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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

すうさい堂は閉店しました。17年間ありがとうございました。

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ソウルディスコ・『漂流教室』



うーむ、入荷するたびに全巻読んでしまう楳図かずお先生の『漂流教室』。そしてすぐ売れる。
楳図漫画といえばファーストインパクトは『おろち』に『怪』『恐怖』『タマミちゃん』あたりで、「楳図かずお」という字面がもうトラウマでああこわいこわいって感じであったのだが、「漂流」は読んだのが10年ほど前であり、自分はもうすっかり大人であって、この作品につっこもうと思えばいくらでもつっこめるのだが、そうじゃなくて、そんなことはどうでもよくて、あらゆる瑣末なことは全部ぶっとばす「ウメズGROOVE!!!!!!」に満ちた大傑作である。
ソウルフルな漫画をひとつだけ挙げよと言われたら、間違いなくコレを推す。
実際に楽器演奏やボーカルもこなす、楳図かずおによるソウルサーフィン・スクラッチ・コミック!何言ってんだかわかんなくなってきたが。
(スクラッチ音は「ザザザ」「ギャーッ!!」「ギャッ!!」「ハアハア!!」「ムシャムシャ」「ゴクン!!」「たべものを!!」などが入ります。童謡『ふるさと』もミックスされています。うーさーぎーおーいしー)

連載誌は少年サンデー。ってことは対象年齢が小学4年生から上くらいか。10才くらいの子供にも理解できるように、「荒廃した未来にタイムスリップした小学生のサバイバル」を描きあげたってことがとんでもない度量。
確かに突拍子もない描写もあるが、そうしたトゥーマッチ感覚も含めて作品自体がビリビリと生き、蠢いているのだ。
そして関谷。子供たちと一緒にタイムスリップしてしまい、大変なはた迷惑を被った給食のおじさん。
実に「大人らしく」暴君に変身!「アメリカの軍隊がやってきてわしだけ助かるのだ!!」「つまらん!!流行歌を歌え!!」とか、スパイシーな存在として彼はやはり重要。途中で幼児退行したりするが「ダア!!」「まんま!!」「ニャーゴ!!」と、やっぱりグルーヴィー。

子供たちが全編、無慈悲に、残酷に死ぬ。殺され、ペストにかかり、事故で、「怪虫」や未来生物の餌になって。
超能力を持つ少女を媒体として、主人公・翔くんとその母親が時空を越えて交信するのだが、彼を救おうとする「過去における」母親の行動の、気持ちいいくらいにイカれたぶっ壊れっぷり!
女ボス「お姫さま」のはすっぱぶりは、やはり当時のスケバン映画の影響だろうか。天才小学生・我猛くんのモデルはきっと大村昆。
世界レベルで見ても最もグロテスクなクリーチャー・未来人類との邂逅!
後半、盲腸を発症した翔くんだが当然医者がいない。執刀するは医者の息子の梁瀬くん!「ぼくの鉛筆けずり(カッター、文房具!)でやるしかない!!」、しかも麻酔なし!いま読んでもエグすぎ!といった感じで見所満載。
(しかし楳図さんのウィークポイントでありラブリーなところでもあるのだが、この人は全然「バトルシーン」が描けないってのがありますな。それ、クネクネしすぎだろうっていう。プラス・多少狂ったデッサンでも力技で描きこんであるので、それはもう堂々とした「絵」になっているのである)

『漂流教室』の隠れた香辛料は、実はこの未来が必ずしも遠い将来を指しているではないという点。原発事故を体験してしまった我々としては、この作品が鳴らしている警鐘がやけにリアル。
活火山を利用し、過去に戻ろうとする生き残った生徒たちだが、そこで先の「関谷氏」が実にイイ仕事をする。そして「ウメズ脳」でしか発想できないようなとんでもない展開が!!!!!
まあ、文章ではとても追いつけません。映画化やトレンディードラマ化(!)もされたが、無残に敗れたもよう。
それにても楳図かずお氏が作品に叩き込んでいる精神性はほんと高尚だと思う。
そして説教臭くならずに、ややキッチュな側面をもって楽しめるところが素晴らしいのだ。
特に『漂流教室』なんかは、DJウメズによるディスコティックと化していると思う。ソウルトレイン!

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原点怪奇



最近また水木しげる大先生(京極夏彦さんによれば、「おおせんせい」と呼ぶのが正しいらしい)の、『墓場鬼太郎』を読み直しております。
このビンテージ鬼太郎は正しく「化け物」であって大変よろしい。煙草を嗜む不良児童でもある。
そして貸本時代の水木大先生のタッチはアメコミのような太い線であり、今見ても大変カッコよろしい。
こののち「点描」なるすさまじいテクニックを頻繁に活用する大先生なのだけど、この時代の作風は実にモダーンである。
鬼太郎が誕生するグロテスクな名シーンはもう有名だから置いておくとして、実は『怪奇一番勝負』『霧の中のジョニー』が収録されている第4巻が白眉。
鬼太郎の顔もシリーズごとに変化しているのだが、「怪奇」における彼のデザインは最も不細工で憎ったらしくって最高である。
失業した漫画家か家賃を払えなくなって大家に相談に行くのだが、そのときの会話が素晴らしい。

「二階の金田さんが助手をさがしてたんだけど・・・」
「金田さんといえば殺し屋じゃありませんか」
「そう」
「べつにあんたに殺しを手伝わせようというわけじゃないでしょう」
「でも・・・」
「そうなの・・・。いやならいやで」
「いいえべつにいやじゃありませんが」
「じゃあ金田さんにそういっとくからね」

初期作品にしてすでにこの脱力感!ぺったらぺたらこ!
かくして漫画家氏はジャイアント馬場そっくりな殺し屋・金田さんの助手として雇われ、「アパートの居住権」を巡り鬼太郎親子と対決する羽目になり、あの世に送られてしまうのである。

そして真打ち登場!の「霧の中のジョニー」である。
名キャラ・「吸血鬼エリート」初登場の名編であります(この時点ではまだ「エリート」の名前はない。「ジョニー」と呼ばれている)。
実は吸血鬼エリートにはモデルがいて、それは『寄生人』なる悪趣味ホラー漫画を残した、「つゆき・サブロー」なるお方。ほんとにそっくりなのでググってみたらよろしい。
ねずみ男を秘書として雇い(月給五万円)池田総理の血を狙う吸血鬼と、総理のボディガードに就職した鬼太郎(ライスカレーを食べながら契約していました)が対決する。
ジョニーはスーツに蝶ネクタイの名ギタリストである。
ギターをサウスポーに構え、前髪で顔半分を隠し「ジヤガスガジヤガスガ」「ジヤガジヤガジャンガモンガ」とかき鳴らす姿は、かのカート・コバーンを連想させる、よね?よし!
自宅の巨大な樽からコップに血を注ぎ、「どうですヒヤで一ぱいやりませんか」と、ねずみ男にすすめたりする。イマジネイティブである。
なんだかんだあって、ねずみ男の「ゼントルマンのエチケットだものな」というセリフで完となるのだが、このイイ言葉、実際にどこかで使いたいところであります。
アニメ版墓場鬼太郎もなかなか善戦していたと思う。アメコミ仕様のオープニングがシャレオツ。やっぱりそういうことなんである。
http://www.youtube.com/watch?v=L9OvyoqxJzc&feature=related

あの夏の楽園ベイベー



当店で「山本直樹とEROTICコミックス」フェアってぇやつを地味にやっております。山本さんはガチで人気があるのですが、もうひとつ動かないそれっぽいのをまとめてみたらいんじゃね?と、画策したわけです。
もっと評価されてもいいんじゃないかと思うくらい面白い短編が並ぶ、すぎむらしんいち『ALL  NUDE』や、ビンテージSM劇画・椋陽児の『淫靡邸の美少女』など。
『ショムニ』が有名な安田弘之だが、クールな風俗嬢を描いてどこを切ってもスゲエ名作『ちひろ』とか、おマヌケかつ針の先のようなビミョーなフェティシズムをつっついた『紺野さんと遊ぼう』なんかいいと思います。
脚のラインや顔の表情など、線一本のエロティシズム?描線が似ているのか、なぜか読むたびにか「佐伯俊男」に通じるものを感じるのである。もちろん向こうのほうが百万倍おぞましいんだが、大好きです。原画展をやっていれば是非足を運びたい画家さんの一人である。
店でもアグレマン社の函入り画集(70年)が入荷中です。
なんと「紺野さん」は吉高由里子さん主演の実写版あり。
この人は美人に写ってる場合とそうでない場合の落差が激しくて、時々、もっともヤバい人物画・岸田劉生の『麗子像』そっくりだったりする。

エロだかどうだかは知らんが最近の話ではアレすごいね、切除しておいた自分のちんこ(冷凍保存)を自分で調理して、VIP 席のお客さんに食べさせるっていうイベントをやった絵描きの兄ちゃん。
場所が阿佐ヶ谷ロフトプラスワンってことで、かなり近いところでそんな面妖なイベントが行われていようとは。というか、カニバリズム以外の何者でもないですよ、これ。
やはりこのような過激な催しはタレこまれるようなのだが、食べる方も食べさせる方も納得済みなので、犯罪性は見当たらない。唯一、「食品衛生法」に抵触するんじゃないかと保健所の監査が入ったというのが笑える。「そのモノ」を公の場で見せた場合、わいせつナントカ罪にあたるのではないか、とか。
もはや問題はそういうレベルじゃないと思うんだが、お上が意見できるのはそれくらいしかないっていう、ものすごいエアポケットな企画である。
実際に食してきた人のグルメレポートがありましたが、
http://megalodon.jp/2012-0515-1201-37/www.another-tokyo.com/archives/50488451.html見ないほうがいいと思います。
ちなみにこのイベントは「世紀喫食会」なる、とんちの効いたタイトル。なるほどね。「おいちんぼう、ばんざい!」ってのもいいと思ったんだけどね。


なんだかんだで実はほぼ毎日開けているのですが(お遊びに行く余裕がまるでないので)、明日はお休み致します。
そういえば「明日はお休みですか?」って聞くと必ず「オフ!」って答える人がいたんだけど、なんだそりゃ?「アメブロの芸能人」か?

こどもは読まない図鑑



村田らむ著・『ホームレス大図鑑』(竹書房)、久々に読む。
この手の本に強いすうさい堂というわけで、何回目かの入荷であり(前作「こじき大百科」も人気)、プレミア価格でも割と早くハケる。
いかにもサブカル的な本ではあるのだが、いかにもサブカル的に「こじきってクール!サイコー!」などと安直な読み方をしている連中にはこの本の真価は伝わらないんじゃないかと思う。
山谷から西成まで日本中のホームレス・ホットスポットを取材して周り(聖地巡礼?)、ちゃんと彼らに接して取材をしている。体を駆使して(特に鼻)書き上げた、硬くないルポである。
同情するでもなく、過剰に持ち上げるでもなく、しょうもないない部分にはきっちりツッコミが入る。
「ホームレスに対する敬意がない」と怒る人もいそうだが、そりゃそうだろうって。
リスペクトできるものとできないものがある。やっぱり彼らはリスペクトされちゃいかんだろ、と思う。
結局その辺のゴタゴタで、この本も発禁・回収というかたちになってしまったわけだけど。
その割には山谷の労働者の顔をモノクロで焼いた写真集が名著と言われてたりするのも、わかるようなわかんないような。すぐ、「いのちの尊さ」とか持ち上げるのもどうかと思う。普通の人も一緒だろって。

ダメ人間ほど人生が濃い、みたいな「偏見」にもちょっと辟易していて、映画や小説として取り上げるにはいい対象だろうが、それはあくまで作品としてであってさ。
例えば、ブライアン・ジョーンズとチャーリー・ワッツっていう人が「ローリング・ストーンズ」なるバンドで一緒にプレイしていたわけだけど、一般的にはブライアンが圧倒的にロックというか、ドラマチックな生き様だと思われている。
だけど自分は、チャーリーの人生の方がずっといいな、と思う。
(まあ、ストーンズ一連の馬鹿騒ぎに一切関わらないという神経も、実は尋常じゃないんだけど)

図版がかなり充実している。町や、ドヤ・ダンボールハウスなどの部屋。素のままのホームレスたち。
垢まみれの顔写真を「いのちの尊さ」なる芸術のようなものに持ち上げるより、こちらの写真にこそリアリティがある。
ホームレスたちも堂々と顔を晒して掲載され(もはやこの人たち、名前も戸籍も関係ないのだろう)、その中の一人である「右手首がない80過ぎのじいさん(@上野)」が印象に残った。
すべてを振り切った、妙にすがすがしい目。ただ、特別にデカデカと扱わないのが、本書のカッコよさである。
この本自体が「煮込まれすぎて、伸びきって、しかも量だけは多い炊き出し」のような風情なので、あんまり細かく切り取ってもしょうがないのだ。

そして、
おちゃらけとシリアスを交互に使い分けて綴っていた著者だが、「あとがき」にて、ストレートな言葉をぶつけている。

『心の中でどう思うのも自由ですが、ホームレスの方に対し物理的暴力は振るわないでください。
胸くそ悪いですので。
どうしてもホームレスの方に暴力をふるいたい人は、迷わず自殺してください。』

絶賛追悼中




漫画家・土田世紀氏、肝硬変のため死去(末井昭さんのツイートより)。享年43歳。
これは早すぎる。急遽、追悼コーナーをでっちあげる。
おすすめは短編集『ノーサンキューノーサンキュー』で、特に表題作は秀逸。
子持ちの無職男と、妻を失ってから生きる気力をなくしている警察官はダチ同士。
無職男は警察官から金を借りてはパチンコなどでやりすごし、趣味である「ベンツのエンブレム狩り」を続けている。
が、警察官にエンブレム狩りの現場を見られてしまう。
後日、親子連れで遊園地に呼び出された無職男は「ダメ男のストレス解消で結構じゃねえか!」「ワッパはめろや!」と開き直るのだが、警察官はボロボロと涙を流し、

「いっぱいいっぱいだよな・・・・」「俺もお前も・・・」「今、きっとピンチなんだよ」
「・・・・やれよ、大山」「世界中のベンツからエンブレム取りまくれ!」

と、見逃すってだけの話。
友情に殉ずるってことは、必ずしも社会的に正しいとは限らないんだよなあと。男泣きの、いい作品集です。

ドラゴンアッシュのベーシスト氏も死去。心不全。ううむ。思うことはあるがあえて書かない(そして思い入れはない)。
ギターウルフのベースウルフ・ビリー氏と同じ亡くなり方。
90年代のバンドマンに決定的な影響を与えたのは、フリッパーズギターとギターウルフなんじゃないかと思っている。
(あとはやっぱりハイスタンダードあたりか)
フリッパーズはオサレでオタクで、彼ら登場以降髪を立てなくても、Tシャツとスニーカーでライブをやっても、ライブでシャウトしなくてもよくなった。イタリア映画のサントラや昭和テレビ番組の音楽やソフトロックなど、それまで無視されていたものをメジャーに流通させたのは功績だと思う。
ギターウルフの後発への最大の影響力は「バンド名のカタカナ表記」!これに尽きる。
皮ジャン・グラサン・リーゼントといういでたちも、ウルフ登場以前には「いくらなんでも」いなかったと記憶する。
そして彼らが敬愛する「キャロル」を、音楽ファンがロックバンドとして、ちゃんと認識するようになった。あと、ジェーン・ジェットも。
しかし、ギターウルフの素晴らしさは「ほとんどまともに曲になってない」ってところで、『環七フィーバー』『ワイルドゼロ』『カミナリワン』などセンスはやたらといいタイトルをサビで連呼して、爆音ロックとして成立させている。
あの汚い音でそのままメジャーデビューってのが、ちょっとした驚きであった。
ビリー在籍時のライブは、10年くらい前にクランプス来日公演のフロントアクトで見た。
『仁義なき戦い』のSEと共に登場するオープニングが一番カッコいいってのが、少々問題であったが。
そういえばクランプスのラックス・インテリアも数年前に死んじゃったな。

心不全ってことはないが、自分も血圧は高いのでちぃと気をつけよう。とかいいつつ食生活に全然気を使ってないんだが。
自分は世界にひとつだけのお花「すうさい堂主人」であるわけなのだけど、「すうさい堂主人でいる割合」と「収入の激減」が完全に正比例しているということが、目下の悩みの種のお花畑なの。

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すうさい堂主人
性別:
男性
職業:
古本すうさい堂
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