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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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手塚版デビルマン『ミクロイドS』



手塚治虫の少年向け作品で最も残酷なものは何かと言えば(『アラバスター』とかあるけれども)、『ミクロイドS』じゃないかと思う。
アリが進化した種族「ギドロン」が人間に向けて総攻撃を仕掛けようとしている。
その下の階級が「ミクロイド」。彼らはギドロンに奴隷のように扱われているが、ルーツをたどれば人間であり、その中から選ばれたヤンマ、アゲハ、マメゾウが人類にこの非常事態と、自分たちも共に戦うことを伝えるための旅に出る。
が、旅は過酷を極め、途中で寄った人間の町はギドロンのサイボーグ「人虫(これが気色悪い)」によって壊滅。そして出会った人間はミクロイドの意志を無視して見世物として売りつけようとする。
世界的科学者の美土路博士とその息子・マナブに会うまでは、彼らの話を取り次ごうとする者がいない。
さらにアゲハはギドロンに忠誠を誓うミクロイド・ジガーの恋人であり、ジガーはヤンマの兄である。
よってアゲハはジガーが送り込んだスパイではあるが、段々と使命感に燃えたヤンマに気持ちが傾いていき、ジガーは「ジグジョー!!」と嫉妬の炎がメラメラメラ、という極めてアダルトな展開。
最初の数話でアゲハはオールヌードを御開帳しており、ある世代における「手塚治虫とは、エロいマンガを描くひと」という認識はあながち間違いではないのであります。

ギドロンはいよいよ、人間というか日本に向けて総攻撃を仕掛ける(公害が一番ひどいからだそうだ)。
竜巻のようなカ・ハチ・アブたちが人間を刺し、口や鼻から侵入して窒息させるんである。
つまりこれは手塚版「デビルマン」。いや、殺されるのが悪魔ならばまだ「最後になんかすんごいの来た!」と、ちょっとしたイリュージョン感があるかも知れないが、恐ろしい数の虫ですよ虫。
虫に殺された死体がまたむごたらしいし、ミクロイドをかばう美土路博士は人類の裏切り者だと、住民たちが自宅を襲うシーンなど、まさにデビルマン的。
ピストルを振り回して篭城し、暴君のように振る舞う白人。ギドロンが放った寄生バチ「マイマイ」にとりつかれてコントロールされている少女にマナブは恋するが、最終的に彼は彼女を自らの手で殺してしまう。戒厳令化のもと、投石した一般市民たちを容赦なく射殺する自衛隊。後半に登場するレディース愚連隊のエピソードなど、パニック・アクションの王道。
昆虫たちの脅威に人類は対抗し得ないのは明白。「とりあえず一件落着」で終わるラストも不気味。

この作品はアニメ版も放送されており、見てた記憶はあるけれどなんにも覚えてない。
(あ、脚本家がアニメのデビルマンと同じだ。そういえばこの原作に「S」の文字は一回も出てこなかった)
等身大ヒーローよりは巨大ヒーローのほうが人気があったであろう時代に「ミクロのヒーロー」では(手のひらに乗れます)、そりゃ地味過ぎますよねって話である。

※6月6日(土)は都合によりお休みさせて頂きます。来週からは火曜日も開ける予定です。


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