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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

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中島みゆき賛江



冬はきついっス。客足も更に途絶え、インフルエンザの恐怖と戦いながら電車に乗り、どーかと思うくらいの寒がりなので常に小動物のように震えているんでス。
ただ、中島みゆきがいい塩梅に沁みる。『寒水魚』までのアルバムは全部好きで、なんだよ大ファンじゃないかーと。
もう一方の双璧であるユーミンに思い入れはない。あの方は裕福層に向けてしか歌ってないから(とか思う僕は心の貧民)。
最近は「応援歌を歌う人」というイメージらしく、落ち込んだときに聴いてさらに落ち込んでスッキリするというのが正しい中島みゆきの聴き方、というオールドファンとはえらく距離がある。
「ファイト!」あたりからなんだろうか。最初に聴いたときはちょっと動揺したけど、なんか違和感が残るし、「戦う君」と「戦わない奴ら」を単純に二分化するのもどうかと思う。やたら「あちら側」と「こちら側」を強調する漫画(迷走王ボーダー。あっ書いちゃった)を読んでうんざりして以来、そういう線引きには敏感になってしまったのでス。
去年の「麦」ですか、あの一連のスペクタクル感にもまったくついていけず、やっぱ70年代の曲がいいよなーと後ろ向きな聴き方ではあるのだが、まあその辺は嗜好の問題。

ファースト『私の声が聞こえますか』のジャケに映っているのは実に地味なおねえちゃんだが、みゆき節はすでに出来上がっている。大上段に構えた『時代』より、デビュー曲の『アザミ嬢のララバイ』がいい。
セカンド『みんな去(い)ってしまった』は昭和チックなやさぐれ感がここで全開。数曲のポジティブな、ほっこりナンバーもいいフック。この時点で「春夏秋は冬を待つ季節」と歌い切った才覚!
ひとつだけ嫌いな曲があるけど、それはそれ。
サード『あ・り・が・と・う』も引き続きやさぐれてますが、全曲名曲。最初のピークはここじゃないかと思う。
『朝焼け』のボサノバ・テイストが抜きん出てオシャレ。
で、『ホームにて』。別に地方出身じゃないし、地元への思い入れはゼロほども持っていないのだけど、これを聴くとグッと来る。歌のちから、ってやつだろうか。
初期三枚はまだ「怨み節」が炸裂していないので、比較的ライトに聴ける。特に三枚目がお薦め。

四枚目の『愛していると云ってくれ』は昭和歌謡史にも残る大ヒット『わかれうた』収録。いよいよ「あの路線」に拍車がかかる。
朗読からいきなり「れぇーいぃこぉー!」の絶唱が始まる『怜子』でいきなり掴まれ、「傷歌」の連打。
ミュージシャンを目指していたカップルが別れたあと久々に会う。女は成功したらしいが男はギターをやめた。
女は男に違和感を感じつつ、「二人とも黙ってお湯の沸く青い火を見ている」という掌編のような曲、『おまえの家』の淡々とした感じがむしろドラマチックで、ラストの金八先生でお馴染み『世情』は、ちょっとだけくどい。でもとても好きなアルバム。

五枚目の『親愛なる者へ』。実はこれに一番思い入れがある。
中学生といういきものは「ラジオの深夜放送」が大好きなのであって、自分はオールナイト・ニッポン派。
小六で所ジョージのDJ(火曜)を聞いて、「世の中にはこんなに面白い人がいるのか!」と開眼。ちなみに水曜はタモリだった。
で、月曜の中島みゆきの放送を聞いてみたところ、桁違いの躁状態。これがあの暗い歌を歌っている人?とのギャップに驚いた。番組のエンディングに流れる『小石のように』が好きになって、このアルバムを購入。
一曲目の重たくヘヴィな『裸足で走れ』。ヒット曲よりさらに暗い。
「ささくれひとつも作らぬ指なら/握手もどんなに楽だろう」と、偽善を見透かすような鋭い歌詞。
二曲目は失恋酔いどれ女を乗せて走る深夜タクシーの情景『タクシードライバー』で、なんかもう、心掴まれていますた(ちなみにこの時点でタクシーというものに乗った記憶はない)。
マツコ・デラックスもフェイバリットに挙げる名曲。
シンプルだけど「明日は少しましになれ」の一行が効きまくる、『泥海の中から』と続く。
キラーチューンは『狼になりたい』。
「狼になりたい/ただ一度」と繰り返されるが、チンピラがやっていることは、夜明け間際の吉野家でクダを巻いているだけ。なんとかしようと思ってたのに、こんな日に限って朝が早い、らしい。
歌詞をセリフにすると
「みんな、いいことしてやがんのにな・・・いいことしてやがんのにな・・・・・、ビールはまだか!!」。
この、やるせないダメ感は何回聞いてもノックアウトされる。チンピラになったこともないし、吉野屋でクダを巻いたこともないけど、誰しも持つ「「あー畜生、はっちゃけてぇんだよ!」といった苛立ちに切り込んだ最高の一曲。
曲にバラつきのあるアルバムだが、ラストは盛大に盛り上がる『断崖ー親愛なる者へ』。でも具体的に何のことを歌ってるのかは、いまだによくわかりません。
「小石のように」「狼になりたい」「断崖」の後半三連打を一人で飲みながら聴いているとき、自分は泣いちゃってるかもしれないス。

六枚目は聴くためには相応の覚悟がいる『生きていてもいいですか』。
黒ジャケに白抜きで『生きていてもいいですか』。「い、いいと思います!」としか答えられない。
朗々としたダークな曲が多い中、『泣きたい夜に』『キツネ狩りの歌』『蕎麦屋』(本当にそば食ってるだけの歌)のライトさが光る。
「一人だけ泣くとなんだか自分だけいけなく見えすぎる/冗談じゃないわ世の中誰も皆同じくらい悪い」
の一行は、処方箋として効くんじゃないかな、と。
七枚目『臨月』と八枚目『寒水魚』は80年代で、ニューミュージック的な音作りだが、全体的にしっとりしているので、当時流行のダメ感は皆無。
これも後半の三連打ずつがいい。『明日天気になれ』と『傾斜』は「応援歌の人」のイメージをひっくり返すシニカルさたっぷりの名曲。
以降の数枚はエイティーズアレンジが少々耳に痛く、場合によっては古臭くなってしまって残念。曲はいいのになあ。

自分の好きな作品は限定されているけど、今も絶大な支持を集めているというのはすごいことで、それはやはり嗜好の問題。
ナイフのような言葉とは、中島みゆきの歌詞を指す(ベンジーじゃないと思うよ)。
膨大な数の傷歌はもちろんフィクションで、これが実体験に基づいているとしたら、瀬戸内寂聴並みの満身創痍な人生になってしまいます。
つまり匠。名匠、名人芸ってことで「うわっすごいとこ突いてきたっ」と、拝聴すればよい。
人間なんてそんなにがんばれるもんじゃないから、ちょっとネガティブな感覚をうまく料理して、まあ別にいいんじゃないのー?と「いやしうた」として聴き手に届けてくれる、中島みゆきとはそんな存在(だったと思う)。
男の中島みゆきファンってほとんど出合ったことがないけど、野郎が好むには少々繊細すぎるのか、それとも毒気に耐えられないってこと?





満島ひかりバージョンで。

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