遅ればせながらというか、完全にスルーしていたスパイ・アクション『キングスマン』(2014)を鑑賞。
もともとスパイ映画って、イケメンがモテたりしつつ颯爽と事件を解決するみたいないけ好かないイメージであり、派手っぽいけどあんまり人が死なないよな~という感じで、さほど興味があるジャンルではなかったのだが、これは来ました!だってスパイも狂ってるんだもん!!
無所属の諜報組織「キングスマン」。冒頭のテロリストとの対自シーンでさっそく一人のキングスマンが殉死してしまうのだが、生き残ったハリー(コリン・ファース)は彼の家族を尋ね、息子・エグジーに「困ったらいつでも電話してくれ」と、秘密の連絡方法を渡す。
時は流れ、エグジーの母親は素性のよろしくないおっさんと再婚し、彼自身もドロップアウトの道を歩んでいたが、ハリーはエグジーに素質を感じてキングスマンの候補生として誘う。
最終的に合格するのは一名。この試験がなかなか鬼畜なんである。厳しいジャッジが必要とはいえ、かなりイカれてる。
スパイ映画といえば悪役であり、本作ではサミュエル・L・ジャクソン演じるIT長者のリッチモンド・ヴァレンタイン(リッチでモンドでバレンタイン!なにこの響き!)。
彼は自分で選んだ社会的名士のみを契約して生き残らせ、他の人間はすべて滅亡させるという人類規模のテロを計画している。チャラいラッパーみたいな外見だがとんでもない奴なんである。
秘書は義足に刃物を仕込んだボディガードでもある「ガゼル」で、両足の刃で相手をバラバラにする。
監督は『キック・アス』のマシュー・ボーンなのだけど、ロリータ殺人マシーン「ヒット・ガール」をスクリーンに躍らせただけのことはあり、このお姉さん(ソフィア・ブテラ。覚えたぞ!)のアクションもキレキレである。
きれいなお姉さんが野郎どもをドカドカぶっ殺していく映画が、ぼかあ、好きだなあ。
ところでこのリッチモンドの計画、まるっきり荒唐無稽とも言えない。
劇中でヘイトスピーチを行う教会のシーンが出てくるが、あれはキリスト狂の「福音派」をモデルにしているのではないかと思った。聖書に書かれていることを一字一句信じるという極右派で、最終戦争が起こっても自分たちだけは助かるという共通認識があるらしい。なので本音は「早くおこんねーかなー、ハルマゲドン」ってところか(ジョージ・ブッシュがこの一派だという話であり、彼は核ミサイルのボタンが押せた)。
この協会に潜り込んだハリーだが、「黒人もユダヤ人も同性愛者もくたばれ!」といったスピーチを聞いているうちに気分が悪くなり席を立つ。
隣のおばさんにどうしたの?と尋ねられるとハリーは「これから中絶施設で働くユダヤ系黒人の彼氏とセックスするので失礼」と答える。模範解答ですね。
するとおばさんが「地獄で焼かれろ!悪魔め!」と絶叫。ていうかさあ、悪魔のほうがずっと寛大なんじゃないのか?
それが引き金になり、リッチモンドの仕掛けで脳波をいじられていたハリーは殺戮を開始。このシーンがもうキレッキレで、頭に突き立てて殺した奴のナイフをもう一回抜いて別の奴にブッ刺すという細かい芸もあったりして、ヘイト信者を皆殺し。ぶらぼう!!
終盤はスパイ映画の王道的に、ハリーの意思を継いでキングスマンとなったエグジーがリッチモンドのアジトに乗り込み、計画を壊滅させる。
つまり、テロに乗って生き残ろうとしていた連中が全員くたばるハメになったのでした。
ただし死に方がだいぶポップに表現されていたので、どうせR指定になるなら血まみれブシューでもよかったのでは?と思わないでもないのだった。
あっそうそう、これもR15なんですよ。いやいやいやこれは教育映画ですよ。ものすごく大事なことを教えているじゃないですか。
「クソみたいな神を信じるなら悪魔に身を委ねよ」ってことですよ(あれ、違うか?)。ヘイルサタン!