先日は池袋新文芸座で『ダイナマイトどんどん』『太陽を盗んだ男』鑑賞。
菅原文太追悼上映特集のひとつではあるのだけど、それはあまり関係がなく、この二つが観たかったんである。しかし、「映画を観た」という気持ちにさせてくれる二本立て。
『ダイナマイトどんどん』は岡本喜八監督の78年作。終戦直後の小倉におけるヤクザ組織の抗争を、野球の勝ち抜き戦によって平和的に解決しようとする破天荒なコメディ。
キレキレの菅原文太をはじめ、サーモンピンクなスカパラスーツの岸田森、あこぎな親分がすっかり板についた金子信雄、元プロ野球選手の傷痍軍人フランキー堺、クールなキタキン、ヨイヨイで言葉をちゃんと喋れない親分のアラカン(これを引きの演技というのだろう)、警察署長の藤岡琢也など、すべての登場人物が生き生きしている。比べてもしょうがないのだけど、すべてが相殺しあっていた実写版ルパンなんてものを思い出すと、要するに才能の差なんだろうなと思う。
で、ヤクザもん同士なので最後はやっぱりメチャクチャになる。「爆裂都市」みたい。
今までついDVDを手に取ることもなかったのだが、すっごい楽しい作品。シリアスなヤクザ映画を観すぎちゃった方に是非。
『太陽を盗んだ男』は大好きな作品で、今回初めて劇場で鑑賞。長谷川和彦監督の79年作。日本映画、大豊作の時代じゃなかろうか。
今も昔も映画界最大のタブーは「天皇と原発」と聞くけれど、両方ともぶち込んでいる作品。よく製作できたよな!と思う。しかも皇居前や国会議事堂のシーンなど、絶対ゲリラ撮影である。
主人公の沢田研二扮する理科教師がプルトニウムを盗む原発内部のシーン。許可なんかされるわけないからセットなんだけど、この完成度がすごい。いや、見たことないし、知らんけど。
さて首尾よくプルトくんを盗み出したジュリーだが(そんなこと現実的にはあるわけないんだが、忘れちゃいけないのはこれは映画であるということ)、自宅で精製してインディーズな原爆を作ろうとする。
「鉄腕アトム」を口ずさみつつ、プルトニウムをオーブンに入れて待っている間、ビールを飲みながらナイターを観ていたら爆発。
このような彼の「ゆるキャラさ」が作品のキーであって、実はお茶目なジョークがあちこちに出てくる。
ジュリーが学校でターザンの真似してロープからぶら下がり、「アアア~!」と叫ぶシーンは布石になっているので、ご注目。
そして、彼がよく噛んでは膨らませている「風船ガム」の儚さは、原子力発電の危うさを象徴しているのだろう、なんてことを書くのは本当は無粋(だがそれは、現実に起こったんだけど)。
めでたくお手製プルトニウム爆弾が出来上がると、ボブ・マーリーの「ゲット・アップ・スタンド・アップ」をかけながら大はしゃぎ。ボブ師もこういう風に使用されるとは思わなかっただろうな。
で、そいつを政府に送りつけゆさぶりをかけるのだけど、いかんせん、欲しいものがない。
当時はいつも途中で切られるナイターを最後まで放送しろとムチャぶりを言ったら、通った。
次は生放送のDJ(池上季美子)との接触により、当時バリバリのジャンキーを抱えていた「ローリング・ストーンズ」の来日公演をさせろ、とリクエスト。まあ、なんでもよかったんだろう。
警察とのカーチェイスやサイボーグのような刑事・菅原文太(やっと書いた)との一騎打ちなどありつつ、彼の体は静かに被爆していた。
この作品の素晴らしいところは、純粋なエンターテイメントになっているところ。
つまりプルトニウム爆弾は「夢を実現するためのアイテム」として描かれているので、反原発のプロパガンダとしてはまったく使えないんである。
製作から数十年を経て、未曾有の原発事故を体験した我々が普通に観られて、しかも拍手喝采をおくることができる百年に一度の名作。
全人類(の良識)を敵に回すような、悪魔的なラストも秀逸。リメイク絶対不可能。