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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

すうさい堂は閉店しました。17年間ありがとうございました。

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お知らせ

すうさい堂は今週より、金・土・日・祝日のみの営業(13~20時)となります。
週末古本屋です。「ももクロみたい」と思って頂ければ幸いです。よろしくお願いします。

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太陽と悪魔、「ビー・デビル」



シバラマー!んー、なんか違う。しばらまー!←ひらがなのほうがかわいいな。
「しばらま」とは韓国語で「FUCK OFF」に相当する言葉である。ファックはもう使われすぎた。ナウなヤングの諸君のハートにインするのはこれからは「しばらまー!」ではないか。この言葉で世のゴキブリ野郎をダメージ!
つまり毎週韓国映画を観ているのだけど、ちゃんと覚えた言葉はこれだけっていう。ほんと、どうしょうもないしばらま人間です。
韓国にもラブコメやメロドラマがあるということなんですが、自分が愛好するのは「しばらま度が高い」ものである。だいぶ溜まってきたのでそろそろ頭の整理をせんといかんのだ。
『殺人の追憶』(監督/ポン・ジュノ・2003)は警察のしばらま度を描いた作品。「警察内部の腐敗を告発する!」というよりは、徹底的に警察や刑事をバカにしている。
実際にあった女性の連続殺人事件をモデルにしているらしいが、主人公の刑事(ソン・ガンホ。ソン様)はとにかく犯人を捏造することに夢中。
テキトーな報告を真に受けて知的障害者の青年をしょっぴく。相方の刑事はさらにキれやすく、特技は跳び蹴り(とびげりデカ)。
なんとか彼を犯人に仕立てようと二人でがんばっていたところ、ソウルから切れ者の刑事が赴任。彼の推理で青年はシロとされ釈放。
面白くないのはソン様で、ソウル刑事に向かって「お前、デカのくせに頭なんか使ってんじゃねえよ」。ありえねぇ。
捜査は振り出しに戻り、ソン様は「現場に陰毛が落ちていない。きっと犯人はパイパンです」。
とびげりデカも「それならば近くにがあるので当たってみましょう」と、パイパンの意味すらもあさっての方向へ。しかもソン様は銭湯に入り浸り一人一人の股間をチェック(バカ)。
殺人事件をテーマとしながらも、映画の半分はこんな感じで、ブラックコメディと言っても差し支えない。犯人だと思ったら単に現場でオナニーするのが好きな変態だったりとか。
ところが後半、犯人らしき男が登場したあたりでムードが一変してミステリー仕立てになる。
なのですが、理詰めで映画を読み解いていくタイプのミステリーファンが鑑賞すると「はあ?」となりそうなので書いてしまうけど、結局犯人は不明のままなのです。そして、さらなるバッドエンドが待っている。




さて韓国バイオレンス映画の白眉、『ビー・デビル』(2010)。
「恨流」でタイトルに「デビル」がついてるときた日にゃ、観ないわけにはいかんのだ。ジャケットやポスターの「鎌を振り上げた女性のシルエット」が大変カッコいい。
主人公は二人いて、一人はソウルの銀行員・ヘヴォン。彼女はレイプ事件の目撃者だが、危うきには近寄らずで、証言について積極的ではない。仕事場でのイライラもピークに達し、休暇を取らされ故郷の離れ島へ向かう。
待っていたのは幼馴染のボンナム。結婚して10才くらいの娘もいるが、旦那は白昼堂々と女を買うわ、姑はその行為も認めるわ、数人しかいない島民(ババアとクズ男)から、人としての尊厳を踏みつけ続けられる生活をしている。彼女は島を出たことがないので、それが三十年。しかも旦那は娘と近親相姦している。
ボンナムはヘヴォンが帰ってきてくれたことは嬉しいのだが、腹を決めて「自分と子供をソウルへ連れて行ってくれ」と頼む。が、島民たちに見つかり、旦那がはずみで娘を死なせてしまう。
結局検察もうやむやになり、ヘヴォンも「寝ていたからわからない」と証言しない。
しばらくボンナムは娘の墓土を足でなめしたり(庭に穴掘って埋めただけ)農作業に従事している。
が、作業の合間に水をぐびぐびと飲んで一言、「太陽を見ていたら答えがわかった」。
直後に始まる島民への怒りのリベンジ・大虐殺。つまり「自分のやるべきことはこのしばらまな奴らを全員ぶち殺すこと」と悟る。正解である。
このロス時間について、監督のチャン・チョルスは特典インタビューで「復讐のタイミングを遅らせたのは、それがリアルだから。娘が殺されたすぐ後に行動を起こすのはリアリティがない」と答えている。
姑を殺すシーンは、ほとんどブラックジョーク。この監督さんは日本映画が好きで留学もしているのだが、吉本新喜劇見たでしょ?と言いたくなるくらい、池野めだかチックな死にざまであった。ははは。
さらに旦那を追いつめるボンナム。しかも、かなりマヌケな展開でありつつも、ザクザク切りつけるような残酷な殺しを見せつける。
「こいつにはカッコつけて死なせることも許さん!」という、観るもの誰もが思っていることを実行してくれるので、最高だ。
さて本作はまだまだ一波乱あり、最終的に観客は真摯なメッセージを受け取ることになる。実にちゃんとした作品である。
まあ悪魔とかデビルとかがタイトルについてる作品の全部が面白いわけではないのだが、これは「大当たりデビル」でした。

恨パイヤ、「渇き」



韓流と書いて「はんりゅう」と読むのだけど、自分の場合は「恨流」である。とにかくネガティブな感情を思い切りぶつけてくるものだから、観た韓国映画には外れがない。ゆえにダメな人にはまったくダメで好き嫌いが激しく分かれると思う。「暴力(バイオレンス)」や「愛(ラブ)」はあっても(愛ゆえの暴力だったりする)「平和(ピース)」がない。
ちなみに韓国映画を「まあまあだった」とか言ってる人は頭がボケてます。
一番の重鎮はキム・ギドクってことになるのかも知れないけど、個人的にはかなり重い。といっても『メビウス』しか観ていないのだが、これは「登場人物がコチンを切ったり切られたりする無言劇」という大変イカれた内容なので、この人の作品はもうちょい後回しでいいかなと思ってしまったのだった。
好みはパク・チャヌク作品なのかなと思う。「復讐三部作」で知られる監督だが、新参者がなんだかんだ言うの今さらどうかと思うのでザックリひとこと。
『復讐者に憐れみを(2002)』。あっちもこっちも復讐バトルロワイヤル!全員惨殺!
『オールドボーイ(2003)』。その口あんぐりな内容にタランティーノから江頭2:50まで衝撃を与える!
『親切なクムジャさん(2005)』。これぞ恨流!「アイツ」を捕まえてからが長い。そう簡単には殺さない!
しかもこの人は子供を殺すような描写も平気で入れてくる残酷な作風だが、ちょいちょいギャグもぶっこんでくるからタチが悪い(そこがすき)。ターゲットを処刑した後に全員が「お疲れ様でしたー」って感じでケーキ食ったりとか。
それを端的に表しているのがオムニバスの『美しい夜、残酷な朝』の一編「cut」。
映画監督の家に闖入者が入り込み、ピアニストである奥さんを動けないように拘束している。彼は監督の映画のエキストラ参加者。それを分からせるために、いきなりミュージカルが始まったりする。
で、見知らぬ子供を連れ込んで映画監督に「その子供を殺せ。さもないと奥さんの指を一本ずつ切断する」と宣言。悪夢のような短編。しかもブラックコメディ仕立て。
オムニバスってのは一本は大体ぬるいので、そこは日本の三池崇史があえて担ったような気がする。ラストは香港の監督による『餃子』。「ホラーで餃子」と書けばだいたい内容はわかると思います。
「復讐者」と「クムジャさん」に出演しているのがソン・ガンホという俳優で、とにかく殺人鬼から怪獣退治のお父さんまでいろんな役をやっている。韓流大好きおばさんにキャーキャー言われるようなイケメンではないが、この人が韓国映画を代表する顔なのだ。リスペクトをこめて「ソン様」と呼ぶ。

ソン様とパク監督が組んだ『渇き』(2009)。これは韓国産の吸血鬼映画。
牧師のソン様は公的な自殺に近い人体実験の献体に志願。五百人に一人の確率で生き残った彼は吸血鬼になってしまう。が、町では奇跡の神父として評判になり、祈ってくださいのリクエストが殺到。
昔馴染みのところに祈りに行ったところ、ソン様はその家の奥さんと出来てしまう。召使いのように使われていると感じる、倦怠の日々を送る奥さんの頼みで旦那を殺害。そのことを姑は知っているのだが、脳梗塞で倒れ、目だけしか意思表示の出来ない体になる。
「私も吸血鬼にして」との奥さんの頼みを飲むソン様。
このビフォー・アフターが最高で、吸血鬼になったことにより滅私奉公型だった奥さんが凶悪に変貌。
道すがら人を殺して血を吸う。ソン様が「自殺者の血を持ってきてやる」と言っても「素直にくれる血はおいしくない」。この辺からなんとも、変てこな方向に話が進んでいく。
奥さん役のキム・オクビンもバンパイヤになってからがさらに美しく、ブルーのワンピースでビルをぴょんぴょん飛んで逃げて行くシーンが大変かわいらしい。
仲間たちと麻雀の最中、姑のアイコンタクト(顔芸)で秘密が暴露されてしまい、そこから始まる大殺戮。
ちなみにソン様の「血を少しだけ吸って捨てるのは人命軽視じゃないか?」と言うセリフには笑ってしまった。もちろんギャグだから。
彼らはバンパイヤといえどケープをまとったり顔が青白かったりするわけではなく、しかも牙がない。
考えてみれば牙というのも優雅な凶器で、それを持たない二人は犠牲者の喉笛を切り裂いて血を吸う。
「バンパイヤ映画って意外と血が出ない」という定石をひっくり返しての全編血まみれ作品。
「官能ラブストーリー」という体で公開されていたようなので、うっかりだまされた韓流おばさんたちが最後まで鑑賞できたかどうか。はっはっはっ。
しかしバンパイヤというものは代々、ベラ・ルゴシにしてもクリストファー・リーにしても岸田森にしても淫靡な色気がなければいけない。その点、ソン様も一見普通だが「苦悩する男」のそこはかとない色気がある。
ラスト、二人は海岸の朝陽を浴びて朽ち果てる。クリストファー・リー伯爵は何度も何度もエグく殺されたが、『渇き』はバンパイヤ映画史に残る美しい名シーンで幕。
しかしゾンビにしてもバンパイヤにしても、そんな伝統は一切ないにもかかわらず、いきなりマックスに更新してしまうのが韓国映画のすごいところである。
ちなみに同じタイトルの日本映画はゴミなのでお間違いなきよう。


「ハピネス」でしあわせの意味を知ろう



ここまで底意地の悪い表現は久々に見た気がする。映画『ハピネス』(98)である。
かなり淡々としているので初見ではよくわからないかも知れない。二回観てああなるほどと思い、三回目にはどす黒い笑いがこみ上げてくる。レンタル店によってはコメディの棚に置かれているようなのだが、うっかり鑑賞すると大変なことになります。水道水に劇薬を混入させたような作品。
基本的には家族の話。両親と三姉妹。長女は精神科医の旦那と三児の母。次女は美人の流行作家。三女は普通のOLだが作曲家になりたいというひじょーにファジーな夢を持つ。
三女はおっさんの彼氏にレストランで別れを切り出す。いい感じにリードしていると感傷に浸っていたら、突如ぶち切れた彼氏から「僕はシャンパンだが君はクソだ!」と逆襲されてへこむ。いきなり最高ですね。
長女と次女はリア充なので三女を内心バカにしている。っていうかその気持ちがもろに言葉に出ちゃったりして。でも一見姉妹は仲がいい。
父親は母親にいきなり別居してくれと言い出している。で、結局、自分の女房とさほど変わらないようなおばさんと浮気。
次女に想いをよせるマンションの隣人がいる。が、コクることもままならないので、毎晩あちこちにイタズラ電話をかけては自家発電。この役を演じるフィリップ・シーモア・ホフマンの「すぐ近所にいるド変態」という雰囲気が最高。うおー名優じゃん、と思ったら数年前にドラッグでお亡くなりになっていたんですね。
フィリップに恋する同じマンションに住む太ったおばさん。この人の正体がとんでもない。
長女は「私が一番ハピネス!」と信じているのだが、実は精神科医の旦那はガチの少年愛の人なのであった。
11才の長男に「僕はまだイッたことがないんだ」と悩みを相談されると「パパがやって見せようか?」と答えてるあたりからどうかしてるんだけど、いよいよ歯止めが利かなくなり息子の同級生をレイプしてしまう。
この事件が明るみに出たあとの親子の対話が最悪(というか最高)。
長男が泣きながら「僕のことも犯したかった?」と聞くと父親は「オナニーで我慢する」と答える。
この辺のくだりが一部から「史上最低の映画」と呼ばれる所以なのだろう。正直、私は爆笑してしまいましたが。
今日の文章は大変下品な単語ばかりで申し分けないのですが、だってしょうがない、そういう内容なんだもん。ついでに映画史上に残る名ラストシーンのことも書く。
事件のあと、家族が集まって食事会を開いている。長男がベランダから下を覗くとビキニの若いお姉さんが日光浴。長男はたまらなくなって手すりに発射。せんずりからの手すり。申し訳ない!下品で!でも削除しな~い。なぜなら『ハピネス』に当てられたから。
それをペットの犬がペロペロ。そのまま飼い主の長女のところに行ってマウス・トゥ・マウス。「おお、クッキー(はぁと)」なんつってママンは喜んでいる(書くのも憚られることではありますが、犬との間接キスで息子のザーメンを飲んでる)。すっげえ悪意。本作のテーマはここに凝縮されていると言ってもいい。
レイプ場面が直接描かれていたりするわけじゃないが、何度も書いてしまうけど、監督トッド・ソロンズの悪意が半端じゃない。
ホラーだったら「全身の皮をはがされて無理矢理臨死体験させられる」とか「いい具合にでかいガラス板がトラックから飛んできて首チョンパ」とか「インディーズ宗教にはまったおっさんが夜な夜な女性を殺しては人体パーツをつゆだくでお持ち帰り」とか、要するにモロに「嘘」な分、罪がない気がする(ここで元ネタ当てクイズ。それぞれ何の作品でしょう?)。
描かないことで、つい「あるある~」とか思ってしまうのだ。

誰もが幸せを求めるが、誰も幸せにならない。あるいは「幸せだと思ってたら実は地獄でした」。
最後に長男が「僕、イケたよ」と微笑む。結局いちばん幸せなのは、精通の快感を知った彼だったりして。
映画のエンドロールでよくある手法が、登場人物たちのその後だ。「のち、結婚し、二児の母」とか。
ところが『ハピネス』はそんなに優しくない。ザックリとおしまい。どんな状況だろうと生きてる限り、勝手に人生は続いていくということなのだろう。
他にも細かくてブラックなギャグがあちこちにある。「幸せって何だっけ?」と思うたび、観返したくなる大大傑作である。

さてまだ終わらない。なぜこの作品に深い感動を覚えたかと言うと、自分の周りにあまりにも『ハピネス』的な人々が多かったからです。

■三十路過ぎて風俗にはまり親から車を買えと貰った三百万をすべて風俗にぶっこむ。お気に入りデリヘル嬢を指名して自分はホテルで全裸で待機。そしてギターを弾き自らの面妖なオリジナル曲を披露する(インストアライブ)。で、エッチは無し。
■彼がよく指名していた風俗嬢。演技経験ゼロにもかかわらずオーディションを突破し、シネコンでも上映された某作品に女優として出演。それ一本で映画界を去るがその後、あ、これ以上は角が立つので書けない。
■もともと「裏っぽい」人ではあったが(シャブで逮捕暦あり)、某マンガの影響で安定のドカチン稼業を捨てる。のちに家も仕事もなくなり何故か「西へ行きます・・・・」と自己完結して(彼の東京ラストナイトは旧すうさい堂でした)勝手に大阪の西成まで堕ちる。現在は消息不明。
■もともと古着のバイヤーだったが、海外での買い付けの際にドラッグを覚えてダメダメな感じで帰国。のちにバツイチ子持ちの同級生といい仲になり結婚の約束までするが謎の破綻(たぶんDV)。現在は消息不明。
■もとバンドマンのアダルトビデオショップ店長。パンキッシュなつくりのAVファンジンを発行し(自分も参加)好きなようにやっているように見えたが、突如店が閉店。書き手たちの原稿を受け取ったままドロンして消息不明。
■どぎついメイクとロリータファッションがイタすぎたアラフォーのメンヘル主婦。旦那は劇団俳優だったが現在は離婚。大変申し訳ないが「いろいろ耐えかねる」ため出禁とさせて頂きました。音楽もやっているので現在もあちこちのライブ会場に出没中。
■兄、妹がいる三兄弟の次男。この兄弟間ではまったく会話というものをせず、家族が揃ってもすべて両親を通して話をするのだという。数年前お兄さんが結婚。結婚式に妹さんは欠席。
彼は硬い仕事をしているが本質はサブカル。ある日行きつけの「極左書店」を覗くと皮ジャンのおっさんがいる。と思ったら自分の直属上司だった!上司はパンタや遠藤ミチロウのファンであり意気投合。
釣りバカ日誌における「浜ちゃんとスーさん」の関係に近いものを築いているらしい。

とりあえずこの辺で。おあとがよろしいようで。
(クイズのこたえ。『マーターズ』『オーメン』『血の祝祭日』)

恐るべし韓国ゾンビ



今年の映画初めは早稲田松竹@高田馬場。『新感染 ファイナル・エクスプレス』『ソウル・ステーション/パンデミック』という韓国ゾンビ映画二本立て。
最近、韓国映画にはまっている。「おばさんよろこび金撒き散らす」方面ではなく、いわゆる血みどろ暴力映画。近作の邦画では『アウトレイジ』シリーズがバイオレンス表現の最高峰だと思うのだが、韓国映画はなんと「あれくらいで普通」なんである。さらに極悪非道なトッピングを振りかけた作品がゴロゴロしている。
まだ十本くらいしか観ていないので掘り甲斐がある。ヤング風に言うなら「マジ卍」です。
そのうちつらつらとまとめようと思っているのですが(このブログは自分の頭の中を整理するためにある)、とりあえずヨン・サンホという監督のゾンビ映画が素晴らしく面白かったのである。
ゾンビ映画というとジョージ・A・ロメロに連なる本流もの、パロディや凝った設定によるギミックもの、ひたすらグロい俗悪ものの三つに分けられると思う。
ちなみに俗悪ゾンビはダメだとは言ってない。それらも映画でしか出来ない表現なので、それはそれでアリ。
代表格はイタリアのルチオ・フルチ。御大の「だいたいこの辺がおっかないのだろ?」という当たりをつけるセンスが観客の感性の斜め上くらいに行ってしまっているので、やはりそれも才能。
御大は仕事としてホラーやスリラーやマカロニ・ウェスタンなどを作る職人監督で、「出来るもんなら何でも作るよ」という深夜食堂みたいな人なんである。完全に破綻してる作風も含めて最強。
で、『新感染』なのだが、もはや散々使いまわされているゾンビを扱って「まだこんなに面白い映画が出来るのか!」という感動がある。
面白いゾンビ映画というとパロディ系が多くなってしまう昨今だけど、これは直球。

離婚した母親の元へ娘と共に特急列車で向かう父親。そこに一匹のゾンビを乗せてしまったことから始まる、お馴染みの感染パニック。
しかし「密閉された空間における大殺戮映画」はいつの時代も観ていて楽しい。
父親はファウンドマネージャーで、それだけでもあこぎ感は充分なのだが、とにかく自分と娘だけは助かろうとする。そこに身重の奥さんを連れたブルーワーカーのおっさんが絡む。さらに若い野球チームも絡む。
バス会社の社長も自分だけは助かろうとする。もちろんみんな助かりたいので、後々ドロドロの人間模様に発展。
ロメロ版ゾンビは豪華なスーパーマーケット篭城生活も描いたが、こちらは止まらない列車なので、ひたすら余裕がない。命からがら安全な車両へたどり着いた父親たちに向かってバスの社長は「こいつらは感染しているかも知れない!隔離しろ!」と言う。一見非道だが、実は冷静な判断であったりもするのだ。
で、一応は安定を確保した車両ではあったのだけれど、、うわーこれ以上は書けないよう。
父親、おっさん、ヤング野球選手が結託してゾンビ列車からサバイブしていくのが見所だが、おっさんの武器がなんと「素手」なんである。豪腕!この辺が韓国。
そして本作のゾンビ軍団は全力疾走で襲ってくる。昔は「走るゾンビなんて」と思っていたけど、それもまあまあスタンダードになると、今更ブーたれるのも無粋というか、問題は「面白いか面白くないか」だ。
この手の映画としてはグロさも控えめだし、あっと思わせるラストも含め、極上のエンターティメント。
韓国初のゾンビ映画とのこと。でもこれが最高傑作の可能性高し。




『ソウル・ステーション』はアニメーションでゾンビ・パニックを描く。『新感染』の前日談。
アニメでゾンビってどうなんだ?という疑問符は完全に吹っ飛ぶ。その辺の実写ゾンビ映画を軽く超えてます。
ヒモの彼氏とケンカ別れした主人公の女子が夜をさまよっている時にゾンビ騒動が起こり、たまたま一緒になったホームレスとどこまでも逃げて行く。それを探す女子の父親とヒモ彼氏。
粗筋はそんな感じ。しかし、ホームレスやデモ隊がどこまでも追いつめられる荒涼としたムードは本当に陰鬱だし、まさかのバッドエンド!である。「あったかさ」を感じられる『新感染』とは真逆の作品と言っていいと思う。
二本セットの鑑賞をおすすめしたい。どっちが上とか下ではない。


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すうさい堂主人
性別:
男性
職業:
古本すうさい堂
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