村田らむ著・『ホームレス大図鑑』(竹書房)、久々に読む。
この手の本に強いすうさい堂というわけで、何回目かの入荷であり(前作「こじき大百科」も人気)、プレミア価格でも割と早くハケる。
いかにもサブカル的な本ではあるのだが、いかにもサブカル的に「こじきってクール!サイコー!」などと安直な読み方をしている連中にはこの本の真価は伝わらないんじゃないかと思う。
山谷から西成まで日本中のホームレス・ホットスポットを取材して周り(聖地巡礼?)、ちゃんと彼らに接して取材をしている。体を駆使して(特に鼻)書き上げた、硬くないルポである。
同情するでもなく、過剰に持ち上げるでもなく、しょうもないない部分にはきっちりツッコミが入る。
「ホームレスに対する敬意がない」と怒る人もいそうだが、そりゃそうだろうって。
リスペクトできるものとできないものがある。やっぱり彼らはリスペクトされちゃいかんだろ、と思う。
結局その辺のゴタゴタで、この本も発禁・回収というかたちになってしまったわけだけど。
その割には山谷の労働者の顔をモノクロで焼いた写真集が名著と言われてたりするのも、わかるようなわかんないような。すぐ、「いのちの尊さ」とか持ち上げるのもどうかと思う。普通の人も一緒だろって。
ダメ人間ほど人生が濃い、みたいな「偏見」にもちょっと辟易していて、映画や小説として取り上げるにはいい対象だろうが、それはあくまで作品としてであってさ。
例えば、ブライアン・ジョーンズとチャーリー・ワッツっていう人が「ローリング・ストーンズ」なるバンドで一緒にプレイしていたわけだけど、一般的にはブライアンが圧倒的にロックというか、ドラマチックな生き様だと思われている。
だけど自分は、チャーリーの人生の方がずっといいな、と思う。
(まあ、ストーンズ一連の馬鹿騒ぎに一切関わらないという神経も、実は尋常じゃないんだけど)
図版がかなり充実している。町や、ドヤ・ダンボールハウスなどの部屋。素のままのホームレスたち。
垢まみれの顔写真を「いのちの尊さ」なる芸術のようなものに持ち上げるより、こちらの写真にこそリアリティがある。
ホームレスたちも堂々と顔を晒して掲載され(もはやこの人たち、名前も戸籍も関係ないのだろう)、その中の一人である「右手首がない80過ぎのじいさん(@上野)」が印象に残った。
すべてを振り切った、妙にすがすがしい目。ただ、特別にデカデカと扱わないのが、本書のカッコよさである。
この本自体が「煮込まれすぎて、伸びきって、しかも量だけは多い炊き出し」のような風情なので、あんまり細かく切り取ってもしょうがないのだ。
そして、
おちゃらけとシリアスを交互に使い分けて綴っていた著者だが、「あとがき」にて、ストレートな言葉をぶつけている。
『心の中でどう思うのも自由ですが、ホームレスの方に対し物理的暴力は振るわないでください。
胸くそ悪いですので。
どうしてもホームレスの方に暴力をふるいたい人は、迷わず自殺してください。』
吉祥寺のクラブ&イベントスペース「FOURTH FLOOR」の主催で行われる、『O!!iDO短編映画祭』なるイベントがありましてhttp://fourthfloor.jp/shortfilm/、自分もこちらの「選考上映会」に急遽参加することになりました。
例によって社長(長髪関西人)の「それええやん!やろうや!」の一言で決まったのですが。
出し物は2006年に同じハコで行われた、【サンデイまさかり(※現・日本ミュージック)御生誕30周年記念特別興行】。
すうさい堂企画のライブなのですが、もともと当店の客として現れた音楽家・「サンデイまさかり」なる人物の三十路の誕生日を祝うと同時に、キープオン童貞30周年もお祝いしよう!というリスペクトに溢れた一日を収めたものです。
3つのチャプターに分かれているのですが、その中で最も面白い「まさかりインタビュー&クリスマスイブ」を上映したら受けるのではなかろうかと。
『クリスマスイブ』とはこのイベントのために急遽作ったバンドで(本人が命名)、「女王様にムチ打たれながら、イマジンを歌いたい」というご本人の要望があったので、自分の知り合いの女王様にオファーしてみたらノリノリでOKして頂き、実現の運びとなりました。というわけでこれは「強制」や「いじめ」ではないので誤解のなきよう。
リアル女王様にムチ責め・ローソク責めを受けて悶絶する(「あち!あちちち!!」)リアル童貞。
まったくこの当時のまさかりさんは神がかってるというか(見ようによってはイギー・ポップみたいである)、当時は「童貞界のジギー・スターダスト」なんて呼んでいました(現在は残念ながら非童貞)。
ちなみにこの映像、今まで門外不出となっておりまして、撮影から6年を経ての初公開となります。なんて書くとちょっとしたカルトムービーみたいですが、実際「日本ミュージック」は、妙なカルト人気を得ているようです。ものすごく小さい範囲ですが。
この選考会を通過すれば、なんと『バウスシアター』で上映されます。出来れば「コンプリート・バージョン」で、ご鑑賞頂きたいところであります。
監督・編集はシーチキン大塚氏。約20分。
恐らく6月22日(金)に同会場にての上映予定です。1ドリンクつきで1000円。併映はホラー作品で調整中とのこと。
詳細はまた追ってお知らせします。監督も本人も来られないようなので、トークの部分は自分が出ると思います。
死ぬほどくだらないけど、こんなにピースフルなライブもそうそうなかろうと自負しております。お暇でしたら是非、足をお運び下さいませ。
■日本ミュージック【私を女優にして下さい】http://www.youtube.com/watch?v=f827WMeihNg
東京ロッカーズのドキュメント『ROCKERS(完全版)』鑑賞。
日本で一番最初にパンク・ムーブメントに呼応したバンドたちではあるのだけど、すべてのバンドが今でも通用する衝撃力を放っているかというと、さにあらず。
突出しているのがツネマツ・マサトシ在籍時「フリクション」の奇跡のライブと、カンフールックでハードコアの元祖「SS」。このふたつは凄い。特にフリクションのファースト『軋轢』は世界に誇るジャパニーズパンクの名盤なので、ぜひ聴いて頂きたい(リマスター盤で!)。
はっきり言って、モサいバンドばっか(そもそもこのシーンのカリスマ・「リザード」の良さが昔からわからない)。服装も髪型も地味だ。普段はカタギでちゃんと働いているようにも見える。
そして、ボーカリスト不在。フリクションのレック以外は声・歌が全然ダメだ。いくらパンクとはいえ、ド素人すぎる。
(この少し後に登場する「アナーキー」の仲野茂が、いかにいいボーカリストであったかということを再確認)
今のバンドのほうが演奏も歌も上達しているのだろうけど、決定的に違うのは、東京ロッカーズたちが放つヒリヒリ感。
モノクロ映像から感じられる「東京アンダーグラウンド」のヒンヤリした空気。それをそのまま纏った「ひゃっこさ」。
居酒屋で打ち上げをしている姿があまり想像できない。楽しいからバンドをやるんじゃなくて、やらなきゃいけないから、日本にもパンクシーンを作らなきゃいけないから、という焦燥は伝わる。
それにしても音楽評論家の鳥井賀句がボーカルをつとめる「ペイン」と、ボスである「S-KEN」はあまりにも、っていうかもう、ド音痴すぎて××××。
http://www.youtube.com/watch?v=IwHDD2DRZo4
今まで権利関係の問題でお蔵入りしていた「ストラングラーズ」の映像が見られるのが、このDVDの白眉である。
彼らも今聴くと微妙で、年齢は高いし、キーボードはいるし、曲もいわゆるパンクのパターンじゃないのだが、ライブからも伝わる高度な暴力性が、パンクのカテゴリーにぴったりはまったのだろう。
実際この人たち、パンクスというよりテロリストのようなルックスである。ファッションでバンドをやってない分、見てくれが実は一番こわい。
ベースのジャン・ジャック・バーネルはカラテの有段者でもあり、パンクシーンの中で最も恐れられた男。ギターのヒュー・コーンウェルはインテリヤクザのような「ひゃっこい」佇まい。ドラマーはモロに武闘派ヤクザ。キーボードはマッドサイエンティスト風。
最盛期の演奏がモノクロで収められている。激シブである。ジャン・ジャックは音楽家なので、シドみたいにベースで殴りかかったりはしない。怒らせたらフィストが飛んでくるのである。
基本的に彼らの音楽は「ひゃっこい」。パンク衰退以降、攻撃性を後退させて「ひゃっこいエレポップ」風に方向転換して生き残ったが(今もやってる・・・)、結構そちらも好きだったりする。
一聴するとラウンジ音楽みたいなんだが、徐々に「ひゃっこさ」が伝わってくる。『ゴールデン・ブラウン』なんて最高である。
http://www.youtube.com/watch?v=GJCHksPBUjE
ふと、「電撃ネットワーク」ってどうしているのだろうと思って検索してみたら、いまだに現役であった。
かつては過激なパフォーマンス集団として世界に名を馳せたのだけど、さすがに勢いもあせてきたように思える。
要するにそれほど過激に見えなくなってきてしまっているんである。今の目線からすれば、もっとすごいことをやっている人びとがいるから。
企画物のAV女優さんたちである。
あの方たちは本当にすごい。もう、なんでもやるしなんでも食うしなんでも浴びる。
一番参ったのが女性の局部に虫やらミミズやらをつっこむ専門レーベルで、たまたまサンプルを見てしまったらこっちが完全に死んだ。ああいうのが一番苦手なんです。ただ、海外の前衛アーチストなんかに見せたら「COOOOOL!!!」なんつって激賞されるかも知れない。
80年代のジャパニーズ・アングラ音楽シーンは急激に過激化して、それは情念の国である日本らしく、「パンク=エログロパフォーマンス」と受け取った、スターリンやじゃがたらなどが血と汚物にまみれて大暴れしていたのであった。といっても、自分たちの世代ではすでに伝説であったが。
スターリンのミチロウすらビビらせたのが京都の『非常階段』で、彼らはノイズ・バンドであってパンクではないのだが、その直接的なパフォーマンスはライブハウス屈指の変態バンドであったのだ。
自分も根っこがアングラなもんで、やはり気になって彼らのCDを中古でちょこちょこ買ったりしているのだが、いかんせん「ノイズ」なもんで、いまいち肌に合わず、お金がなくなると売ってしまうのであるのだが。
しかもこの人たち、まだ現役で活動中である。非常階段結成30周年記念のオフィシャル・ブック『非常階段 A STORY OF KING OF NOISE]』、読了。
そもそもロックには暴力衝動の魅力というものがあり、リーダーのJOJO広重氏はジミヘンなどが行うノイズによるパフォーマンス部分に強く惹かれ、そこだけを突き詰めて演奏するノイズバンド・「非常階段」を結成するにあたったとのことである。
メンバーを通した日本のアングラ音楽史とも読める。好き物にとってはかなり面白いです。
特典でライブDVDも付いているのだがこれがまあ物凄くて、初期のロフトにおける汚物にまみれた乱暴狼藉や、女性が堂々たる立ち小便を見せる大阪でのライブ(これがテレビ放送されたらしい!)など、帯にある「ムチャクチャやってほしいからオレらを呼んだんやろ?」の言葉はハッタリではない。
最後に収められている30周年記念ライブは、パフォーマンスを一切やめ、ドラマー加入の純粋ノイズバンドとして、歌やメロディが一切ないにも関わらず、「雑音」のみで客とコミュニケーションする姿は、なにやら感動的である。
それにしてもJOJO氏の真面目なこと。
関西「いちびり」音楽の立役者であり、ジャパノイズの創始者である彼は、やはり偉人なのだろう。
常人には単なる不快な雑音にしか聴こえないものを、「僕らの音楽」と言い切る姿勢もいいじゃないの。
初めての自分たちのレコードが納品された段ボールを運ぶとき、「あれほど幸福な瞬間はなかった」「あの重さ、あれがあったから、その後もずっとやれてたんやろな」との言葉が印象的。
自分たちの手で作り上げた、という感覚はやはり大きいのだろう。傍目に見ればわけのわからんものでも、作り手にとっては夢と希望、愛情に満ち溢れているのである。
広重氏がどこかで「ノイズは演っている側の人間性が現れてしまうから、演歌と同じ」と言っていたような気がするのだが(すごい発想だなあ)、この辺の意識のブレのなさが「飽きてやめちゃう」ノイジシャンとの違いなんでしょうね。
http://www.youtube.com/verify_age?next_url=/watch%3Fv%3DAsxNahtOGyw
ご帰還されたヂルさんですが、スライド棚の広さと木目が気に入ったらしく、一日の大半をそこで過ごしていらっしゃいます。ぐーぐー寝てます。
行方不明の二ヶ月はこちらも精神が荒廃し酒量は増え、睡眠薬の錠剤をプリッツェルのようにポリポリポリッと喰らい、ヘロインとコカインとスピードの三色丼が主食という毎日でしたが(誰でもいいからつっこんで下さいよ)、なんていうか猫っていいよね。何もせずとも良い。どーにかしてヂルの中に入ってそこからのぞいたらどんなだろー?とかいう、うろおぼえのヒット曲って何だっけ?
自分の場合はだんだん開き直って、「もう勝手にしてりゃいいじゃんかよう」と思っていたのだが、したら、帰ってきた。
なぜか感動の再会というほどではなく、「やっぱしな!」「ちす!」って感じであった。
猫とは言え女子なので(女子とは言え猫!どうどうどう!)、なんとなく日々甘酸っぱいです。
で、頂いたご祝儀でワクチンを受けさせ、シルバーのネームプレートを付け、探知機「ロケーター」を装着し(どちらも寄贈品ということがこの猫のカリスマ性を物語っていると思う)、『サイバーヂル・ファンタスティックプラスティックマシーン・ちゃろんぷろっぷスペシャル・リプライズ!』としてリニューアルした会長は、棚の上でぐーぐー寝てます。
清掃局等からの連絡はなかったので、事故に遭っていることは恐らくあるまいと、むしろ飼われているか保護されているかではないかと考えていて、このまま人んちの猫になるのであればまあそれもしゃあないかと思っていたのだが、ひょんなことで連絡がついて、元の鞘におさまったという感じであります。
現在迷い猫を探している方に関しては、自分の足で探すより、ポスター貼りやポスティングを徹底して連絡を待った方が有益なんじゃないかと思います(足での捜索は肉体的にもかなり疲労するし、確率的には低いんじゃないかと)。
自分の場合もまさかの地理から連絡が来ました。「等間隔で」かなり遠距離までそれを続けると効果的なんじゃないかなあと、今になって思います。民家がまばらな土地に関しては、ちょっとわかりませんが。
あと、「外れづらい名札」は絶対必要ですね。これに関しては反省。
警察や保護センターの届出は、隣の市や区まで登録した方が良いです。
どっちにしても答えはひとつなのですが、事故の場合の連絡を徹底するとして、それがなければどこかで生きている確率が高いのではないでしょうか。
猫が逃げるのはその瞬間に本能のスイッチが入っちゃったってことなので、「自分が悪い」とは思わない方が良いと思う。
誰も悪くないです。
あとねー、吉祥寺の人って優しいですよ。気持ちに余裕があるのか知れないけど。
悪質な電話もなかったし。それは感じましたなあ。
もろもろ含めていろいろお世話になりましたです。ありがとうございます。