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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

すうさい堂は閉店しました。17年間ありがとうございました。

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不幸な人形の家へようこそ



ツジジンセーは後に嫁となるナカヤマミホとの初対面時に「やっと逢えたね」と言ったそうだが、ようやく鑑賞できたトッド・ソロンズのデビュー作『ウェルカム・ドールハウス』(95)。やっと、観れたね。
これは「リアルな」学校と家庭の物語。そしてリアルな不幸の物語でもある。「凡庸の中にこそ不幸がある」といったような。
主人公ドーンは兄と妹の真ん中に挟まれた中学生。いわゆる「メガネブス」。まあ、最初から最後までブスブス言われてるんで、そういうことにしましょう(ひどい@@@)。
兄はそこそこ勉強ができる、妹は可愛らしくどうやら世渡り上手で、いつもバレエを踊っている。両親の愛情もここに集中。
果たしてドーンは、特別取り柄もなく、メガネブスなので、男女問わずクラスからバカにされている。
彼女を慕う年下の少年もいるが、彼は「オカマ」呼ばわりされてバカにされているので、お気に召してはいない様子。ここで二人が団結して事を起こせばそれは美しいしファンタジーだけど、リアルな物語ではそうはならない。弱い者は自分より弱い者を、やっぱりバカにしているから。イケてない奴と一緒に見られるのは嫌なのだ。

兄はバンドをやっている。が、兄担当のクラリネット・オルガン・ドラムという「テキトーに楽器ができるのを集めてみました」といった風情。彼らが演奏する「サティスファクション」のへっぽこぶりは絶品。
そこへなぜかイケメンのギターボーカルが加入。メガネブス、あ、いやいや、ドーンは一発で恋に落ちる。
「女の子はやっぱしルックスがいい人が好き!」という古今東西の定石。しかし、イケメンのバンドマンはモテモテのヤリチン、というのも古今東西の定石。メガネブス、あ、いやいや、ドーンの恋は静かに玉砕する。
ドーンの冴えない日常は続く。彼女は健康だし家庭もそこそこ裕福なようだが、どうにもこうにも不幸だ。
そういう種類の不幸は確実にある。少なくとも彼女の放つ全てから(へんてこなセンスのファッションも含め)、「ハッピー」というワードがまるで見えない。ぬるーい地獄がいつまで続くやら。
そこに起こった「可愛い妹」の誘拐事件。両親は憔悴し、父親はベッドで寝込んでしまう。
ドーンは父の枕元に行き、「ミッシー(妹)がダメでも・・・・私たちがいるわ」と励ます(・・・励ます??)のだが、父の反応は日本語で表すと「んがぐぐ・・・・」@@@@@@@@@@@@@@@
この兄弟構成であれば、親のリアルな反応は確実にこんなであろう。正直に真実を切り取った瞬間なのだ。
ドーンは妹の捜索をするため家出する。しばらくして家に電話してみると兄が出て「ミッシーは見つかったぞ。で、お前は何やってるんだ?」
まあ、この時のドーンの心情は「あのー、自分はどーでもいいんスか・・・・・?」といったところでしょうか。

事件が無事に解決し、ドーンは学校のスピーチ大会で事の顛末を語る。が、いつのまのやら生徒たちから起こる「ブス!」「ドブス!!」の大合唱@@@@@@@@。
ラストの兄との会話でドーンは「ディズニーワールドには行かない(修学旅行のことだろうか?)」と言うが、兄の答えは「行かないと内申書に響くぞ」。
生徒たちが楽しげに合唱するバスの中、ドーンひとり、苦虫を噛み潰したような表情で合唱に参加している。
そうなのだ。修学旅行や林間学校は大多数にとっては「楽しい青春の一ページ」かも知れないけれど、ひとりでいたい、何よりもこの世で最も大嫌いな「クラスメート」と一緒に何日間も過ごさねばならないのか?と思っている者にとっては、最悪な地獄だ。
この事実を知ろうとしないから、学校側はいつまでたってもいじめをスルーする。
はぐれ者が自滅する様を見せればそれはカタルシスでもあるが、トッド・ソロンズはこまこまと「どこにでもあって、誰にも見えていない不幸」をスケッチする。
『ウェルカム・ドールハウス』は「無い」とされている不幸を(事件や事故、病気や生い立ちにまつわることだけが不幸ではない)「あるんだよ!!」と見せつけてくれた。
それが「誠実」ということであり、トッド・ソロンズ作品の魅力である。実は彼の全作品を観たので、これから伝道していくのだー、という大きなお世話な予告で〆。

〆、じゃなかった。ドーン役の「ヘザー・マタラッツォ」で検索してみたら、ずーっと自分が最高最高と言い続けてる『ホステル2』で、全裸で逆さに吊られて首を切られて殺されるイケてない女子役で出演していたのでした。ドーンの人生は(ドーンじゃないけど)やはり不幸なのだった。はっはっはっ。



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