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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

【すうさい堂最新情報/極私的ツイッタァ】 ■■ 2017年10月13日(金)13時より移転オープンしました。■吉祥寺本町1-29-5 サンスクエア吉祥寺201 ■0422-27-2549 ■金/土/日/祝日のみ営業

「ハピネス」でしあわせの意味を知ろう



ここまで底意地の悪い表現は久々に見た気がする。映画『ハピネス』(98)である。
かなり淡々としているので初見ではよくわからないかも知れない。二回観てああなるほどと思い、三回目にはどす黒い笑いがこみ上げてくる。レンタル店によってはコメディの棚に置かれているようなのだが、うっかり鑑賞すると大変なことになります。水道水に劇薬を混入させたような作品。
基本的には家族の話。両親と三姉妹。長女は精神科医の旦那と三児の母。次女は美人の流行作家。三女は普通のOLだが作曲家になりたいというひじょーにファジーな夢を持つ。
三女はおっさんの彼氏にレストランで別れを切り出す。いい感じにリードしていると感傷に浸っていたら、突如ぶち切れた彼氏から「僕はシャンパンだが君はクソだ!」と逆襲されてへこむ。いきなり最高ですね。
長女と次女はリア充なので三女を内心バカにしている。っていうかその気持ちがもろに言葉に出ちゃったりして。でも一見姉妹は仲がいい。
父親は母親にいきなり別居してくれと言い出している。で、結局、自分の女房とさほど変わらないようなおばさんと浮気。
次女に想いをよせるマンションの隣人がいる。が、コクることもままならないので、毎晩あちこちにイタズラ電話をかけては自家発電。この役を演じるフィリップ・シーモア・ホフマンの「すぐ近所にいるド変態」という雰囲気が最高。うおー名優じゃん、と思ったら数年前にドラッグでお亡くなりになっていたんですね。
フィリップに恋する同じマンションに住む太ったおばさん。この人の正体がとんでもない。
長女は「私が一番ハピネス!」と信じているのだが、実は精神科医の旦那はガチの少年愛の人なのであった。
11才の長男に「僕はまだイッたことがないんだ」と悩みを相談されると「パパがやって見せようか?」と答えてるあたりからどうかしてるんだけど、いよいよ歯止めが利かなくなり息子の同級生をレイプしてしまう。
この事件が明るみに出たあとの親子の対話が最悪(というか最高)。
長男が泣きながら「僕のことも犯したかった?」と聞くと父親は「オナニーで我慢する」と答える。
この辺のくだりが一部から「史上最低の映画」と呼ばれる所以なのだろう。正直、私は爆笑してしまいましたが。
今日の文章は大変下品な単語ばかりで申し分けないのですが、だってしょうがない、そういう内容なんだもん。ついでに映画史上に残る名ラストシーンのことも書く。
事件のあと、家族が集まって食事会を開いている。長男がベランダから下を覗くとビキニの若いお姉さんが日光浴。長男はたまらなくなって手すりに発射。せんずりからの手すり。申し訳ない!下品で!でも削除しな~い。なぜなら『ハピネス』に当てられたから。
それをペットの犬がペロペロ。そのまま飼い主の長女のところに行ってマウス・トゥ・マウス。「おお、クッキー(はぁと)」なんつってママンは喜んでいる(書くのも憚られることではありますが、犬との間接キスで息子のザーメンを飲んでる)。すっげえ悪意。本作のテーマはここに凝縮されていると言ってもいい。
レイプ場面が直接描かれていたりするわけじゃないが、何度も書いてしまうけど、監督トッド・ソロンズの悪意が半端じゃない。
ホラーだったら「全身の皮をはがされて無理矢理臨死体験させられる」とか「いい具合にでかいガラス板がトラックから飛んできて首チョンパ」とか「インディーズ宗教にはまったおっさんが夜な夜な女性を殺しては人体パーツをつゆだくでお持ち帰り」とか、要するにモロに「嘘」な分、罪がない気がする(ここで元ネタ当てクイズ。それぞれ何の作品でしょう?)。
描かないことで、つい「あるある~」とか思ってしまうのだ。

誰もが幸せを求めるが、誰も幸せにならない。あるいは「幸せだと思ってたら実は地獄でした」。
最後に長男が「僕、イケたよ」と微笑む。結局いちばん幸せなのは、精通の快感を知った彼だったりして。
映画のエンドロールでよくある手法が、登場人物たちのその後だ。「のち、結婚し、二児の母」とか。
ところが『ハピネス』はそんなに優しくない。ザックリとおしまい。どんな状況だろうと生きてる限り、勝手に人生は続いていくということなのだろう。
他にも細かくてブラックなギャグがあちこちにある。「幸せって何だっけ?」と思うたび、観返したくなる大大傑作である。

さてまだ終わらない。なぜこの作品に深い感動を覚えたかと言うと、自分の周りにあまりにも『ハピネス』的な人々が多かったからです。

■三十路過ぎて風俗にはまり親から車を買えと貰った三百万をすべて風俗にぶっこむ。お気に入りデリヘル嬢を指名して自分はホテルで全裸で待機。そしてギターを弾き自らの面妖なオリジナル曲を披露する(インストアライブ)。で、エッチは無し。
■彼がよく指名していた風俗嬢。演技経験ゼロにもかかわらずオーディションを突破し、シネコンでも上映された某作品に女優として出演。それ一本で映画界を去るがその後、あ、これ以上は角が立つので書けない。
■もともと「裏っぽい」人ではあったが(シャブで逮捕暦あり)、某マンガの影響で安定のドカチン稼業を捨てる。のちに家も仕事もなくなり何故か「西へ行きます・・・・」と自己完結して(彼の東京ラストナイトは旧すうさい堂でした)勝手に大阪の西成まで堕ちる。現在は消息不明。
■もともと古着のバイヤーだったが、海外での買い付けの際にドラッグを覚えてダメダメな感じで帰国。のちにバツイチ子持ちの同級生といい仲になり結婚の約束までするが謎の破綻(たぶんDV)。現在は消息不明。
■もとバンドマンのアダルトビデオショップ店長。パンキッシュなつくりのAVファンジンを発行し(自分も参加)好きなようにやっているように見えたが、突如店が閉店。書き手たちの原稿を受け取ったままドロンして消息不明。
■どぎついメイクとロリータファッションがイタすぎたアラフォーのメンヘル主婦。旦那は劇団俳優だったが現在は離婚。大変申し訳ないが「いろいろ耐えかねる」ため出禁とさせて頂きました。音楽もやっているので現在もあちこちのライブ会場に出没中。
■兄、妹がいる三兄弟の次男。この兄弟間ではまったく会話というものをせず、家族が揃ってもすべて両親を通して話をするのだという。数年前お兄さんが結婚。結婚式に妹さんは欠席。
彼は硬い仕事をしているが本質はサブカル。ある日行きつけの「極左書店」を覗くと皮ジャンのおっさんがいる。と思ったら自分の直属上司だった!上司はパンタや遠藤ミチロウのファンであり意気投合。
釣りバカ日誌における「浜ちゃんとスーさん」の関係に近いものを築いているらしい。

とりあえずこの辺で。おあとがよろしいようで。
(クイズのこたえ。『マーターズ』『オーメン』『血の祝祭日』)
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恐るべし韓国ゾンビ



今年の映画初めは早稲田松竹@高田馬場。『新感染 ファイナル・エクスプレス』『ソウル・ステーション/パンデミック』という韓国ゾンビ映画二本立て。
最近、韓国映画にはまっている。「おばさんよろこび金撒き散らす」方面ではなく、いわゆる血みどろ暴力映画。近作の邦画では『アウトレイジ』シリーズがバイオレンス表現の最高峰だと思うのだが、韓国映画はなんと「あれくらいで普通」なんである。さらに極悪非道なトッピングを振りかけた作品がゴロゴロしている。
まだ十本くらいしか観ていないので掘り甲斐がある。ヤング風に言うなら「マジ卍」です。
そのうちつらつらとまとめようと思っているのですが(このブログは自分の頭の中を整理するためにある)、とりあえずヨン・サンホという監督のゾンビ映画が素晴らしく面白かったのである。
ゾンビ映画というとジョージ・A・ロメロに連なる本流もの、パロディや凝った設定によるギミックもの、ひたすらグロい俗悪ものの三つに分けられると思う。
ちなみに俗悪ゾンビはダメだとは言ってない。それらも映画でしか出来ない表現なので、それはそれでアリ。
代表格はイタリアのルチオ・フルチ。御大の「だいたいこの辺がおっかないのだろ?」という当たりをつけるセンスが観客の感性の斜め上くらいに行ってしまっているので、やはりそれも才能。
御大は仕事としてホラーやスリラーやマカロニ・ウェスタンなどを作る職人監督で、「出来るもんなら何でも作るよ」という深夜食堂みたいな人なんである。完全に破綻してる作風も含めて最強。
で、『新感染』なのだが、もはや散々使いまわされているゾンビを扱って「まだこんなに面白い映画が出来るのか!」という感動がある。
面白いゾンビ映画というとパロディ系が多くなってしまう昨今だけど、これは直球。

離婚した母親の元へ娘と共に特急列車で向かう父親。そこに一匹のゾンビを乗せてしまったことから始まる、お馴染みの感染パニック。
しかし「密閉された空間における大殺戮映画」はいつの時代も観ていて楽しい。
父親はファウンドマネージャーで、それだけでもあこぎ感は充分なのだが、とにかく自分と娘だけは助かろうとする。そこに身重の奥さんを連れたブルーワーカーのおっさんが絡む。さらに若い野球チームも絡む。
バス会社の社長も自分だけは助かろうとする。もちろんみんな助かりたいので、後々ドロドロの人間模様に発展。
ロメロ版ゾンビは豪華なスーパーマーケット篭城生活も描いたが、こちらは止まらない列車なので、ひたすら余裕がない。命からがら安全な車両へたどり着いた父親たちに向かってバスの社長は「こいつらは感染しているかも知れない!隔離しろ!」と言う。一見非道だが、実は冷静な判断であったりもするのだ。
で、一応は安定を確保した車両ではあったのだけれど、、うわーこれ以上は書けないよう。
父親、おっさん、ヤング野球選手が結託してゾンビ列車からサバイブしていくのが見所だが、おっさんの武器がなんと「素手」なんである。豪腕!この辺が韓国。
そして本作のゾンビ軍団は全力疾走で襲ってくる。昔は「走るゾンビなんて」と思っていたけど、それもまあまあスタンダードになると、今更ブーたれるのも無粋というか、問題は「面白いか面白くないか」だ。
この手の映画としてはグロさも控えめだし、あっと思わせるラストも含め、極上のエンターティメント。
韓国初のゾンビ映画とのこと。でもこれが最高傑作の可能性高し。




『ソウル・ステーション』はアニメーションでゾンビ・パニックを描く。『新感染』の前日談。
アニメでゾンビってどうなんだ?という疑問符は完全に吹っ飛ぶ。その辺の実写ゾンビ映画を軽く超えてます。
ヒモの彼氏とケンカ別れした主人公の女子が夜をさまよっている時にゾンビ騒動が起こり、たまたま一緒になったホームレスとどこまでも逃げて行く。それを探す女子の父親とヒモ彼氏。
粗筋はそんな感じ。しかし、ホームレスやデモ隊がどこまでも追いつめられる荒涼としたムードは本当に陰鬱だし、まさかのバッドエンド!である。「あったかさ」を感じられる『新感染』とは真逆の作品と言っていいと思う。
二本セットの鑑賞をおすすめしたい。どっちが上とか下ではない。


魂の口パク・完全燃焼



あ欅ましておめでとうございます。今年もよろ坂お願いします。
私事としては今年も引き続き「のんへんたらり」と開けます。というか私の事なんてどうでもいいのです。
紅白が大変だったのである。『不協和音』を見て「やっぱ欅坂かっけー」と納得して高円寺に飲みにいってしまったのだが、その後にメンバー三人が過呼吸で倒れる。ネットやスポーツ誌などにバーッと載ったのでご存知かと思う。
アンチにはずっと「口パク」と叩かれ続けられているが、これだけ「魂のこもった口パク」をやってのけたのはさすがだ。この上さらにバカにする奴らはもはや人間じゃないので放っておくことに致しましょう。
だいたい「まともに息が出来てるのか?」と思うくらい激しいダンスなのに、さらに生歌でうたえってほうが頭がおかしい。
年末の有線大賞での平手ちゃんは「態度が悪い」と叩かれ、平井堅とのコラボ・パフォーマンスは絶賛され、翌日の番組でまた叩かれ、紅白の印象度では欅がダントツ一位とか(曲のラストに平手ちゃんが一瞬、ものすごく不敵にニヤリと笑うのだけど、まるで悪魔みたいなカッコよさであった)。
これはもはや伝説を更新中。我々はいま、伝説をリアルタイムで見ているといっていい。
『村八分』のチャー坊は気が乗らないとライブでも歌わないとか途中で帰ったりしていたらしいが、もうあの子は「そっち側」に行っちゃったっぽい。

自分は欅坂46というグループをかなり俯瞰で見ていて(ちなみに正統派アイドルの二次団体「けやき坂46」にはほとんど興味がない)、極端に言うと『仁義なき戦い』シリーズを追っているような感じか?
平手友梨奈のフロントありき、ということは否定しようがないんだけど、あれだけの人数でフォーメーションをビシッと決めて踊られるとやはり圧巻なんである。
曲ごとに表情が違うので、ちょっとしたミュージカルを見ているような気分になる。
で、年末には今泉佑唯さんが二度目の休業。その直前に出た雑誌のインタビューが「平手と私は目指している場所が違う」「誰も喜ばないだろうけどセンターになりたい」etcと、かなり赤裸々な記事。
そういうアレがあって、あれなのかなあと、俯瞰で見る者としては思いが巡ってしまうのだった。
しかし欅坂内フォークデュオ『ゆいちゃんず』も大好きなので、残念なことであるなあ。

「秋元康は日本の文化をダメにした」という定石の言い方がある。実際に最近もそういう話を振られたのだが、正確には「秋元康には功罪がある」だ。もう前述みたいな紋切り型の物言いはいい加減やめて自分の頭で考えましょうよ。
去年のレコード大賞を見て感じたことは、ほとんどのミュージシャンには「功も罪もなんもない」ということだ。今は売れてるがあとはあっさりと消えるだけ。和製マイケル・ジャクソンって、何なん?
最もキラキラして華やかなのは楽曲も含め、AKB、乃木坂(レコ大おめでとうございます)、欅坂のアイドルたちだった。
彼女たちの存在がなければJポップなんて、本当に華がなくて、しょぼい。その証拠にやたら往年の大物に時間を割いていた。そうしないと見られたもんじゃないからだ(しかしピンクレディー再結成は迫力であった。あの振り切り方は昭和ド根性の賜物)。
おニャン子クラブだって、立派な80年代の文化だと思う。ヨーロッパのインディーズ映画が好きですと言われても「結構なご趣味ですな」としか返せないが、おニャン子に「命を救われた」人々は日本中に巨万といる。

以前の自分のブログを読むと『不協和音』が出たあとのテレビを見て恐れをなし、「このままだとてちが本当につぶれる」「これから本当の不協和音がおこる」とか書いていて、それが見事に当たった。
一ヵ月後、グループがどうなっているのかわからない、というリアルなスリリングさがある。結末もみてみたいと思う。いやーながいきはするものです。




泥沼で踊るところはカットか!最新カッコいい系欅坂『避雷針』

最低男の最悪美学



ATG制作の『TATTOO〈刺青〉あり』(82・監督/高橋伴明)を久々に観た。
やはり最も印象に残っていたシーンは昔と同じで、えーっとバカみたいだけど書いちゃっていいすか?、主演の宇崎竜童が一度実家に逃げた嫁(関根恵子)を連れ戻し、食事させるシーンだ。
「栄養あんねんから」と、レバと納豆となんだかんだをバターで炒めた不気味なものを出す。くっそ不味そうである。嫁はほぼ箸をつけられない。
その後、帰宅した関根は袋のチキンラーメンを作ろうとするが、宇崎が「栄養がない!」と、もぎとってしまう。
関根はそれを奪い返し「うちはこれが食べたいんや!」と床に腹ばいになって茹でる前のチキンラーメンをぼりぼり食う。
「うちが稼いだ金や。なに食べようと勝手やろ(正論でございます)」と吐き捨てると、切れた宇崎が関根をボコボコにする、というかなりしょうもない展開。
このボタンの掛け違い。よかれと思ってやってるのに結果は最悪。主人公の人生を象徴しているように見える。
彼の名は竹田明夫。「梅川昭美」という実在の人物がモデル。
日本の犯罪史上、恐らく最も凶悪な銀行強盗である。
以前にもブックレビューでここに書いてます。お暇な方はどうぞ。

http://suicidou.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AC/%E5%9C%B0%E7%8D%84%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%83%E3%82%B3%E3%83%9E%E3%83%B3

この作品の特徴は、制作に関わった人々すべてが梅川昭美に対してかなり「寄せている」ということ。
少年期から事件までの彼の人生をフィクション交えつつ丁寧に描いている。明らかに何がしかのシンパシーを感じている風だ。プロデューサーは井筒和幸なんですね。
タイトルは竹田が胸に入れている薔薇と虎のタトゥーのことで、冒頭に「こわ(く)見えたら何でもええんや!」と、刺青を彫るシーンがある。
(刺青師を演じるのは泉谷しげるで、他にも原田芳雄、植木等、ポール牧などゲスト出演が豪華。主題歌は内田裕也の『雨の殺人者』。思いっきり、寄せてるなあ)
で、これをチラ見させ、借金取り立てなどのこわい系の仕事を請合う。しかしこの程度の墨でビビらせることが可能だったのだから、平和な時代でもあります。
母親は息子を溺愛している。「30は男のけじめ」と固定観念を植え付ける。
息子は母親思いで(マザコンと言ってもいい)、母の教えどおりに30で「でかいこと」をやるのだが、それがかなりムチャな銀行強盗だった。
本人にとっては「でかいことをやる」のが最大の目的で、結果はどういでもいいと思ってるような節がある。
こう書くとあれですが彼にとっては「自己表現」だったのだろうか。少なくとも制作陣は「その意志」に共感する部分があったのではなかろうか。
事件そのものはカットされている。やらかした行為があまりにも残酷でえげつないからか。そこまで描くと「悲劇のヒーロー」じゃなくなるからか。
母親思い+大志ありという図式に「銀行強盗」をかけたら、すべてがゼロになった。あ、マイナスか。

関根が新しい男を宇崎に紹介するシーンがある。男は「鳴海」と名乗る完全なヤクザで「そのうちでかいことやったる。新聞でおれの名前を見つけたら友達って言ってええで(だったと思う)」と宇崎に告げる。
多分モデルは山口組の抗争で有名なヒットマン「鳴海清」じゃないだろうか。この二人が出会ったというのは映画的な演出なんだろうけど。
そして宇崎はセフレみたいなつきあいの女の子にまったく同じセリフを吐く。きっと「カッコええな~」とか思っちゃったのだろう。
ラストは夜行列車のプラットホームに、息子の遺骨を抱えた年老いた母親が降りる。
そして、事件のときに気取って身につけていた息子の形見である「ハット」をかぶる。そこに流れるのが宇崎竜童歌唱による『ハッシャバイ・シーガル』。
凶悪犯罪者を完全に美化しすぎである。が、そこは映画なので。めっちゃ感動します。
女性はまったく受け付けないだろうと思います。男泣き限定作品。


滋養としてのビッグ・リボウスキ



今年、地味にはまったものとして「洋画コメディ」がある。DVDスルーがやたら多くて日本人にとっては一番馴染みがない上、パッケージやタイトルを見ても煽りが少ないので、それが面白いのかどうかわからんのである。
コメディ棚の半数近くはラブコメ、という偏見もある。こちとら、一本筋の通った、頭のネジが何本か抜けた、ビッとしたバカが観たいわけで、恋愛でほわんほわんになった男女なんてどうでもよろしい。
大傑作『スーパー!』で感動したあたりから手を付け始め、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』『ズーランダー』『ネイバーズ』『ジャッカス・ザ・ムービー』『クソジジイのアメリカ横断チン道中』『チームアメリカ★ワールドポリス』『サウスパーク無修正版』『シリアル・ママ』『バス男』『俺たちニュースキャスター』『ホットファズ』『宇宙人ポール』『ゾンビ処刑人』等々(ここにあげたのはすべて名作)、ちょいちょいつまんでいる。
近作では大学の新入生がただ遊んでるだけという驚愕の内容『エブリバディ・ウォンツ・サム!』がある。ああ、まだソフト化されていないようですが、『俺たちポップスター』は恐らく今年最強のバカ映画。
これらに出ているバカたちは最高。しかしこのバカを堪能するためには自分のアンテナを張っていないといけない。ぼうっと観ているとバカの洪水に流されてしまう。日本のように親切な「ツッコミという防波堤」がないからである。
(まあ本当に好きなのはコメディ棚にないコメディ、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『ペイン&ゲイン-史上最低の一攫千金』、イーライ・ロスの『ノック・ノック』だったりする)
で、遅ればせながらコーエン兄弟の『ビッグ・リボウスキ』(98)、これ、大好きだ。

通称「デュード」と名乗る主人公のリボウスキはある晩、暴漢の襲撃を受け、カーペットにシッコされる。
彼らは大金持ちのビッグ・リボウスキと勘違いしていて、ビッグの嫁さんの借金を取り立てに来た。
翌日、デュードは「敷き物をダメにされた」とビッグの家に抗議に行くのだが追い返される(この後彼はなにかにつけて「敷き物が~」「敷き物が~」と繰り返している)。
その後ビッグの妻が誘拐され、彼はデュードに身代金の引渡し役を頼むことになる。
主人公デュードは無職の無精者(ファッションセンスが最高)だが、彼が一番バカかというとそうではなく、更なるバカがうじゃうじゃ登場する。というか、デュードが人間的には一番「まとも」なんである。
特にベトナム帰りのデブ・ウォルターのバカっぷりがすごい。こいつがいらんことをするため、デュードはどんどん窮地に陥っていく。
いちいちコメディのギャグを拾っていくのも無粋なんだがひとつだけ、ラスト近くで死んでしまった友人の遺灰を受け取るところが最高。
壷が高くて買えない。しょーがないからコーヒーショップの缶に入れてそれを引き取り(ぶはは)、盛大に撒くのだが逆風の海風が吹いてデュードは全身灰かぶり、という不謹慎なギャグに爆笑した。
この映画のアクセントはボーリング。デュードたちは怠け者でバカだったりするが、ボーリングだけはストイックに真面目なのだ。そしてボーリングをデフォルメした世にもバカバカしい「受精シーン」は必見。
音楽の使い方もかっこいい。音楽に目配せできる監督の作品はだいたいとんがっている。
恐らくユダヤ的にはいろいろな含みがあるのだろうけど、それが一切わからなくても面白い。なぜなら、パーフェクトなバカ映画だからである。
コーエン兄弟が得意とする、「勘違いが勘違いを呼んで事態がますますひどくなる犯罪劇」をコメディに仕上げたものだが、寅さんにも森繁先生にも興味がない自分にとっては、年末に観る映画としてはなかなかハートウォームであった。

バカ映画をなめてはいけない。なぜなら邦画においてこれらに匹敵する「バカ映画」を何一つ思いつかないから。北野武も松本人志も大惨敗であった。
キャストを厳選し、頭を回転させて最高のくだらないギャグをひねり出すのが「バカ映画」なのであって、そう考えると日本ではほぼ無理なんだろう。
真面目な話、バカ映画は心の滋養である。


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すうさい堂主人
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男性
職業:
古本すうさい堂
自己紹介:
自称「吉祥寺の盲腸」、すうさい堂のだらだらした日常の綴り。
本を読むという行為は隠微なこと、悪いことを覚えるためのモノ。

180-0004
武蔵野市吉祥寺本町1-29-5
サンスクエア吉祥寺201

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