばその重要性が伝わりますでしょうか?
足しげく劇場に通うホラーマニアのイケメン高校生・スティーブンとデボラは懇意だ。
上映直前、デボラは映画なんかにひとつも愛情を持っていない母親と「映画館を売れ」「絶対に売らない」と口論になり、衝動的に彼女を殺してしまう。
そして映画が始まらないので観客が騒ぎ出し、ずっと劇場に仕えている映写技師もたまたま留守でしたので、素人であるデボラは機材をガチャガチャいじりまわしていたら、先ほどの殺人シーンの録画が劇場に大写しとなり、それを観たスティーブンをはじめとする客たちが「すげえ!」と大興奮。
かくしてデボラは映写技師(どうやら潜在的なサイコじじい)や、街でスカウトしたサイコ兄ちゃん(矯正リングがクール)、精神病院を出たばかりの双子の殺人鬼姉妹(カッコかわいい)をスカウトして彼らをクルーに従え、次々と実際に殺人を犯しては撮影し、それを短編映画として上映すると続々ファンが劇場に詰めかけ、デボラはカルト映画監督として一躍、時の人となったのであった。

ええと、冒頭が素晴らしかったのであれなのだが、どうにも乗り切らない話であった。
そもそも目の肥えたホラーファンがパチモンのスナッフ・フィルムみたいなものに熱狂するってのが腑に落ちない。これは声を大にして言いたいのだが、ホラー・ムービーのファンはスナッフ・フィルムのマニアとイコールではないんだよ!
意外と思われるかも知れないが我々はちゃんとストーリーを追っており、そこでフックとして使われるショック描写に笑ったりゾッとしたりしている。
本当に残虐な場面が好きなら、ネットで首切り動画でも見ていればよろしい。
どうもいろいろ混同されると困っちゃうのだが、「ホラー映画の存在すら許せない」という人は(実際、80年代イギリスではビデオ・ナスティというバカ検閲機関のおかげで、店頭からホラーが姿を消した事がある)一度、劇場に足を運んでみればよい。
上映後、友達同士もカップルもみんなニコニコしながら出てくるから。ピース。

と、マイナス査定の作品なのだが、デボラの犯罪を知ったスティーブンが「お父さんはホラー映画を愛していた。それなのに君はなんだ。(自分はさんざん楽しんでたくせに)君に才能なんかない!」とキレるシーンがあるのでまあいいや。まあ許す!
そしてホラー好きというだけでスティーブンをテロリスト呼ばわりし、一連の事件を「犯人はあの生徒です!」と勝手に騒ぐ担任の女教師を一番バカっぽく描いていることには好感度大。バーカ!
コスプレ映画としてもイケてるし(特に双子姉妹がオシャレ)、かのジョン・ウォーターズ御大も絶賛とのこと。あと、スティーブンの友人であるヒロイン(恋人ではない)が、本当にかわいくない!なぜかというと嶋田久作にそっくりだから!
エンドロールにもこれまたカッコいいポスターが次々に現われては消えるのだけれど、よく見ると「フィルム・バイ・デボラ・デニス」とクレジットされていて、どうやらデボラが制作したという設定の「架空の映画ポスター」のようだ。
マニアックである。そして劇中に登場するディヴァインみたいなドラァグ・クーン、実はこの人が監督さん。
ショーは終わらないを地で行く人のようだ。うーむしょうがない。許す!


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