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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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恨パイヤ、「渇き」



韓流と書いて「はんりゅう」と読むのだけど、自分の場合は「恨流」である。とにかくネガティブな感情を思い切りぶつけてくるものだから、観た韓国映画には外れがない。ゆえにダメな人にはまったくダメで好き嫌いが激しく分かれると思う。「暴力(バイオレンス)」や「愛(ラブ)」はあっても(愛ゆえの暴力だったりする)「平和(ピース)」がない。
ちなみに韓国映画を「まあまあだった」とか言ってる人は頭がボケてます。
一番の重鎮はキム・ギドクってことになるのかも知れないけど、個人的にはかなり重い。といっても『メビウス』しか観ていないのだが、これは「登場人物がコチンを切ったり切られたりする無言劇」という大変イカれた内容なので、この人の作品はもうちょい後回しでいいかなと思ってしまったのだった。
好みはパク・チャヌク作品なのかなと思う。「復讐三部作」で知られる監督だが、新参者がなんだかんだ言うの今さらどうかと思うのでザックリひとこと。
『復讐者に憐れみを(2002)』。あっちもこっちも復讐バトルロワイヤル!全員惨殺!
『オールドボーイ(2003)』。その口あんぐりな内容にタランティーノから江頭2:50まで衝撃を与える!
『親切なクムジャさん(2005)』。これぞ恨流!「アイツ」を捕まえてからが長い。そう簡単には殺さない!
しかもこの人は子供を殺すような描写も平気で入れてくる残酷な作風だが、ちょいちょいギャグもぶっこんでくるからタチが悪い(そこがすき)。ターゲットを処刑した後に全員が「お疲れ様でしたー」って感じでケーキ食ったりとか。
それを端的に表しているのがオムニバスの『美しい夜、残酷な朝』の一編「cut」。
映画監督の家に闖入者が入り込み、ピアニストである奥さんを動けないように拘束している。彼は監督の映画のエキストラ参加者。それを分からせるために、いきなりミュージカルが始まったりする。
で、見知らぬ子供を連れ込んで映画監督に「その子供を殺せ。さもないと奥さんの指を一本ずつ切断する」と宣言。悪夢のような短編。しかもブラックコメディ仕立て。
オムニバスってのは一本は大体ぬるいので、そこは日本の三池崇史があえて担ったような気がする。ラストは香港の監督による『餃子』。「ホラーで餃子」と書けばだいたい内容はわかると思います。
「復讐者」と「クムジャさん」に出演しているのがソン・ガンホという俳優で、とにかく殺人鬼から怪獣退治のお父さんまでいろんな役をやっている。韓流大好きおばさんにキャーキャー言われるようなイケメンではないが、この人が韓国映画を代表する顔なのだ。リスペクトをこめて「ソン様」と呼ぶ。

ソン様とパク監督が組んだ『渇き』(2009)。これは韓国産の吸血鬼映画。
牧師のソン様は公的な自殺に近い人体実験の献体に志願。五百人に一人の確率で生き残った彼は吸血鬼になってしまう。が、町では奇跡の神父として評判になり、祈ってくださいのリクエストが殺到。
昔馴染みのところに祈りに行ったところ、ソン様はその家の奥さんと出来てしまう。召使いのように使われていると感じる、倦怠の日々を送る奥さんの頼みで旦那を殺害。そのことを姑は知っているのだが、脳梗塞で倒れ、目だけしか意思表示の出来ない体になる。
「私も吸血鬼にして」との奥さんの頼みを飲むソン様。
このビフォー・アフターが最高で、吸血鬼になったことにより滅私奉公型だった奥さんが凶悪に変貌。
道すがら人を殺して血を吸う。ソン様が「自殺者の血を持ってきてやる」と言っても「素直にくれる血はおいしくない」。この辺からなんとも、変てこな方向に話が進んでいく。
奥さん役のキム・オクビンもバンパイヤになってからがさらに美しく、ブルーのワンピースでビルをぴょんぴょん飛んで逃げて行くシーンが大変かわいらしい。
仲間たちと麻雀の最中、姑のアイコンタクト(顔芸)で秘密が暴露されてしまい、そこから始まる大殺戮。
ちなみにソン様の「血を少しだけ吸って捨てるのは人命軽視じゃないか?」と言うセリフには笑ってしまった。もちろんギャグだから。
彼らはバンパイヤといえどケープをまとったり顔が青白かったりするわけではなく、しかも牙がない。
考えてみれば牙というのも優雅な凶器で、それを持たない二人は犠牲者の喉笛を切り裂いて血を吸う。
「バンパイヤ映画って意外と血が出ない」という定石をひっくり返しての全編血まみれ作品。
「官能ラブストーリー」という体で公開されていたようなので、うっかりだまされた韓流おばさんたちが最後まで鑑賞できたかどうか。はっはっはっ。
しかしバンパイヤというものは代々、ベラ・ルゴシにしてもクリストファー・リーにしても岸田森にしても淫靡な色気がなければいけない。その点、ソン様も一見普通だが「苦悩する男」のそこはかとない色気がある。
ラスト、二人は海岸の朝陽を浴びて朽ち果てる。クリストファー・リー伯爵は何度も何度もエグく殺されたが、『渇き』はバンパイヤ映画史に残る美しい名シーンで幕。
しかしゾンビにしてもバンパイヤにしても、そんな伝統は一切ないにもかかわらず、いきなりマックスに更新してしまうのが韓国映画のすごいところである。
ちなみに同じタイトルの日本映画はゴミなのでお間違いなきよう。


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