東京ロッカーズのドキュメント『ROCKERS(完全版)』鑑賞。
日本で一番最初にパンク・ムーブメントに呼応したバンドたちではあるのだけど、すべてのバンドが今でも通用する衝撃力を放っているかというと、さにあらず。
突出しているのがツネマツ・マサトシ在籍時「フリクション」の奇跡のライブと、カンフールックでハードコアの元祖「SS」。このふたつは凄い。特にフリクションのファースト『軋轢』は世界に誇るジャパニーズパンクの名盤なので、ぜひ聴いて頂きたい(リマスター盤で!)。
はっきり言って、モサいバンドばっか(そもそもこのシーンのカリスマ・「リザード」の良さが昔からわからない)。服装も髪型も地味だ。普段はカタギでちゃんと働いているようにも見える。
そして、ボーカリスト不在。フリクションのレック以外は声・歌が全然ダメだ。いくらパンクとはいえ、ド素人すぎる。
(この少し後に登場する「アナーキー」の仲野茂が、いかにいいボーカリストであったかということを再確認)
今のバンドのほうが演奏も歌も上達しているのだろうけど、決定的に違うのは、東京ロッカーズたちが放つヒリヒリ感。
モノクロ映像から感じられる「東京アンダーグラウンド」のヒンヤリした空気。それをそのまま纏った「ひゃっこさ」。
居酒屋で打ち上げをしている姿があまり想像できない。楽しいからバンドをやるんじゃなくて、やらなきゃいけないから、日本にもパンクシーンを作らなきゃいけないから、という焦燥は伝わる。
それにしても音楽評論家の鳥井賀句がボーカルをつとめる「ペイン」と、ボスである「S-KEN」はあまりにも、っていうかもう、ド音痴すぎて××××。
http://www.youtube.com/watch?v=IwHDD2DRZo4
今まで権利関係の問題でお蔵入りしていた「ストラングラーズ」の映像が見られるのが、このDVDの白眉である。
彼らも今聴くと微妙で、年齢は高いし、キーボードはいるし、曲もいわゆるパンクのパターンじゃないのだが、ライブからも伝わる高度な暴力性が、パンクのカテゴリーにぴったりはまったのだろう。
実際この人たち、パンクスというよりテロリストのようなルックスである。ファッションでバンドをやってない分、見てくれが実は一番こわい。
ベースのジャン・ジャック・バーネルはカラテの有段者でもあり、パンクシーンの中で最も恐れられた男。ギターのヒュー・コーンウェルはインテリヤクザのような「ひゃっこい」佇まい。ドラマーはモロに武闘派ヤクザ。キーボードはマッドサイエンティスト風。
最盛期の演奏がモノクロで収められている。激シブである。ジャン・ジャックは音楽家なので、シドみたいにベースで殴りかかったりはしない。怒らせたらフィストが飛んでくるのである。
基本的に彼らの音楽は「ひゃっこい」。パンク衰退以降、攻撃性を後退させて「ひゃっこいエレポップ」風に方向転換して生き残ったが(今もやってる・・・)、結構そちらも好きだったりする。
一聴するとラウンジ音楽みたいなんだが、徐々に「ひゃっこさ」が伝わってくる。『ゴールデン・ブラウン』なんて最高である。
http://www.youtube.com/watch?v=GJCHksPBUjE