アンノウン・シアター@高円寺で『ジギー・スターダスト・ライブ』(73)鑑賞。初見。
まずはデヴィッド・ボウイの「顔」である。当時は体型も本当にほっそいが、顔の輪郭もほっそい。
さらに左右の色が違う眼、ちょっとバンパイアのような口元など、メイクせずとも「素で」どことなくフリーキー(もちろんイケメンということは前提)。
そこに髪をオレンジに染め、眉毛を剃り落としてキャラを作りこんでいるものだから、日本人としては北関東のヤンキーに見えなくもないのだけど、「ギンギラのグリッター衣装を着ればグラムでしょ?」と時流に乗った人々とは根本的に違う。
爬虫類や植物や昆虫など、毒を持った生物は見かけもド派手だったりするが、当時のボウイもそんなお仲間。
さらに山本寛斎デザインによる衣装。「一周してカッコいい」という言葉があるけど、このセンスはまだ半周もしていないんじゃないか。先取り感覚がスキップし過ぎて2017年でもまだ追いついていない。宇宙旅行すら無理なんだから、そりゃそーか。
どうも既視感があると思ったらボウイって、我々世代には特撮番組で見慣れた「悪い宇宙人」のイメージなのだった。
しかもその「悪い宇宙人」を少女たちが最高にセクシーだと崇め、ライブではトリップしているかのように演奏に陶酔している。当時の親たちの眉をひそめさせたナンバーワンだな、コレは。
『スターマン』に「キッズたちを熱狂させよう」「キッズたちにブギーさせよう」という歌詞があるが、まったくそのままの世界観。後にパンクバンドを始める、70年代の不良たちのアイドルだったというのも納得。
『ジギー・スターダスト』から演奏されたのは5曲。バンドのラストライブということでトータル的に選曲されたようだ。特に『あの男を注意しろ』『気のふれた男優』『夜をぶっとばせ』『時間』といった、『アラジン・セイン』からの選曲がいい感じ。
今回は歌詞つき上映。中でも「司令塔が故郷へ帰る途中の宇宙飛行士とずっと連絡を取り続けていたが、最後には回線が切れてしまう」という内容の『スペース・オディティ』にはちょうグッときた。
ボウイとギターのミック・ロンソンが花形すぎて他のメンバーはほとんど映ってないというちょっとかわいそうな編集ではあるけれど、「取替えのきかない」ロックンロール・ショウは盛り上がり、ラストを飾るのは『ロックンロールの自殺者』。
今さらながらすうさい堂、この曲のキメんとこ、「You're rock'n roll suicide」がカッコいいと思って、だじゃれにしたらカッコよくね?と思って、屋号にしてしまったのがすべての間違いなのだった。
編集盤含め膨大なタイトルのデヴィッド・ボウイのアルバム。どれか一枚というと迷わず『THE BEST OF DAVID BOWIE 1969/1974」を推薦。『ジーン・ジニー』に始まり『すべての若き野郎ども』で幕。さらにムード歌謡化が進んだ『プリティエスト・スター』のシングル・バージョン収録が嬉しい。
ファーストを外したのも、グラム期に絞ったのも正解。この人の音楽は多彩過ぎてトータル・ベストだとまとまりがない(さらに追いかけたい人には年代で区切ったベストがあと二枚出てます)。
とか言いつつも『レッツ・ダンス』以降は全然知らなかったりして。「れっ・だんす」で知ったボウイ様であったが、この辺はまあ・・・見事に時代と寝た感じでございますな。
これで『クイーン・ビッチ』が収録されていれば完璧だった。
ベスト盤ってのはあれが入ってないじゃんと、ちょっと舌打ちしたくなる「欠陥盤」のことなんだよなと、いつも思う。
↑コレです。