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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

【すうさい堂最新情報/極私的ツイッタァ】 ■■ 2017年10月13日(金)13時より移転オープンしました。■吉祥寺本町1-29-5 サンスクエア吉祥寺201 ■0422-27-2549 ■土/日/祝日のみ営業

アビ松さん



『おわらない物語~アビバの場合』(2004)は12才の少女が妊娠するという作品なのだが、親にとって「子供が子供を産む」ということは「子供が子供を殺す」と同じくらいとんでもないことなのだろうなあなどと、鬼畜なことを考えた。
葬式のシーンから始まる。故人の名は「ドーン」。『ウェルカム・ドールハウス』のメガネブス、あ、いやいや、主人公である。しかも死因は自殺らしい。トッド・ソロンズは自分が生み出したキャラを冒頭で死なせて「つかみ」とした。き、鬼畜。
女児(アビバ)が母親に「ドーンはなぜ死んだの?」と聞く。母は「両親に愛されなかったの。皮膚科に行くかダイエットすれば違ったかも知れないけど」と答える。いきなり、あんまりですね。
ここでおかしいのは母親は白人なのに、少女アビバは黒人なのである。以降、エピソードが変わるたびにアビバを演じる女優が入れ替わり、計8人のアビバが登場する。
後にアビバは妊娠し、彼女は「絶対産む」と言う。母親は「障害者や体が欠けている子だったらどうするの!それに今はまだオデキみたいなものよ!」と実も蓋もなくぶちまける。なんかもうちょっと言い方はないものかとも思うが、考える前に出てくるナマの言葉ってのはこんな感じなのだろう。「きれいごと」はもっと後からついてくるものだ。
中絶は行われるが、母体が幼すぎたため子宮も一緒に摘出せざるを得なくなるという最悪の事態。
そしてアビバは家出をして、「ろくでもない人々」と出会う。

特にとんでもないのがサンシャイン・ファミリー。ここでのアビバはたいへんファットな黒人少女なのだが、ファミリーに養われている少年に連れられて、彼女もそこに在籍することになる。
ちなみに生まれて来られなかった子供の名は「ヘンリエッタ」で、この作品中、ヘンリエッタもアビバと同じキャラとして登場。なので混同してオーケー。
ファミリーはキリスト教原理主義者の夫婦が、わけありの子供たちと集団生活をしている施設。
サンシャイン夫婦を中心にボランティアと布教活動を行う立派な慈善団体ではあるのだが、裏では「中絶手術を行う医師」を密かに暗殺している狂信者集団でもあった。きっついでしょ?
子供たちでダンスチームを組み、キリストを讃えるオリジナルソングを歌ったりもしている。その中には両腕がない少女やダウン症など、本当に体に障害のある子供たちがいる。アルビノの少女も本当に盲目っぽい。
この内容にして、よく出演したものだと思う。それ以上は言葉が出ません。
特に「ひどっ!」と思ったのがアビバを連れてきた先ほどの少年が「いいもの見せてあげる」と森に向かう。
「ここはよく堕胎業者が中絶した胎児を捨てていくんだ・・・・・ほら!」アビバたまらず「キャーーーーッ!!」。そりゃそうだ。
韓国映画を観ていると子役の扱いが「ひどっ!」と思う。汚いセリフも言わせるし、何より子供を殺すことに躊躇がない。「子役だからかわいく撮ってもらえると思ってんじゃねえぞ!」という実に大人な態度で接しているのである。「プロフェッショナル」とも言う。韓国の子役は鍛えられるだろうなあとも思う。
ざっと思い出しても、洋画で同じようなスタンスを取っている監督はトッド・ソロンズしか思い浮かばない。

いろいろあってちょっと不思議なラスト(ネタバレ~)。冒頭の黒人アビバに戻り、「今度こそママになれそうな気がする」と微笑む。
これは「いろいろあっても人生はリセットできる」ということなのだろうか。とにかく観終わると「はあ・・・・」とこちらが消耗するオチを持ってくるソロンズだが、これは異例。彼の作品中、もっとも「やさしい」と言えるのかもしれない。
不思議な作品ではあるけれど、ソロンズの手のひらで転がされてみるとなかなか気持ちのいいものでもある。
いわゆるアートでもなく、いわゆるエンタメでもなく、いわゆる文芸作品でもない。
爆笑できるわけでもないし、残酷シーンがあるわけでもないし、暴力描写もないが、トッド・ソロンズの映画が観客の心に波及する効果はコメディであり、サイコホラーであり、バイオレンスでもある。という、たいへんタチの悪い代物なのであった。
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不幸な人形の家へようこそ



ツジジンセーは後に嫁となるナカヤマミホとの初対面時に「やっと逢えたね」と言ったそうだが、ようやく鑑賞できたトッド・ソロンズのデビュー作『ウェルカム・ドールハウス』(95)。やっと、観れたね。
これは「リアルな」学校と家庭の物語。そしてリアルな不幸の物語でもある。「凡庸の中にこそ不幸がある」といったような。
主人公ドーンは兄と妹の真ん中に挟まれた中学生。いわゆる「メガネブス」。まあ、最初から最後までブスブス言われてるんで、そういうことにしましょう(ひどい@@@)。
兄はそこそこ勉強ができる、妹は可愛らしくどうやら世渡り上手で、いつもバレエを踊っている。両親の愛情もここに集中。
果たしてドーンは、特別取り柄もなく、メガネブスなので、男女問わずクラスからバカにされている。
彼女を慕う年下の少年もいるが、彼は「オカマ」呼ばわりされてバカにされているので、お気に召してはいない様子。ここで二人が団結して事を起こせばそれは美しいしファンタジーだけど、リアルな物語ではそうはならない。弱い者は自分より弱い者を、やっぱりバカにしているから。イケてない奴と一緒に見られるのは嫌なのだ。

兄はバンドをやっている。が、兄担当のクラリネット・オルガン・ドラムという「テキトーに楽器ができるのを集めてみました」といった風情。彼らが演奏する「サティスファクション」のへっぽこぶりは絶品。
そこへなぜかイケメンのギターボーカルが加入。メガネブス、あ、いやいや、ドーンは一発で恋に落ちる。
「女の子はやっぱしルックスがいい人が好き!」という古今東西の定石。しかし、イケメンのバンドマンはモテモテのヤリチン、というのも古今東西の定石。メガネブス、あ、いやいや、ドーンの恋は静かに玉砕する。
ドーンの冴えない日常は続く。彼女は健康だし家庭もそこそこ裕福なようだが、どうにもこうにも不幸だ。
そういう種類の不幸は確実にある。少なくとも彼女の放つ全てから(へんてこなセンスのファッションも含め)、「ハッピー」というワードがまるで見えない。ぬるーい地獄がいつまで続くやら。
そこに起こった「可愛い妹」の誘拐事件。両親は憔悴し、父親はベッドで寝込んでしまう。
ドーンは父の枕元に行き、「ミッシー(妹)がダメでも・・・・私たちがいるわ」と励ます(・・・励ます??)のだが、父の反応は日本語で表すと「んがぐぐ・・・・」@@@@@@@@@@@@@@@
この兄弟構成であれば、親のリアルな反応は確実にこんなであろう。正直に真実を切り取った瞬間なのだ。
ドーンは妹の捜索をするため家出する。しばらくして家に電話してみると兄が出て「ミッシーは見つかったぞ。で、お前は何やってるんだ?」
まあ、この時のドーンの心情は「あのー、自分はどーでもいいんスか・・・・・?」といったところでしょうか。

事件が無事に解決し、ドーンは学校のスピーチ大会で事の顛末を語る。が、いつのまのやら生徒たちから起こる「ブス!」「ドブス!!」の大合唱@@@@@@@@。
ラストの兄との会話でドーンは「ディズニーワールドには行かない(修学旅行のことだろうか?)」と言うが、兄の答えは「行かないと内申書に響くぞ」。
生徒たちが楽しげに合唱するバスの中、ドーンひとり、苦虫を噛み潰したような表情で合唱に参加している。
そうなのだ。修学旅行や林間学校は大多数にとっては「楽しい青春の一ページ」かも知れないけれど、ひとりでいたい、何よりもこの世で最も大嫌いな「クラスメート」と一緒に何日間も過ごさねばならないのか?と思っている者にとっては、最悪な地獄だ。
この事実を知ろうとしないから、学校側はいつまでたってもいじめをスルーする。
はぐれ者が自滅する様を見せればそれはカタルシスでもあるが、トッド・ソロンズはこまこまと「どこにでもあって、誰にも見えていない不幸」をスケッチする。
『ウェルカム・ドールハウス』は「無い」とされている不幸を(事件や事故、病気や生い立ちにまつわることだけが不幸ではない)「あるんだよ!!」と見せつけてくれた。
それが「誠実」ということであり、トッド・ソロンズ作品の魅力である。実は彼の全作品を観たので、これから伝道していくのだー、という大きなお世話な予告で〆。

〆、じゃなかった。ドーン役の「ヘザー・マタラッツォ」で検索してみたら、ずーっと自分が最高最高と言い続けてる『ホステル2』で、全裸で逆さに吊られて首を切られて殺されるイケてない女子役で出演していたのでした。ドーンの人生は(ドーンじゃないけど)やはり不幸なのだった。はっはっはっ。



ソーセージ御一行様・御乱交パーティー



少し前にアニメファンがアニメについて語り合い、司会の中居君が内容について行けずに困るというテレビ番組をやっていた。まあこちらも、ソンガンホとかパクチャヌクとかの一般には意味不明な単語を撒き散らしてるから一緒なのだよなあと思ったのけど、いや、アニオタの人は「アニメという引出しの中だけでアニメを語っている」から伝わりづらいというか、閉鎖的に見えると気づいた。
結局オタでもブレイクするのは、一般の人にも伝えられる言葉を持っている人で、好き嫌いはあると思うのだが、唐沢俊一とか岡田斗司夫といった人たちなんである。
その点サブカルは「無駄に引出しがある」ので、あさっての方向からこっちとこっちを強引に結びつけたりという荒業が出来たりする。みうらじゅん御大(還暦!)のポジションが揺るがないのはそのあたりの事情も大きく、彼が紹介するものを手に取るかどうかはともかく、彼が書く紹介文などは確実に面白い。
個人的に昨今のアニメは、その収まりの良さが収まりが悪い。まず絵ですな。大絶賛&大ヒットの『君●名■』がまったく観る気がおきない。殺菌室に監禁されてるような感じ?もうゲロ吐きそう。
昔観ていたアニメは、その当時の声優さんがずーっと現役で仕事をされていて、本来声優という仕事はものすごく息の長い職業なんである。基本的には公に顔出しをしないということで、実年齢が特定されない。
「声だけで勝負する」というプロフェッショナルだったはずだが、最近のアイドルみたいなグッドルッキンさも込みで仕事をしている声優さんが果たして、とか、いや、別にぜんぜん知らないからいいや。
とはいえ。一番人気があるらしい、わざとらしいキンキン声を必殺技としている某声優。たまに耳にすると虫唾が走る。ゲロ吐きそう。
しかしながらアニメ業界が生み出す莫大な売り上げとサブカル業界のそれとは桁違いなのだなと思い直し、やはりサブカルは負けるのだった。

ところが洋画に関しては、もちろんディズニーがいいとこどりなのだろうけど、オルタナティブな尖兵というのが確実にいる。
『ソーセージ・パーティー』(2017)というCGアニメがある。擬人化された食材たちが大変かわいらしいですね。
実はR15指定作品。内容は完全にイカれてる。
主人公は「ソーセージ」のフランク(日本人から見れば「ウィンナー」だが)。恋人は「ホットドッグ用パン」のブレッド。彼らはスーパーで売られている商品であり、ここから取り出してもらえれば「楽園に行ける」と信じている。最初は「僕たちを選んで連れてって~」みたいな歌で始まるミュージカル仕立て。めっちゃ楽しそうなイントロ。
が、即効で下ネタな会話が始まった辺りでわかるのだが、ソーセージは男性で、パンは女性の象徴なのだ。特に妙に艶かしいブレッドの顔は、ぶっちゃけ完全に「女性器の擬人化」である。
ある日返品されてきた「ハニーマスタード」がアジテーションする。「みんなだまされるな!外は地獄だ!」。
それに聞く耳を持たない一同は「選ばれた!」とカゴの中で大喜びだが、再度運ばれたマスタードが脱出を試み、カゴから全員が飛び出してしまう。
その中にはビデも乗っており(膣内洗浄器・・・・)、落ちたショックでノズルをダメにされてしまった彼は「凶悪なビデ(凶悪な膣内洗浄器・・・・)」として、暴君となるのだ(つ、ついていけてますか?)。
結局、客に買われていった一同はわくわくしているが、次の瞬間から始まる大虐殺。
じゃがいもは皮を剥かれて釜茹で!ソーセージは直接口で噛み砕かれる!その他、粉砕!蒸し焼き!切断etc!この世の地獄だ!食材目線で見れば!!
「まったくとんでもないアニメがあったものだ」と感動もひとしおだが、実は「宗教」「殉教」というものに対するブラックな皮肉になっている。信じるものに身を捧げたら最悪な地獄が待っていた、なんてことは歴史上何度も繰り返されてきた。
キャラククターも先住民やイスラム系や同性愛者などの「マイノリティ」が登場し(もちろん食材)、一応エログロだけど、ナンセンスなわけではないのだった。
どうにか逃げ出したフランクは、スーパーに戻って一同に武装発起を呼びかける。
かくして、たまたまそこに居合わせた客たちは、生鮮やシリアルや冷凍食品や調味料などによって「粛清」されてしまうのである。
「人間のジャンキー」も登場してガチの炙りをキめるし、「食材たちによる勝利の乱交パーティー」には開いた口がふさがらない。
CGの無駄遣い?そこがいいんじゃない!(←みうらじゅんさんは何十年、この言葉を言い続けているのだろう?リスペクト!)
フランクの声を当てているのは激渋バリトンボイスのセス・ローゲンであり、脚本/制作にも関わっているので、この兄貴のクレジットがあるものは信用できる。
吹き替えもよかったですよ。下ネタもなんのそのというベテランの風格で。アイドルちゃんにこれは出来まい。
保護者の方におかれましては、ついうっかりディズニーものと一緒にレンタルしてしまい、お子様とご一緒に鑑賞などされますと、大変面白い状況になるかと思われます。


太陽と悪魔、「ビー・デビル」



シバラマー!んー、なんか違う。しばらまー!←ひらがなのほうがかわいいな。
「しばらま」とは韓国語で「FUCK OFF」に相当する言葉である。ファックはもう使われすぎた。ナウなヤングの諸君のハートにインするのはこれからは「しばらまー!」ではないか。この言葉で世のゴキブリ野郎をダメージ!
つまり毎週韓国映画を観ているのだけど、ちゃんと覚えた言葉はこれだけっていう。ほんと、どうしょうもないしばらま人間です。
韓国にもラブコメやメロドラマがあるということなんですが、自分が愛好するのは「しばらま度が高い」ものである。だいぶ溜まってきたのでそろそろ頭の整理をせんといかんのだ。
『殺人の追憶』(監督/ポン・ジュノ・2003)は警察のしばらま度を描いた作品。「警察内部の腐敗を告発する!」というよりは、徹底的に警察や刑事をバカにしている。
実際にあった女性の連続殺人事件をモデルにしているらしいが、主人公の刑事(ソン・ガンホ。ソン様)はとにかく犯人を捏造することに夢中。
テキトーな報告を真に受けて知的障害者の青年をしょっぴく。相方の刑事はさらにキれやすく、特技は跳び蹴り(とびげりデカ)。
なんとか彼を犯人に仕立てようと二人でがんばっていたところ、ソウルから切れ者の刑事が赴任。彼の推理で青年はシロとされ釈放。
面白くないのはソン様で、ソウル刑事に向かって「お前、デカのくせに頭なんか使ってんじゃねえよ」。ありえねぇ。
捜査は振り出しに戻り、ソン様は「現場に陰毛が落ちていない。きっと犯人はパイパンです」。
とびげりデカも「それならば近くにがあるので当たってみましょう」と、パイパンの意味すらもあさっての方向へ。しかもソン様は銭湯に入り浸り一人一人の股間をチェック(バカ)。
殺人事件をテーマとしながらも、映画の半分はこんな感じで、ブラックコメディと言っても差し支えない。犯人だと思ったら単に現場でオナニーするのが好きな変態だったりとか。
ところが後半、犯人らしき男が登場したあたりでムードが一変してミステリー仕立てになる。
なのですが、理詰めで映画を読み解いていくタイプのミステリーファンが鑑賞すると「はあ?」となりそうなので書いてしまうけど、結局犯人は不明のままなのです。そして、さらなるバッドエンドが待っている。




さて韓国バイオレンス映画の白眉、『ビー・デビル』(2010)。
「恨流」でタイトルに「デビル」がついてるときた日にゃ、観ないわけにはいかんのだ。ジャケットやポスターの「鎌を振り上げた女性のシルエット」が大変カッコいい。
主人公は二人いて、一人はソウルの銀行員・ヘヴォン。彼女はレイプ事件の目撃者だが、危うきには近寄らずで、証言について積極的ではない。仕事場でのイライラもピークに達し、休暇を取らされ故郷の離れ島へ向かう。
待っていたのは幼馴染のボンナム。結婚して10才くらいの娘もいるが、旦那は白昼堂々と女を買うわ、姑はその行為も認めるわ、数人しかいない島民(ババアとクズ男)から、人としての尊厳を踏みつけ続けられる生活をしている。彼女は島を出たことがないので、それが三十年。しかも旦那は娘と近親相姦している。
ボンナムはヘヴォンが帰ってきてくれたことは嬉しいのだが、腹を決めて「自分と子供をソウルへ連れて行ってくれ」と頼む。が、島民たちに見つかり、旦那がはずみで娘を死なせてしまう。
結局検察もうやむやになり、ヘヴォンも「寝ていたからわからない」と証言しない。
しばらくボンナムは娘の墓土を足でなめしたり(庭に穴掘って埋めただけ)農作業に従事している。
が、作業の合間に水をぐびぐびと飲んで一言、「太陽を見ていたら答えがわかった」。
直後に始まる島民への怒りのリベンジ・大虐殺。つまり「自分のやるべきことはこのしばらまな奴らを全員ぶち殺すこと」と悟る。正解である。
このロス時間について、監督のチャン・チョルスは特典インタビューで「復讐のタイミングを遅らせたのは、それがリアルだから。娘が殺されたすぐ後に行動を起こすのはリアリティがない」と答えている。
姑を殺すシーンは、ほとんどブラックジョーク。この監督さんは日本映画が好きで留学もしているのだが、吉本新喜劇見たでしょ?と言いたくなるくらい、池野めだかチックな死にざまであった。ははは。
さらに旦那を追いつめるボンナム。しかも、かなりマヌケな展開でありつつも、ザクザク切りつけるような残酷な殺しを見せつける。
「こいつにはカッコつけて死なせることも許さん!」という、観るもの誰もが思っていることを実行してくれるので、最高だ。
さて本作はまだまだ一波乱あり、最終的に観客は真摯なメッセージを受け取ることになる。実にちゃんとした作品である。
まあ悪魔とかデビルとかがタイトルについてる作品の全部が面白いわけではないのだが、これは「大当たりデビル」でした。

恨パイヤ、「渇き」



韓流と書いて「はんりゅう」と読むのだけど、自分の場合は「恨流」である。とにかくネガティブな感情を思い切りぶつけてくるものだから、観た韓国映画には外れがない。ゆえにダメな人にはまったくダメで好き嫌いが激しく分かれると思う。「暴力(バイオレンス)」や「愛(ラブ)」はあっても(愛ゆえの暴力だったりする)「平和(ピース)」がない。
ちなみに韓国映画を「まあまあだった」とか言ってる人は頭がボケてます。
一番の重鎮はキム・ギドクってことになるのかも知れないけど、個人的にはかなり重い。といっても『メビウス』しか観ていないのだが、これは「登場人物がコチンを切ったり切られたりする無言劇」という大変イカれた内容なので、この人の作品はもうちょい後回しでいいかなと思ってしまったのだった。
好みはパク・チャヌク作品なのかなと思う。「復讐三部作」で知られる監督だが、新参者がなんだかんだ言うの今さらどうかと思うのでザックリひとこと。
『復讐者に憐れみを(2002)』。あっちもこっちも復讐バトルロワイヤル!全員惨殺!
『オールドボーイ(2003)』。その口あんぐりな内容にタランティーノから江頭2:50まで衝撃を与える!
『親切なクムジャさん(2005)』。これぞ恨流!「アイツ」を捕まえてからが長い。そう簡単には殺さない!
しかもこの人は子供を殺すような描写も平気で入れてくる残酷な作風だが、ちょいちょいギャグもぶっこんでくるからタチが悪い(そこがすき)。ターゲットを処刑した後に全員が「お疲れ様でしたー」って感じでケーキ食ったりとか。
それを端的に表しているのがオムニバスの『美しい夜、残酷な朝』の一編「cut」。
映画監督の家に闖入者が入り込み、ピアニストである奥さんを動けないように拘束している。彼は監督の映画のエキストラ参加者。それを分からせるために、いきなりミュージカルが始まったりする。
で、見知らぬ子供を連れ込んで映画監督に「その子供を殺せ。さもないと奥さんの指を一本ずつ切断する」と宣言。悪夢のような短編。しかもブラックコメディ仕立て。
オムニバスってのは一本は大体ぬるいので、そこは日本の三池崇史があえて担ったような気がする。ラストは香港の監督による『餃子』。「ホラーで餃子」と書けばだいたい内容はわかると思います。
「復讐者」と「クムジャさん」に出演しているのがソン・ガンホという俳優で、とにかく殺人鬼から怪獣退治のお父さんまでいろんな役をやっている。韓流大好きおばさんにキャーキャー言われるようなイケメンではないが、この人が韓国映画を代表する顔なのだ。リスペクトをこめて「ソン様」と呼ぶ。

ソン様とパク監督が組んだ『渇き』(2009)。これは韓国産の吸血鬼映画。
牧師のソン様は公的な自殺に近い人体実験の献体に志願。五百人に一人の確率で生き残った彼は吸血鬼になってしまう。が、町では奇跡の神父として評判になり、祈ってくださいのリクエストが殺到。
昔馴染みのところに祈りに行ったところ、ソン様はその家の奥さんと出来てしまう。召使いのように使われていると感じる、倦怠の日々を送る奥さんの頼みで旦那を殺害。そのことを姑は知っているのだが、脳梗塞で倒れ、目だけしか意思表示の出来ない体になる。
「私も吸血鬼にして」との奥さんの頼みを飲むソン様。
このビフォー・アフターが最高で、吸血鬼になったことにより滅私奉公型だった奥さんが凶悪に変貌。
道すがら人を殺して血を吸う。ソン様が「自殺者の血を持ってきてやる」と言っても「素直にくれる血はおいしくない」。この辺からなんとも、変てこな方向に話が進んでいく。
奥さん役のキム・オクビンもバンパイヤになってからがさらに美しく、ブルーのワンピースでビルをぴょんぴょん飛んで逃げて行くシーンが大変かわいらしい。
仲間たちと麻雀の最中、姑のアイコンタクト(顔芸)で秘密が暴露されてしまい、そこから始まる大殺戮。
ちなみにソン様の「血を少しだけ吸って捨てるのは人命軽視じゃないか?」と言うセリフには笑ってしまった。もちろんギャグだから。
彼らはバンパイヤといえどケープをまとったり顔が青白かったりするわけではなく、しかも牙がない。
考えてみれば牙というのも優雅な凶器で、それを持たない二人は犠牲者の喉笛を切り裂いて血を吸う。
「バンパイヤ映画って意外と血が出ない」という定石をひっくり返しての全編血まみれ作品。
「官能ラブストーリー」という体で公開されていたようなので、うっかりだまされた韓流おばさんたちが最後まで鑑賞できたかどうか。はっはっはっ。
しかしバンパイヤというものは代々、ベラ・ルゴシにしてもクリストファー・リーにしても岸田森にしても淫靡な色気がなければいけない。その点、ソン様も一見普通だが「苦悩する男」のそこはかとない色気がある。
ラスト、二人は海岸の朝陽を浴びて朽ち果てる。クリストファー・リー伯爵は何度も何度もエグく殺されたが、『渇き』はバンパイヤ映画史に残る美しい名シーンで幕。
しかしゾンビにしてもバンパイヤにしても、そんな伝統は一切ないにもかかわらず、いきなりマックスに更新してしまうのが韓国映画のすごいところである。
ちなみに同じタイトルの日本映画はゴミなのでお間違いなきよう。


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男性
職業:
古本すうさい堂
自己紹介:
自称「吉祥寺の盲腸」、すうさい堂のだらだらした日常の綴り。
本を読むという行為は隠微なこと、悪いことを覚えるためのモノ。

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