「低俗」はいい。なにがいいって「~である」とか論じても偉そうになんないから。
そうそう村上春木屋の新作が出版されると国を上げての騒ぎになるのが不思議だ。カッコいい犯罪者とかクレイジーな科学者(に、作られた怪物)とかエロい女泥棒とかが出てくるわけでもないのにな。
はるきくんの本は一ページも読んだことがなくて、それはつまりはるきくんがぼくを呼んでいないということだ。古本屋だからって小説を山ほど読んでると思うなよこんにゃろめ。古典から現代に至るまで全然読まないぞ。
「三級片」とい言葉がある。あるのです。これは中国で「エログロ成人映画」を指す。
最も有名なのが『八仙飯店之人肉饅頭』で、これに『タクシーハンター』『エボラ・シンドローム~悪魔の殺人ウィルス』を加えたものが、ハーマン・ヤウ監督xアンソニー・ウォン主演の極悪三部作と言われている。
日本では「スーパークレイジーⅢ級片極悪列伝」として公開&リリース。
「八仙飯店~」はそのまんまの内容でして、VHSの時代に観たのですけど、躊躇なく子供まで殺しちゃうような映画なので、今回はちょっとパスして未見の二本を鑑賞。
『タクシーハンター』(93)は、タクシーに妊娠中の妻を轢き逃げされた男がぶち切れ、態度が悪い運転手たちに天誅を下していく。中国のタクシードライバーというのは本当に態度が悪いらしく、観客たちはアンソニー・ウォンの殺しっぷりに拍手を送ったということだ。
中には真面目なドライバーもいて、そういう人は殺さないし、おとり捜査の刑事に重症を追わせると、わざわざ変装して病院にまで謝りに行く。根はいい人なんである。
奥さんを失った悲しみや、親友である刑事との交流(結局追われる身になるのだが)なども描かれていて、倫理的にもちゃんとした作品だと思う。
で、監督は「今回の、ちょっとぬるくね?」と思ったかどうかは知らないが、次作『エボラ・シンドローム』(96)で大爆発する。
いきなりアンソニー演じるチンピラの「カイ」が、浮気相手のボスの嫁、ボスとその手下を殺すところから始まる。
そしてアフリカで中華料理屋を経営している親戚の下に身を隠す。厨房をまかされているのだが、やることなすこと最悪。どんなホラーよりも生理的に「ゲッ」となること請け合い。すでに観客のハートをブレイク!
肉の仕入れのため村に向かうと、そこは高熱を出した患者がバタバタ倒れている。つまり恐怖のエボラ熱なのだが、雑なカイは倒れこんだ現地の娘を「デカパイだ!やっちまえ!」と、やっちまうわけである。
ところが彼は一千万に一人と言われる、エボラに対して免疫抗体を持つ体質の人間でした!
この時点でカイは、悪人として最高のスーパ-チャージをしたのである。
料理屋に戻るとカイは高熱で倒れるが、復活してからは今まで自分をさんざんこき使っていた親戚と嫁と部下をぶっ殺す。その肉で人肉バーガーを大量に作成!(この辺は「お約束」っぽい)
人肉バーガーを常連に振る舞い、元カノとよりを戻してセックスし、街でクシャミ、飲食店で食い散らかし、どんどんエボラ菌をばらまいていく(エボラの感染経路は血液や体液など)。
警察に身元がばれて追跡されるが、「エボラのシンちゃん」と化したカイは「おらぁ、エボラだぁ~!!」と追っ手につばペッペしながら街を逃げまくる。最悪の人間最終兵器。
最後は「やっちまったー」というオチに至り、これは究極の不謹慎なブラック・コメディ。
たしかにひどい作品だが、自分のような人間は「ひっでぇなあ」とかニヤけつつも、心に貯蓄していく。あるいはタトゥーのように刻んでいく。こんなものでも知っていないと、他の人との差異化が出来ないから。
まあ、「またこんなの見ちゃったなぁ」という少々の後ろめたさが気持ちいいわけだが。
「ちょっといい話」「ちょっと泣ける話」より、「本当にひどい話」を見聞するほうがお得感があると言える。言えます。