「週間ヤングサンデー」は何年か前に廃刊になってしまったが、この雑誌って自分が読んでいた時期は、山本英夫『殺し屋1』・新井秀樹『ワールド・イズ・マイン』・松永豊和『バクネヤング』・喜国雅彦『月光の囁き』・相原コージ『ムジナ』など、エロスとタナトスにあふれた突出した作品がボコボコ掲載されていたっけな、という印象が強い。
いままで未読だったヤンサン女性作家陣の作品、『マイナス』(山崎さやか)と『いぬ』(柏木ハルコ)を読む。
『マイナス』は、美人教師なんだけどいじめられた経験のトラウマが強すぎ、ついつい卑屈になって相手の言うことを「何でも」きいてしまうというエロコメ風味で始まったのだが、ふとしたきっかけで他人より有利に立つ快感に目覚め、そこからストーリーが果てしなく暴走していくのだけど、この「マイナス思考のジェットコースター」な感じはどこかで読んだなと思ったら、安達哲の『さくらの唄』がそれであった(とってつけたような結末も似てる)。
猛抗議されて掲載紙回収、単行本にも欠番扱いになった「山で遭難した主人公たちが事故で死んだ幼女の肉を焼いて食う」というエピソードも、太田出版の「完全版」には収録されている(実際読むと別に、どうってことはないです)。
そんなことより後半、女教師が自分勝手に壊れて破滅していく様がどんどん笑えなくなって怖い。結構これ大変な作品。
『いぬ』は思わず膝をぽんと打ってしまうような、女性の性欲に焦点を当てた「女子オナニー漫画」というか「クンニ漫画」というか、そんな作品。
ストーリーの軸になるのが「クンニリングス」なんだもの。
密かに自分の性欲処理を飼い犬で処理していた女子大生・高木さん(バター犬にしていたのですな)だが、愛犬が死んでしまう(バター舐めさせすぎで糖尿病になったのですな)。
イケメンとのセックスでは精神統一ができないので、無為に「それだけ」をしてくれる「いぬ」のような男子(中島くん)」とたまたま出会い、いきなりクンニをお願いしたのが始まり。
中島くんは惚れこみ「つきあっている」と思い込み(そらそうだ)、高木さんはやっぱりイケメンがタイプなので、彼は単なる性欲処理の対象。このズレが絶妙にずーっと続く。
高木さんは研究熱心なのでいろんな自慰の方法を試みるが、やっぱりもうひとつなので「中島くん(いぬ)」になんの邪気もなく、お願いしに行く(クンニとセックスを)。
中島くんがふっ切れ自分の立ち位置を受け入れ、はっぴいえんどに向かっていく流れはなかなか感動的。
女性作家が少なからず自分の性癖を露呈しながら描いていると思われるので、そういう意味でははこれ、男気に溢れた作品である。
エッチだよ。
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