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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

すうさい堂は閉店しました。17年間ありがとうございました。

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バカしか出てこないバイオレンス



ここのところコミック界ではゾンビものがなんとなく盛り上がっているっぽい。
一番売れているのは花沢健吾の『アイアムアヒーロー』だろうか。導入部で主人公のぬるい日常を描いておき、どんどん異様な世界に突き進む展開が上手い。でも、ちょっと長いね。
深夜ドラマで設定がパクられたとかの(ほんのちょい)騒ぎになった福満しげゆき『就職難!ゾンビ取りガール』も面白い。仕事として淡々と「ゾンビ捕獲を行う会社」の人間模様。それにしてもこの人のシワを徹底的に描き込んで、巨乳を表現するフェチ手法は圧巻。
古泉智宏の『ライフ・オブ・ザ・デッド』も青春ゾンビものとしてなかなかだし、未読だが相原コージの『Z』もかなり面白いらしい。
で、突出してぶっとんでるのは、すぎむらしんいち『女(ジョ)ンビー童貞SOS』。
女だけがゾンビとなって男に襲いかかる世界。喰われた男もゾンビになる。
そんな中、かなりどうしょうもない種類の童貞たちと美少女処女が生き残るため、お約束としてショッピングモールを目指すのだが、そこがみんな大好き「中野ブロードウェイ」。
これはぜひ実写化して頂きたいところ。しょこたんの店もあるし、まん〇だらけを口説けばどうにかなるんではないか?どんどんシャレオツになっていく吉祥寺と違い、中野のあの建物が放つマグマは昔から変わらない。今だって普通に、マンガゾンビやアニメゾンビやフィギュアゾンビが徘徊しているのだから。

それはそれとして、個人的にはすぎむらしんいち氏の最高傑作だと思っているのが『ホテルカルフォリニア』(kkベストセラーズ)である。
北海道の辺鄙な場所でオープン予定のリゾートホテル。集められた従業員はアル中の支配人をはじめ、元ヤンやヘビメタガールや女装趣味など、どこかしらズレた連中ばかり。まともなのは配膳係のおばちゃんだけ。
メイドのエロいねえちゃんがホテルオーナー専属の(作品の表記に沿えば)売春婦であり、その集金をするため、二人組のチンピラがやってくるが、ホテルに着く前にそりの合わない仲間うちのヤクザと壮絶な内輪揉め。
余生を温泉に浸かって生きることをモットーとした世捨て人のジジイ軍団も登場。彼らは山中に広大な大麻畑を持っている。
ホテルの経営を放り出してオーナーが逃げ出し、土砂崩れのため山から降りられないと知ると、従業員たちの人間関係が一気にアナーキーに。元ヤンたちは「売春婦」姉さんを巡って血走る中、淡々と自分の趣味である女装コスプレを続ける男。ヒグマも登場。
さらにチンピラが持ち込んだ揉め事により、本家の組織と従業員、老人軍団とヒグマまで巻き込んでの大バトルがはじまる。
バカ×エロxヤクザxジジイxガンジャxヒグマ。
感情移入しにくいキャラばかりが登場するが、ストーリーはしっかり一本の線に繋がっており、ドタバタでもあるがバイオレンスでもある。
この作品(愛蔵版で上下卷)も品薄だろうし、並ぶくらい面白い『東京プー』は絶版。日本文化の大きな損失である。
ところでタイトルの「カルフォリニア」は間違いではない。ホテル表記を間違えて(CALFORINIA)建設されちゃっているから。ズレっぷりがエスカレートして展開していく本作を象徴していると思う。

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恋の腹痛 見ちゃイヤ!イヤ!(←もう、このタイトルに勝てない)



少し前に吉祥寺ホットペーパーから「書店員おすすめのカフェを教えてください」と電話がありまして、しかし聞く相手を間違えたというか、わたくしカフェーなどというところに行ったことがございませんので(カフェでリゾット食うならカレー屋を開拓します)。
そんなわけで記事にはならなかったのですが、カフェなるオシャレ空間で読むのに適したオシャレな本を紹介。
井口昇著・『恋の腹痛 見ちゃイヤ!イヤ!』です。
タイトルもカバーもかわいらしいですが、この人は真性すかとろまにあなので、書いてある内容はすべて「うんこ」(本人の表記による)についてです。
この頃の著者は現役スカトロAV監督で、自分がなぜそのような嗜好になりこの道に進んだのか、ということを理論整然と書いており、カミングアウト本としてはなかなか。
「美しいものが崩壊する姿にこそ興奮する」というのは分かりますが、それが「排泄行為」であるというのが、この人の業。
大量に食ったり浴びたりではなく、あくまで自然排便あるいは浣腸による強制排泄にこだわるという、わびさび。

スカトロ趣味を共有する若き日の「人間仮免中」卯月妙子さんと出会い熱を上げてしまいますが、作品で競演し、無理矢理食べてみせたところ「スカトロプレイは信頼」「愛情がある相手だから美味しいって思えるんですよ」「無理してうんこ食べてもらっても、私、つらいだけです・・・」と告白されて奈落の底に。
世の中にはこんな失恋の仕方もあるんだなあと、ちょっと感心。
その他、抱腹絶倒な「おならビデオ」の話や食糞マニアの驚くべき実態など面白いエピソードが満載なのですが、書いていて「これちゃんと読んでる人いるのか?」「今日はほとんど読み飛ばされてるんじゃないか?」という気がしてきましたので、久々のブックレビューはこの辺で筆を置きます。
しかし著者はAV男優~スカトロ監督~映画監督(「片腕マシンガール」「ヌイグルマーZ」etc)と、道なりをピンポンダッシュするような勢いで夢に近づき、それを叶えています。夢は叶うんです。夢をあきらめないで!

なんだかんだで、あとがきの数行にはちょいとほろっとします。
「もしかしてこの本を読んでしまうかもしれない僕の両親に、謝罪と特大の感謝を捧げます。
すみません、僕はこんな息子です。
でも、僕をつくってくれてありがとうございました。」


星園すみれ子氏による、ゴシックかつガーリーな本文イラストも味。
帯には森下千里さんと木村佳乃さん(なぜだ???)がコメントを寄稿。・・・・・やるね。

カッコーの巣の上の少年少女



望月ミネタロウ『東京怪童』(全3巻/講談社)読了。
脳に疾患を持つ子供たちを専門に治療している病院が舞台。
主人公の「ハシ」は思ったことをすべて口に出してしまう。相手かまわずに本心の罵詈雑言を浴びせるので、しょっちゅうボコボコにされている。
あなたもわたしも「本音を隠す」という機能が搭載されているから平穏に暮らせるが、それがなければ街中が毎日バイオレンスである。
「花」はTPO関係なしにいきなりオーガズムが襲ってくるという症状。
「マリ」は自分以外の人間を認識できないため、たったひとりの世界の住人。
「英雄」は痛覚神経がない無痛症。ゆえに自分をスーパーマンだと思っている。
自分の喋ったことを端から忘れてしまう重度の「健忘症」のため、常にメモを取り続けている少年もいる。しかし、そのメモすら彼には何のことだかわからない。
病院の警備員かと思われていた「二本木」は、マンガの主人公に自分を重ね合わせているだけの患者だった。
彼らの治療をしているドクターの一人「玉木」は自分らしく生きようと仕事と家族を捨て、女装趣味を生かせるおかまバーで働く。
なかなか際どいテーマだけどこれは名作。途中でハシの創作として挿入される、空飛ぶペンギンのエピソードもよい。
ラスト、ハシは自分の症状を取り除くため脳手術を受けるが、失敗したら死ぬかもしれないという危険なもの。つまり本音を捨て嘘がつけるような「正常な」人間にするための賭け。
この辺の流れはちょっと感動するので手にとって読んで頂きたい。そして花の「どんなに最悪だと自分の事を思っても/私は『まし』ってこと」の言葉が刺さる。
何の解決方法も見出せない状況でも「まだマシ」と思えれば、人間ってナントカやっていけるのかも知れない。

で、ジャック・ニコルソン主演の映画『カッコーの巣の上で』(75年)を思い出したのだけど、これは逮捕されたニコルソンが「ムショよりはマシ」ということで、詐病を使い精神病院に入院する物語。
彼は別に精神疾患があるわけじゃないから常に元気であり、患者たちを外に連れ出していろいろなことを教える「ワルい兄貴」。が、患者たちはどんどん生き生きしてくる。
結果的にニコルソンには悲劇の結末が待ち受けていて、まともに服役していればこんなことには・・・なのだけど、兄貴はきっと、どうしても逃げたかったんである。
逃げるを「自由」に置き換えてもいいのだけど、これを続けるのも案外しんどい。責任逃れと映っても、理屈はうまいこと言えないが、理由はあるのです。
この靴カッコいいと思って買って、いざ履いてみたら意外と重くて歩きづらかったりして、しかしその靴のシルエットが自分には必要だったりする。そういうこと。

すみませんが今週は10日(火・お休み)、11日(水/祝・営業)、14日(土・17時まで)、あとは通常とさせて頂きます。


失恋王者・ゴルツィネ



吉田秋生『BANANA FISH』久々に読了。小学館文庫で番外編含む全12巻。
言わずと知れた名作。もし概要を知りたければググればよろしい。
とにかく伏線がすごい。貼って貼って見事に線が一本に繋がっている。
これは自分だけだと思うのだけど、ストーリーが練り上げられているので、再読するときはキレイに筋を忘れている。なので何回でも新鮮に楽しめるという不思議。まあ多分、単に頭が悪いのである。
カテゴリーとしては少女マンガだが、バイオレンスやガンファイト、ストリート・キッズたちの抗争など、実にハードボイルド。武器のディティールも細かい。きっと正確なのだろう。オレ知らんけど。
ただ女性が描いているので、マンハッタンの不良少年たちのルックスがちょっとダサい。っていうか、かわいすぎる。ツッコミを入れるとしたらそれくらい。
「アッシュ・リンクスと英二のピュアな友情の物語」というのが一般的な評価なのだろうけれど、正確には「アッシュと英二とディノ・ゴルツィネの三角関係の物語」。そして、いろいろな意味でアッシュに惹かれた男たちの物語でもある。
セクシャルな描写こそないが、ぶっちゃけこのムードは元祖BL。男女間の恋愛はほとんど出てこない。でも同性愛のエピソードはわんさか。
ゲイ映画の様相を呈していた松田優作IN『ヨコハマBJブルース』が近いかも。なんて書くと怒られるのか?

友情ということであれば、それぞれの地区に分布する少年グループたちがアッシュをキーとして、人種を超えて団結していく様が素晴らしい。「イフ・ザ・キッズ・アー・ユナイテッド!」である。
(裏テーマはこれなんじゃないかと勝手に思っています)
後半に登場する元KGBの殺し屋・ブランカの突き抜け方がクール。そうそう、このおじさん好きだ。
冷酷な傭兵たちの指揮官であり最大の敵・フォックス大佐の立ち位置もいい感じである。
艱難辛苦を乗り越え続けるアッシュはもちろんだが、その次にしんどい思いをしているのはゴルツィネであろう。
コルシカ・マフィアのボスとして君臨し、少年男娼だったアッシュに目をかけてあらゆる教育を施すが、まるで自分の思い通りにならない。常に噛まれてばかりでボロボロ。ずっと失恋状態が続いているオヤジの胸中はいかほどのものか。
しかしマンガ史に残る堂々としたワルっぷりである。

この作品の12巻目にあたる番外編「ANOTHER STORY」も良い。本編以降の後日談と、ショーターやブランカとの出会いが描かれる。
でも英ちゃんの棒高跳び選手時代のエピソードはかったるくて読んでない。ごめんね。
有名な話だがアッシュのモデルは、故リバー・フェニックスである。


ああ下品



最近痺れているのが「おっぱいパブ」の呼び込み。歩いているといきなり「・・・あります!」と来る。
「あります!いやらしいの!」と続いたりする。そのうち「あります!いやらしいの!二個ずつ!!」と付け加えられそうな気がする。
昔からジャケット姿で風俗の呼び込みをしているおじさんも健在。
独特のイントネーションで「お遊びは、いかかですか?」「ファッション・ヘルスは、いかがですか?」。
あれで客が来るとも思えないから、マスコット・キャラのようなものなだろう。吉祥寺の裏名物ですぜ。
まあしかし、品がいいと思う。愛されタウンの下品度はこの辺がマックス。

根本敬『天然』(水声社)、読了。
マンガ史上最もパンチの効いたドツキ漫才コンビ・村田籐吉と吉田佐吉(しかしセンスのいいネーミング)。
根本流スターシステムの二人が大かつやくの、野球マンガである。自分が唯一好きな野球マンガでもある。
「ブタのウンチ」と呼ばれている籐吉が熱中している「牛乳のフタあつめ」がクラス中に広まるプロローグからして何とも脱力なのだが、彼は野球選手として秘めたる才能を持っていた。
で、村のお大尽の息子であるところの佐吉が、ってああもうめんどくせえ。
とにかく、全てのエピソードが下品。佐吉の父親、ブレーンの医者、クラスメイト、教師、登場する爺さん婆さん、ラストに登場する川上選手との邂逅など、すべてが下品、かつ、まぬけ。それだけで成り立っている作品。
ストイックですらある。「崇高な下品」と呼んでもよろしかろうと思う。すべての受難を受け入れる籐吉はキリストのようでもある。
キャラたちの「ぬくもり」(当然加齢臭つき)さえ伝わってきそうな絵からしてダメな人はダメでしょうが、このまぬけエピソードが驚くほど緻密に構成されており、何だかよくわからない感動(!)のラストに繋がっていく。
この構成の妙は、根本版SFであるところの『ミクロの精子圏』『タケオの世界』にも顕著。
(ところで自分はSFがダメである。大友克弘『AKIRA』の2巻まで読んで挫折してしまった。この、名作と呼ばれる作品にすらついていけないのですよ。つうか、あんまり謎が謎を呼ぶなっつーの!)

しかし、野球が好きな人ってちょっとうらやましい。
勝敗で一喜一憂し、ひいきのチームには一生ついていくほどの一体感、そして不特定の人と話せる話題(これは社会人として大事)。
スポーツ全然わからないというのはこの歳になって、人性損してる(嫌いな言葉だが)と思う。

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