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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

【すうさい堂最新情報/極私的ツイッタァ】 ■■ 火曜と水曜が定休です。※店主が大昔に描いた絵を売り始めました。

青空のなれの果て



『闇金ウシジマくん』でお馴染み、真鍋昌平作品集『青空のはてのはて』(講談社)、読む。
いろいろなタイプの短編が読めるが、基本的な気分は「やってられねェ」。この気分を描かせると著者は抜群に上手い。
ウシジマくんに登場する客たちのダメさ加減と言ったら。特に食べ物に関する描写。
煎餅に辛子を塗って涙ぐみながら「うまっ!」「からっ!」とか言いながらむさぼり食う。いや、気持ちはわかるよ。気持ちはわかるが、そいつのダメさを絶妙に浮き彫りにする。
財布の中身が薄いサラリーマンが友達に牛丼屋で、「何でも奢ってやる」なんて言ったらその友達は一番高い定食にサラダまでつけて、それを見てなんだこのヤロー、みたいなシーンがあった気がする。まあどっちもどっちではあるんだが。
丑嶋馨はフィギュア化されているから、ガシャポンあたりで「ウシジマくんとカウカウファイナンスのたのしい仲間たち」みたいなシリーズを作ってみたらどうか。やっぱ、売れんか。

商業誌デビュー作『憂鬱滑り台』は、強盗に手を染めてしまった若者二人の行く末。
商業誌で勝負を賭けて見事に砕け散ったらしい『暴力(バイオレンス)ポコペン』は、念願の意中のキャバ譲とドライブし(なぜかキャバ嬢の女友達までついてくるという状況)、心霊スポットへ向かったはいいが、そこにたむろする不良少年たちに包囲されてしまい、さてどうやって逃走する?という話。どちらもエンタメで面白い。
『かわりめ』『星に願いを』は、やっぱりダメっぽい人々を叙情的に描いた作品。この辺のテイストも真鍋作品には重要だったりする。
『最後の居場所』は衝動的にハムスターを拾った青年が、当初はかわいがっていたが内心のところはだんだん面倒になってくる。その矢先にハムスターは交通事故で死んでしまう。絵柄もまったく違うこの本の中では一番の異色作。つげ義春の「チーコ」に近いかも。
狂ったアメコミ調の『超人ドビューン』『ハトくん』の合間を、ブラックなショートショートが埋める。
タイトル作は通勤ラッシュにおけるサラリーマンの妄想を描いたもの。これもまたやるせねェ。
普通の人の普通の弱さを掬い上げるのが上手いのだと思う。ウシジマくんも表面上は暴力的だが、だんだん「救い」がテーマになっていく。読むといろんな意味でナイーブな気分になる。
誰しもいつだって青空だけを見ていたいのだろうけども、ずっと続く青空っていうのも趣がない。
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死んでいた朝に弔いの雪が降る



『修羅雪姫 復活之章(上下巻/小池書院)』読む。小池一夫×上村一夫。
『「週間プレイボーイ」掲載から30年以上を経て、ついにファン待望の初単行本として復活----!!』ということである。ちなみに現在すでに絶版。
死んだと思われていた鹿島雪は、お茶の水女子高で「スエーデン式体操」を伝授する体育教師として生きていた。
そこへ極右の集団が「やめろ と云うとンのじゃ~ッ(原文ママ)」と、脅しにかかる。神国日本に毛唐の習慣を持ち込むとは何事かッ、ということである。
そこでスエーデン式体操の素晴らしさを伝えるために、雪はその場で全裸になり、舞ってみせる。
いきなりこの展開。さすが、かきくけ小池一夫大先生。実写版だったら梶芽衣子はおろか、絶対誰もやらないと思う。
そして右翼の大将は、この教師こそ殺戮マシーン・鹿島雪=修羅雪だということに気付く。彼らから刺客を放たれ狙われる雪。仕込刀でこれを返り討ち。
雪は井口あぐり→樋口一葉→伊藤野枝の人脈に繋がって行くにつれ、彼女らが帝国陸軍や右翼集団から「てろりすと」と認知されている、「反国家分子」だということを知る。
軍人たちに容赦なく拷問や殺戮されていく人々に対し、雪は怒りを爆発させる。怨みじゃなくて義憤である。
とにかく上村一夫という人は絵が達者なので、殺陣シーンも抜群。血まみれさも含め、まったくもってキルビルのvol.1ですよ。
葉口一葉は上村氏お気に入りのキャラらしく、『一葉裏日誌』という彼女が市原悦子の家政婦ばりに事件を解決していく作品もある。
阿久悠原作による昭和ロマンな男女の機微モノとか、実はすうさい堂でも安定人気のブランド。
しかし修羅雪=梶芽衣子。よくもあの上村的三白眼を持つ生身の女子がおったものである。平成の今、射すくめられるような目を持つ女優さんていないんじゃないの?自分が知らないだけ?
『修羅雪姫』の海外版タイトルは「LADY SNOWBLOOD」。クールすぎる。

先日は、なんちゃって右翼な気分で「みたま祭り」に行って来たのですが、人が多すぎて焼きそば食ってビール飲んで帰って来た。何しに行ったんだ?しかも8割以上が若い娘さんばっか。なんでだ。
靖国テイストを味わうには昼間に出向かないといけないようである。結局、阿佐ヶ谷で飲みました。


アチョプ、マウマウ



ジョージ秋山のマニア間ではトラウマコミックとして知られる『海人ゴンズイ』、読む。青林工藝舎からの復刻版。
罪人が送られる流刑の島。その島を取り仕切る若者・リュウ。流人が海のものを取っただけで容赦なく殺してサメの餌。死んだ赤ん坊を背負う狂ったお姉さん・アズサ(子供の目からは虫が「にゅるにゅる」)。
そこに漂着したアフリカの子供・ゴンズイ。ゴンズイを育てようとするアズサをリュウが背後から槍で突き刺す。怒りのあまり戦いの踊りを舞うゴンズイ「フンムムフンム、フンムムフンム」。だが、勝負は持ち越される。
ピラニアのような人食いボラや、サメ以上に恐ろしいと言われるオニカマスとの戦い。
少年ジャンプ連載とは思えない血と暴力のにおい。このままジョージ先生の好きなように描かせればとんでもない作品になったかも知れないが、あまりにも暗すぎる内容にテコ入れが入る。
オニカマスを撃退したゴンズイの元に島の子供たちが団結し、「えいえいおーっ」ではっぴいえんど。唐突に終了。あれ?リュウは?

このような展開になったいきさつを聞こうと、監修の大西祥平氏がジョージ先生に食いつくのだが、「そんな深い考えがあってモノを描いてません」「手ェ抜くうまさは天下一品だから!」と、そんなことどうでもいいじゃねえか、もういい?ってなご様子。ついでに原稿も持っていないらしい。ということはインタビュー中に大西さん本人が言っているように、オリジナルの元本(激レア!!)をバラして刊行したのだろう。男である。
この本には白鯨(シロマジン)と執念で戦う鯨獲りのボスの物語『ドハツテンツク』が収録されているが、これがまさに知られざる名作。
彼は17歳の時に体を買ったタエに子供を産ませ、その子にシロマジンとの戦いを継がせようとする。なので、女の子が産まれたら海へドボーン。めでたく男子(ズズと命名)が誕生するが、彼も因果な運命をたどるのであった。
ちなみにジョージ先生、この作品の原稿もお持ちでないということ。「ゴンズイ」復刻版が出版される、たった三年前に執筆したものだということです。

無自覚マッドネス



夢、というと自分の場合ほぼ悪い夢であり、悪夢までは行かないけれども悪い思い出が元ネタになっていることが多い。夢の中で「あれこれって夢じゃん?」と気付いて目が覚めたりする。当然寝覚めもよろしくない。
ただ最近のことが下敷きになっていることがほぼ無いので、所持金こそ常にカラッカラだが、それでも何とかやっていけてるのは皆様のおかげです。本だけでなく媚びも売ります。へっへっへ。
蛭子能収という人はタレントとしての峠も過ぎて、もはやよくわからない人だが、かつては先鋭的な漫画作品を発表していた。
フリーキーな作風の作家たちも実は、絵自体は正統派だったりするけど、蛭子さんの場合は絵柄からしてフリーキー。登場人物のほとんどがサラリーマン風だが、ことごとくイカれてる。これだけ感情移入が出来ない絵はちょっとすごい。初めて単行本を読んだ時は軽い眩暈のようなものを感じた。

蛭子能収コレクション『地獄編・地獄を見た男』を読んで久々にエビスの毒に当てられた(このシリーズ、『病気編』、『映画編』、『SF&ミステリー編』など読んでますが、どれもこれも狂ってます)。
キャラの描き分けが出来ない作家といえば大御所・松本零士先生なんかがいますが(この人は多分機械と武器を描くことしか興味がないな。女性は基本的にメーテルであり、ほぼ記号である)、蛭子さんのメインキャラも同じ顔のサラリーマン。
ただしこれがミニマルな連続性を呼び、オチが来る前に溶け出しているようなストーリーと相まって、非常に悪い夢を見ているような感覚に陥る。
一応オチがあるのは、国民のために人柱として埋められる処女を待ち伏せする自民党特攻隊員が彼女のバージンを突き破るというどうしょうもない作品・『少女死すべし』くらいか。
処女でなくなれば人柱の効果は消えるらしい。若干政治的な匂いもするが、本人的にはそんな意識はゼロでしょう、ってオチまで書いちゃったよ。
『笑う死神』はちょっとしたホラーというか、漱石の「夢十夜」みたいな風情。
力作は『地獄のサラリーマン』二部作だろうか。最初から最後まで綿々と悪夢のような描写が続く狂った名作。特に同じ顔した大量のサラリーマンが「ええじゃないかええじゃないか」とビル街を踊りまくる1ページはヤバい。今じゃめんどくさがってこんなカット、絶対描いてくれませんよ。
創作を続けていくうちに精神を病んでいく作家は多いが、蛭子能収はこれだけ発狂した作品群を描きながらケロッとしているところが凄い。
あとがきで根本敬が記しているように「エヘラエヘラしながら娑婆と地獄を行き来するのだが、当の本人はその自分自身の特異さをこれっぽちも意識してない」んである。

このシリーズは発行元が倒産しているのでほとんど古本でしか手に入りませんが、どこかで(すうさい堂とか)見かけたら購入を(すうさい堂とかで)おすすめする。多分プレミアはついてないです。
定規で引いたような狂気は「がんばってるな」と思う。しかし、エビスヨシカズのフリーハンドによる底知れない不気味さは本物。そもそも「蛭子能収」って字面が完全におかしい。

「痛み」のホラー



なんだかんだで、男性作家が描くホラーや猟奇は、どこか無邪気なんである。エグい表現もエンタメのひとつ、ということ。
楳図かずお、日野日出志、山岸涼子がホラーマンガの三羽烏だと思っているのだけど、この中で誰が一番ゾッとするものを描いているのかといえば、山岸涼子さんである。
発想に情け容赦がない。『鬼来迎』『夜叉御前』『狐女』『天人唐草』あたりが特に突出している。
血も内臓もモンスターも出てこないが、切り捨て方が冷酷すぎるのである。この人に比べたら日野氏なんかは叙情的だと思う。名作『蔵六の奇病』『地獄小僧』『毒虫小僧』を見よ。優しいから好きなんだ。
視覚的に一番ぶっとんでるのは伊藤潤二かも知れませんが、着想がぶっとびすぎていて個人的にはギャグの琴線に触れてしまうのである。

で、知られざる名作ホラーコミックを紹介。円山みやこ・『蟲笛(こてき)』である。青林工藝舎より復刊。
実際の事件からヒントを得た作品が多く、正統派少女マンガの絵柄だが、とにかくヒリヒリしている。
ぶっちゃけ、陰惨すぎるし後味も悪い。それでもとことん描いてしまう作家としての業。仕事でやってるんだとしたらなおさらすごい。
『傷の軋み』。学校にも行かず裏ビデオのチラシをポスティングしている少女は、家に独りでいるときに巨大な芋虫の幻影を見ている。その正体は、彼女を虐待する父親。
『葉隠しの家』。ひきこもり息子が自宅で監禁している少女を黙認している母親は、その子を「盆栽」に見立てている。
「盆栽の・・・いらない枝を割って」「皮を・・・はいで枯れさせて」「一部分を骨みたいにするのよ」
女子高生コンクリート詰め殺人事件をモデルにした表題作。
『ハイエナの粉』。リンチ殺人事件の実行犯を兄に持つ少女。彼女はインターネットで自分のプロフィールを公にされてしまう。
そして母親宛てに、自分の骨を59グラムずつ封筒に入れて郵送してほしい、との遺書を残して自殺する。
彼女なりの、世の中への復讐。
『哂う花』。これはオリジナル。「生理」を主題とした、男には思いつかない、もう本当に、なんとも言い難いホラー。被害者は一人も出ないのだが、おぞましさで毛穴が開く。
清楚な美しい転校生は人間じゃないのかも知れません。月のものが「アレ」だから。
読後、しばらく気が滅入る。どれもこれも読み手と刺し違えるような作品集である。

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男性
職業:
古本すうさい堂
自己紹介:
自称「吉祥寺の盲腸」、すうさい堂のだらだらした日常の綴り。
本を読むという行為は隠微なこと、悪いことを覚えるためのモノ。

180-0004
武蔵野市吉祥寺本町1-28-3 
ジャルダン吉祥寺103

0422-22-1813

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