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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

すうさい堂は閉店しました。17年間ありがとうございました。

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裏々うらうらべっかんこ



男女の結合部分、ってものにまったく興味がなく、これはつまり「生殖行為」なるものを完全否定している自分のメンタリティによるものかも知れぬのだが、それでも今ならば無修正ダウンロードなどのツールが人気であり、80年代はビニ本、さらに非合法な「裏本」という仇花がありました。
本橋信宏『裏本時代』読了。これはモラトリアムなライターをやっていた著者が日本最大の裏本販売グループ「北大神田書店」の総裁と出会い、彼のバックアップによる写真雑誌『スクランブル』の編集長となり、同誌の創刊から終焉までを描いたノンフィクション。
今考えると非合法出版物のチェーン店というのもものすごいが、ここの会長は「やるからにはなんでも日本一」のポリシーを持つ。
(ちなみに検索してみたら「北大神田書店」という屋号、今もありました。まっとうな古書店になっていたが)
裏本の利益を資本として、独自の出版網を作るのが会長の夢であり、その先鋭部隊が「スクランブル」だったが、非合法な収益ゆえ手入れを食らえば一網打尽であり、資金繰りが立ち行かなくなって、廃刊に追い込まれてゆく。
半分くらいはこの雑誌の内幕について書かれているのだが、物事を立ち上げ、継続するには多数の煩わしさと情熱、それに妥協が必要ということを思い知らされる。
「ナイスです」「ゴージャスです」「ビューティフルです」と、中学生英語を多発するこの会長、彼は後にAV監督で大ブレイクする「村西とおる」その人である。
エロで食っていくには度胸や開き直り、洒落っ気などあらゆるタフさが必要で、それを制した者が勝者なのでしょう。
しかし村西とおるという人物、裏本屋をぶっつぶし、AVメーカーをぶっつぶし、しかしまだしぶとく生き残っていらっしゃる。
この人のブログすごいですよ。さすがディベートの達人。すぐに過去の記事は閲覧有料になってしまうのでなるべくこまめにチェックしよう。


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エヴリデイ、過剰者



「言いまつがい」とは糸井重里氏が提唱した、間違いを笑っちゃおうという遊びだが、自分もたまに「すうさんみたいなアウトローは」とか言われたりするのだが、僕の場合は単なる「アウトなひと」なんであって、これは大きな間違い。
さらに「宵越しの金は持たない」んじゃなくて、「宵越しの金<も>持てない」んである。
「おれもあの頃はよう」なんてな自分語りを始めて、周囲をうんざりざせるような栄華を持っていないのは幸か不幸か。結局でかい場面に飛び込む勇気がないってことなんで、そういう人はずっと微生物みたいにごにょごにょ生きていくのでございます。
最近、自分みたいのより、よっぽど会社員の人のほうが豊穣な人生なんじゃないか、と思う時がある。だってだって、彼らは年金やら保険やらキチンと納めた上、賞与や有給があるからそれを使って旅行やでかい買い物や新しい趣味を開拓することができるし、親や親戚にもちゃんと顔向けができる。それはすばらしいことですよ。
いい年こいて「サラリーマンなんてクソだ」とか言ってる連中、だったらそいつらは「クソにたかっているハエ」である。誰の礎のお陰で自分らがぷらっぷらしていられるのか、という自覚をお持ちでないんである。

会社員でも職人でも商売人でも、働く皆さんの人生に潤いを与えるものとして「娯楽」「表現」がある。これは故・村崎百郎さんも「芸術ってのは堅気の人を感動させるためにあるんだ」という発言をしてるので、間違いはないと思う。
昭和の大衆芸能における完成度。歌謡曲/演歌など、その道のプロフェッショナルが何十年経とうがびくともしないように構築しているのである。
演歌歌手が絶対に元歌を崩さず、同じ節回しで歌い続けるのは、そういう自覚があるからだ。どっかの国の原発ほどヤワじゃない。

萩原健一著・『ショーケン』を読んで、つらつらそんなことを思った。
その前にも生江有二著・『竜二 映画に賭けた33歳の生涯』を読んでいて、こういう欠陥だらけの人が発する過剰なパワーにはほんと頭が下がる。
これは俳優・金子正二の伝記本なんだけど、ほぼ「本職の不良の人」がそっちの世界じゃなくて、映画でのし上がってやるという悲壮なエネルギーを糧に、たった一本の作品を世に送って自分は癌で死んでいく。生江氏の男節もビシバシ決まっております。『竜二』は堅気もヤクザもんも、「同じ目線」で感動できるという稀有な名作です。
で、『ショーケン』なんだけども、これは時代のアイコン・萩原健一の自分語りで、「人生で三度地獄を見た」というだけあって、浮き沈みの落差が凄い。
大麻事件で干されたあと、「ぬいぐるみショーの中身」のバイトまでして子供の養育費を払っていたとのこと(あのショーケンが!)
もちろん彼の目線なんだけど、松田優作でさえ「常に自分の後ろを追いかけていた」とのことで、ライバルは「沢田研二」であったらしい(時々文献に登場するジュリーの腹の座り具合は、やっぱり本物である)。
黒澤明の狂気のような完璧主義も書かれていて、もう「映画の鬼」ですな。自分が黒澤映画をほとんど観てない理由がわかった。
ショーケンの仕事に打ち込むエネルギーもパじゃないわけで、やっぱそこにはパじゃない共演者と、パじゃないスタッフがいた。
これはもう作品そのものが牽引していた時代なのであって、ネット社会(つまりは電波による人のうわさ)の現在と比較してもどうしょうもないのであった。
つきあった女性タレントや、実はコカインも大好物であったことなどすべてぶちまけ、57歳にして(あとがきの時点)「人生まだまだ半分。まだいける」とのツッパリぶり。
ほんの数十年前の「カブキ者」たち、ショーケンじゃなくてもメンタリティはきっとこんなんばっかりの生き物が群雄闊歩していたのである。恐るべし。

で、AKBの新曲が「エヴリデイカチューシャ」って言うらしいじゃねえか。あれれパクりました?訴訟だ訴訟。

冥府魔道

昨日の晩飯。
カチカチに冷えたパックの白飯x2。これに一番安いレトルトカレーをぶっかけ温め食す。
いやあ味がすっげえケミカルッ。少々びっくりですわ。しかし実にチョンガーな食事。
最近ますます物欲がなくなって欲しいものがまったくないだが、やっぱり現生はあったほうがよいなあー、と。
「まーま、ここは我輩が」とレシートを持っていきたいのはやまやまなのだが、ない袖は振れないのれあった。クプー。
モノはいらねえカネは欲しい。マニマニマニ。とは言え、もう出稼ぎにあんまり時間を使うのはやめたので、なるべく店でお金を儲け¥たいなあーと思うのれあった。クプー(二回目ですが、沢田まこと風)。
いやーしかし中村うさぎってすごいわ。
まるでちぎっては投げちぎっては投げといった風情の散財のしかた。
本の印税は前借。そのカネをブランドやホストや美容整形につぎこむ。それをネタに一冊書く。
本の印税は前借。そのカネを(ぐるぐる)。自分の足を食ってるタコみたいである。
うさぎ対談集『人生張ってますー無頼な女と語る』(小学館文庫)を読んで、みなさんぶっとんでください。
超売れっ子作家でありながらも、相続トラブルで自己破産した花井愛子。
ストーカーと結婚し子を二人も設けた、純粋狂気の岩井志麻子。デブフェチ。デブで男体盛りすんなっ。
スリーサイズ130、体重130キロを誇るスーパーバディ、みんな大好きマツコ・デラックス。
おねえキャラの中でも、この人の知性はあたまひとつ抜けてるような気がします。
自らの異形を切り売りする、血の出るような笑いのセンス。
今回の対談相手の中で、うさぎ女史がもっともビビったという豪傑・西原理恵子。
歩いてきた地獄が違うというか、ここでも堂々と「税金なんか絶対払わないもん」と公言してます。
元旦那に放ったお言葉 『お前の年収なんか一瞬で使ってやる!』。
あらゆる哺乳類を煽動するフェロモンを持つと言われる性豪・斉藤綾子。
いつか人口ペニスをつけたいというのが夢、というほどのチンコフェチ。
冥府魔道女人衆。ヒリつくような笑い満載の一冊。司会・構成をしている人のツッコミもめちゃくちゃ面白い。

ラッパー地獄変

ラッパーの嫌いなところ。
すぐ群れるとこ。「ダチ」や「ソウルメイツ」が多いらしいこと。手のひらパーンして「YO!」とかいうとこ。
天下を取ったような顔で、ウイアータフだろすげーだろと「リリック」をまくしたてるのが基本的なスタイルらしいが(判で押したようにおんなじなんだな)、日本には「七五調の歌謡曲」っていうオールドスクールな文化があるんだよ。実際に天下を取って戦っているのは彼らじゃないか。
パンクの連中は他人も傷つけているだろうが、同じくらい自分も傷ついているようなセンシティブな魅力がある。
短パンにキャップ逆かぶりの人たちには孤独のにおいがまったくないぜ、メ~ン!

などとディスっちゃいましたが、この世界にもとてつもなく大きな孤独と絶望を抱えていた人がいたのだ。
ECDの『失点イン・ザ・パーク』を読んで、思わず身につまされてしまったのであった。
日本語ラップの創成期からシーンに携わっている大御所なのだけど、そっちの方は全然興味がない。
この本は自身のアルコール依存症の時期をかなり赤裸々に語ったもの。
好きなことやって食いたいなとは誰しも思うが、この人はアーティスト契約で月々の安定収入があり、時間もあり、結果、アル中になっちゃったんである。
盛者必衰とは本当によく言ったもんで、アル中になった時期から契約も打ち切られる流れとなる。
バイトを探すが「要普免」と年齢制限に引っかかり(うわあ一緒じゃん)、雇ってくれるところがない。
ハローワークで見つけた就職先の面接もことごとく落ちる。
唯一受かったレンズ工場も初日で発狂しそうになり、翌日退社。
そのうち欠員が出たということで繰越就職が決まるのだが、最低5年契約だという。
今までそんな「先のこと」を考えて生きてきたことがない。しかし彼は猫を多頭飼いしている。壁はボロボロで修繕費を要求されることは確実。引越しできるような貯金はない。
月給は16万。家賃は11万。あと15年は生きるであろう猫たちのためにも、この部屋を死守する覚悟を決める。と、この小説は結ばれている。

これを読み終えた直後、ECDさんのことが気になって検索してみたのだが、現在現在50歳の彼はラッパー兼警備員として働いており、24歳下で写真家の女性と交際しているらしい。
なんだかんだで、どうにかクリアしたということなのだろう。ひとごとながらホッとした。

実はホッとしてないのはこっちの方で、更新費はクリアしたがまだ家賃を入れてないんである。
これだけ景気が悪いというのに、金融法も改正したというのに、この悪どい習慣が残っているのはどういうことかッ。まあ、なんとかなるか。
自分も将来のことを考えるのも「2年先」が上限で、といっても「ああまた更新しなきゃ」程度の思考能力しかないのですが。
最近身近な某君がおめでたで、秋ごろの予定らしいのだが(こういうシチュエーションは初めてだ)、君のお子様が成人する頃にはすうさい堂はないだろうけども、ヂル会長もいらっしゃることだし、なるべく居座ってやろうと思う。
アーティストのように契約金が入ってくるわけじゃないが、ここにいる限り、金では手に入らないものを絶対に得ているはずである。
続けるしんどさより、やめてしまうしんどさの方が、はるかにきついのです。
それと引き換えにあまり多くのものは望めないのだが、そんなもんでしょ。

「オレ」と「あたし」の間に




手塚作品に『きりひと賛歌』というのがあって、これは顔が犬のように変形してしまう奇病(モンモウ病)にかかってしまった青年医師の話。
敵対するキャラとして、医師の勤務していた病院の院長がおり、彼は自分の研究者としての名誉のためこの病気を「伝染病」と発表するが、原因は水や地層による「中毒」であり、それでもプライドのため自説を曲げず、やがては同じ病気にかかって死んでしまうのだが、この作品をふと思い出したのが『ブレンダと呼ばれた少年(ジョン・コラピント著)』なるノンフィクション。
双子の兄弟。兄は尿の排出がうまくいかず、それならばということで生後八ヶ月でいわゆる「包茎手術」を受けるのだが、不幸なことにレーザーの失敗で性器を焼かれてしまい、ナニを喪失してしまうのである。
さあどうしたもんだ。途方にくれる両親の前にテレビで「性別は後天的に決められる」との自説をぶつ、「性科学の権威」と呼ばれる男が映し出される。
両親はこの博士のもとを訪ね、アドバイスを乞う。
彼は「睾丸を摘出しとりあえず女性器を作り、女の子として育てなさい」と言う。そうすればすべてがうまくいく、と。

DNAは男なのに、周りの「努力」で髪を伸ばしスカートを履かせ、「女の子としてのアイデンティティを埋め込みなさい」というのである。名前も「ブルース」から「ブレンダ」に改名されて。
さて、そんな目論見がうまくいくはずもなく、ブレンダは常に違和感を感じることになる。
人形よりプラモデルが好きだ。男の子とのケンカだって一歩も引かない。でもそれはお前のすることではないと言う。弟は普通に遊んでいるのに。
やがてこの軋轢に耐え切れずブレンダの精神は不安定になり、弟は非行に走り、母親はノイローゼになり、父親はすべてをないことにしてテレビの前でビールを飲む。
それでもこの「実験」を提唱した博士は、「すべてが順調である。私の説は正しい」といった旨の論文を発表し続ける。

性転換手術を断固として拒み、無理矢理女性ホルモンを打たれ続けていたブレンダだが、やがて彼の意思を
尊重され、15歳で「ディヴィッド」として男性に戻ることが許された。
なんだけれども根本的な問題ってのは残っているわけで、彼の悩みは実に想像を絶するものであり、この災厄の原因を作った執刀医のもとにピストルを持って訪れ、撃ち殺そうとまでした。
やがて理解者である女性が現れ(子持ち)、人工ペニスを作り、結婚をして、ディヴィッドは連れ子の父親となったのであった。めでたしめでたし。

で終われば「感動のノンフィクション」なのだが、この話にはとんでもないオチがある。
この本が出版され、一度絶版になり、再販された訳者あとがきによれば、双子の兄弟はすでにこの世にはいない。
弟が精神病を患い自殺したのち、離婚(あー・・・・)や投資の失敗などが重なり、兄も38歳で自ら命を絶つ。

この話に救済はない。
強いて言うならば「仮性だろうが真性だろうが、ついてればなんとかなるさ」という、なかばヤケクソ気味の前向きな希望である。

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性別:
男性
職業:
古本すうさい堂
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